行動を促すということとはどのようなことでしょうか?
ただ「○○してください!」と誘導したとしても、そこにクライアント自身の“意欲”がないと全くリハビリとしての効果も期待できなくなってしまいます。
作業療法士は特に、このクライアントの意欲をどう引き出して行動に結びつけるか?…という視点が重要です。
今回は行動科学、行動分析学における「行動のABCモデル」について作業療法の視点で解説します。
行動のABCモデルについて
行動分析学という学問において、人間の行動原理の中心に位置する理論、それが「ABCモデル」です。
- A:“Antecedents”=誘発要因
- B:“Behavior”=行動
- C:“Consequences”=行動結果
この「ABC」ですが、人間の行動のきっかけである「A」、そのきっかけが元で行動が引き起こされ「B]、そして「C」という結果が起こります。
例としては、
- 部屋が寒い(A)→ 暖房をつける(B)→ 温まる(C)
- お腹がすく(A) → ご飯を食べる(B) → 満腹になる(C)
といったごく日常で起こり得る現象が例として挙げられます。
リハビリ場面での例
作業療法をはじめとするリハビリ場面でのABCモデルの例としては…
- 肩関節が痛い(A)→肩を動かさなくなる(B)→拘縮が増悪する(C)
- 血糖値が高い(A)→食事療法や運動療法を行う(B)→血糖値が下がる(C)
といったことでしょうかね?
「当たり前」のような場面ですが、この当たり前な現象を行動のABCモデルとして捉えることができます。
ABCモデルそれぞれの要因の関係性
ではここでABCモデルそれぞれの要素が、お互いにどのように関与し影響し合っているか?を考えます。
結論から言えば、「B(Behavior):行動」はその誘発要因でもある「A:誘発要因」をきっかけに起こり、その「B:行動」が継続できるかどうかは、「C:行動結果」によって影響されます。
つまり、行動が起こるかどうかはその“きっかけ”が重要であり、さらにその行動が継続できるかどうかはその結果に左右されるということになります。
行動を促すにはどうしたらよいか?
ABCモデルをベースに考えた場合、その対象が自分でも他者でも「B:行動」を促すためにはなによりも「A:誘発要因」が重要になります。
それは「必要性」ともとれるもので、「○○したい」という欲求に対しての解決方法が「A:誘発要因」になります。
ただしこの誘発要因はどんなものでも良いというわけではなく、得られる「C:行動結果」が本人が強くはっきりイメージできるもの…が適切になります。
また、せっかく行動をおこしてもそれが継続するかどうかは「C:行動結果」に左右されます。
「A:誘発要因」の段階で臨んだ「C:行動結果」に近いorそれ以上の結果でなければ、どうしてもまた「B:行動」を起こすモチベーションにつながりにくくなってしまいます。
まとめ
まとめますと行動をうながすためには、「A:誘発要因」の段階でクライアントにその行動の必要性と、クライアント自身がはっきりとイメージできる「C:行動結果」を提示するという前提が必要になってくると言えます。
ただ闇雲にその行動を促したとしても、クライアントにとってそれは「やらされている」だけであって決して自身の意欲的な要素は入り込んでいない「無価値なモノ」と言えます。
それが訓練にせよなんにせよ、クライアント自身の意欲を引き出すということも作業療法士にとっては必要な技術なのではないでしょうか?