慢性疼痛の患者の生涯像を考える際に、その特徴の頭文字をとった”5D syndrome”というフレーズがあります。
本記事では、この”5D syndrome”について解説します。
慢性疼痛患者の”5D syndrome”とは
慢性疼痛患者の”5D syndrome”とは、慢性疼痛の特徴的な生涯像を表すフレーズになります。
これによって、患者の痛みの原因を特定する手がかりになります。
“5D syndrome”の各要素ですが…
- drug(薬物)
- dysfunction(機能障害)
- disuse(不使用)
- depression(うつ病)
- disability(障害)
…になります。
それぞれ解説します。
drug(薬物)
慢性疼痛患者が経験する”5D syndrome”の一つは、drug(薬物)に関連します。
慢性疼痛患者の多くは、鎮痛剤や抗炎症薬、抗うつ薬などの薬物療法を受けます。
もちろん単一の薬物だけで完全な痛みの管理を達成することは難しいため、さまざまな薬物療法の組み合わせや調整が必要となります。
また、薬物には副作用や依存性のリスクもあるため、患者と医師の共同作業で最適な薬物療法を見つける必要があります。
dysfunction(機能障害)
また、慢性疼痛による”5D syndrome”の要素には、dysfunction(機能障害)もあります。
慢性疼痛は身体機能の制限を引き起こし、日常生活動作(ADL)や運動能力が低下することがあります。
特定の部位に痛みが集中している場合、その部位の動きや筋力が制限されることがあります。
機能障害は患者の生活の質や日常活動に大きな影響を与えるため、適切な評価とリハビリテーションの導入が重要です。
これにより、患者の機能改善が目指されます。
disuse(不使用)
加えて、disuse(不使用)もあげられます。
慢性疼痛を抱える患者は、痛みを回避するために身体活動を避ける傾向があります。
これによって、筋力や柔軟性の低下、体力の減退、身体的な能力の喪失などが生じる可能性があります。
不使用は患者の状態を悪化させる要因となり、身体活動の適切な復帰やリハビリテーションの導入が重要です。
depression(うつ病)
慢性疼痛による”5D syndrome”の要素には、depression(うつ病)もあります。
慢性疼痛は心理的な問題を引き起こすことがあります。
患者は長期間の痛みや制約によって心理的な負担を抱え、うつ病や情緒的な不調、希望喪失などが生じる可能性があります。
心理療法や心理的サポートの提供が重要であり、患者の心理的な健康をサポートすることが目指されます。
disability(障害)
“5D syndrome”の最後の要素は、障害です。
慢性疼痛は、生活の質や社会的な活動に制約をもたらす可能性があります。
慢性疼痛によって仕事や日常生活が困難になり、社会的な参加や生産性が低下することがあります。
障害の程度は患者によって異なりますが、患者の状態を総合的に評価し、適切な支援やリハビリテーションを提供することが重要です。
また、社会的な側面や身体的な制約だけでなく、心理的な側面も考慮する必要があります。

