古典的な作業療法のアクティビティのひとつでもある“マクラメ”ですが、改めて見直すと非常にセラピーとして有用な作業活動と言えます。
そこで今回はこの作業療法におけるマクラメ手芸で期待できる治療効果について解説します。
マクラメとは?
マクラメとは、複数の細い紐や糸を手作業で結び合わせて、幾何学的な模様や形を編んでいく手芸の一種になります。
マクラメによって期待できる治療効果
では実際に作業療法としてマクラメを利用することで、期待できる治療効果としてはどのようなものがあげられるのでしょうか?
主なものとしては…
- 両手の協調性の向上
- 巧緻動作能力
- 筋力の維持と向上
- 関節可動域の維持と向上
- 目と手の協調
- 表在感覚の知覚的刺激入力
- 姿勢保持能力
- 注意の持続力の向上
- 知的、精神的能力の向上(計算力、企画力、理解力、判断力)
- 社会適応能力
…などがあげられます。
以下にそれぞれ解説します。
両手の協調性の向上
マクラメは、糸を結び目で固定する技術を要します。
この過程で、両手を同時に使い、互いに協力しながら繊細な作業を行う必要があります。
このような活動は、脳の両半球間の連携を促し、手と指の協調動作能力を向上させることができます。
特に、微細な動作の調整や、左右の手の協力が求められる作業において、この効果は顕著に表れます。
巧緻動作能力
巧緻動作とは、手や指の小さく複雑な動きを指します。
マクラメ作成中には、細かい結び目を作るために、このような巧緻動作が頻繁に要求されます。
このプロセスを通じて、手の筋肉と神経系の連携が強化され、細かな物を扱う能力や、精密な作業を行う際の技術が向上します。
筋力の維持と向上
マクラメ作業は、一見すると静かな作業のように思えますが、長時間にわたって紐を扱い続けることは、手や腕の筋肉にとって意外と大きな負担となります。
この持続的な使用は、手や腕の筋力の維持及び向上に寄与します。
特に、高齢者や筋力低下が懸念される人々にとって、日常生活動作の維持や改善に有益です。
関節可動域の維持と向上
マクラメを作る過程で、手や指の様々な動きが必要とされます。
これらの動作は、関節の可動域を広げる効果があり、関節が硬くなるのを防ぎます。
継続的にマクラメを行うことで、関節の柔軟性や動きの範囲が広がり、関節痛の予防や改善に役立ちます。
目と手の協調
マクラメは、目で糸の位置を確認しながら手で結び目を作る必要があるため、目と手の協調性を養うのに最適です。
この種の協調動作は、脳のさまざまな部位を活性化させ、細かい視覚情報を処理しながら手の動きを制御する能力を高めます。
これは、日常生活での様々な作業や活動においても有益なスキルとなります。
表在感覚の知覚的刺激入力
マクラメを行う際、さまざまな質感の糸や紐を扱います。
この手触りや質感の違いを感じ取ることは、表在感覚の知覚を刺激し、感覚入力の処理能力を向上させます。
この感覚的なフィードバックは、脳の感覚処理機能の発達に寄与し、より繊細な感覚判断が可能になります。
姿勢保持能力
マクラメ作業を行う際には、適切な姿勢で作業することが重要です。
長時間にわたる集中作業は、背中や首の筋肉を使い、良い姿勢を維持することを要求します。
この習慣は、姿勢保持能力の向上に役立ち、背骨や筋肉の健康を支えます。
注意の持続力の向上
マクラメは、複雑なパターンやデザインを作り出すために、集中力と注意の持続が必要です。
このような作業を通じて、注意を長時間維持する能力が鍛えられます。
このスキルは、学業や仕事、日常生活のさまざまな状況で役立ちます。
知的、精神的能力の向上
マクラメを行う過程で、計算力、企画力、理解力、判断力などの知的能力が求められます。
デザインの計画や、糸の長さの計算、パターンの理解など、複数の認知機能を同時に使用します。
これにより、知的な柔軟性や創造性が高まります。
社会適応能力
マクラメは、個人の趣味として楽しむだけでなく、コミュニティやグループ活動の一環としても行われることがあります。
共通の趣味を通じて人々と交流することは、社会的スキルを高め、社会への適応能力を向上させます。
また、作品を通じて他者とのコミュニケーションを図ることも、この効果を促進します。