将来的な予定を忘れずに実行するための記憶である「展望記憶」。
日常生活を送るうえでは欠かせない能力の一つです。
でもこの展望記憶は様々な要因によって悪影響を受けてしまいます。
そこで今回は展望記憶に影響を与える6つの生活上の要因について解説します。
展望記憶に影響を与える要因
ここでは…
- 喫煙
- アルコール
- 大麻
- 覚せい剤
- 年齢
…の展望記憶への影響について解説します。
喫煙
喫煙は肺がんなどの病気の原因だけでなく、展望記憶にも悪影響を及ぼすことが示唆されています。
2010年にHeffernanらによって行われた研究でも、持続的な喫煙が展望記憶の低下と関連しており、ニコチンの長期的な展望記憶への影響は用量依存的である可能性を示唆しています1)。
ちなみに、PRMQ(Prospective and Retrospective Memory Questionnaire)という質問紙による検査では、喫煙者と非喫煙者の間に差はないという報告もあります。
ただし、これは自己申告の質問紙による回答なので、少し結果に主観的なバイアスがかかってしまうことが指摘されています。
アルコール
アルコールも喫煙同様、日常生活にある嗜好品で展望記憶に悪影響を及ぼすものの一つです。
2010年のJonathan Lingらの研究によれば、慢性的なアルコール多飲者は…
- 単語リストの学習
- 短期および長期の論理記憶
- 一般作業記憶
- 抽象推論
…などの課題において能力低下を示したことがわかっています2)。
大麻
最近は世界の一部で大麻が容認されている風潮がありますが、やっぱり大麻による悪影響ははっきりしています。
大麻のような薬物は、中枢神経系に悪影響を及ぼし…
- 意思決定
- 学習
- 処理速度
…における欠陥などの認知障害と関連しています。
これは、2010年のBartholomewらによる研究でも示唆されています3)。
覚せい剤
大麻はもちろん、MDMAやメタンフェタミンといった覚せい剤も展望記憶に障害を与えます4)5)。
これはなんとなく想像ができるかと思います。
でもさらに恐ろしいのは、平均6年間薬物を使用していなかった元使用者にも記憶障害の影響がみられる…ということ。
つまり、一度でも薬物に手を出したら、展望記憶に障害が残る…ということになります。
年齢
年を取ることで展望記憶が低下する…というのは、一般常識的にも理解されていると思います。
2009年のKvavilashviliらによる研究では…
- 18~30歳
- 60~75歳
- 76~90歳
…の時間基盤型の展望記憶の比較研究では、18~30歳の方がより優れたパフォーマンスを示すことがわかっています6)。
遺伝
実は展望記憶は遺伝的な要因も影響するようです。
統合失調症患者の第一度近親者(非精神病患者)と対照者の前向き記憶を比較した研究では、時間基盤型および事象基盤型の展望記憶課題において近親者の成績が有意に悪かった…という研究もあります7)。
統合失調症には遺伝的要素があります。
つまり、遺伝が展望記憶に影響を与える役割を果たす可能性を示唆した…ということになります。
もちろん、これは統合失調症の影響も関わってくるので「本当か?」って思うところもありますが…一応こういう意見もあるということでご紹介。。
参考
1)Smoking and everyday prospective memory: a comparison of self-report and objective methodologies.
2)Subjective Ratings of Prospective Memory Deficits in Chronic Alcohol Users
3)Does cannabis use affect prospective memory in young adults?
4)Prospective memory impairment in “ecstasy” (MDMA) users.
5)Illegal drug use and prospective memory: A systematic review
6)Differential effects of age on prospective and retrospective memory tasks in young, young-old, and old-old adults
7)Prospective memory in non-psychotic first-degree relatives of patients with schizophrenia: a meta-analysis