農業と作業療法(アクティビティ)【就労支援としても有効なのでは?】

リハビリテーションである作業療法の臨床や現場で、園芸や農業をアクティビティとして導入することって多いような気がします。
そこで今回は改めて作業療法プログラムに農業を選択するメリットとデメリットについて解説します。

そもそも農業とは?

まずはこの“農業”について少し掘り下げてみます。
そもそも農業とは…

土地の力を利用して有用な植物を栽培し、また、有用な動物を飼養する、有機的な生産業のこと。
引用:wikipedia

…とあります。
ちなみに広義には、農産加工や林業までも“農業”の括りになるようです。

作業療法と農業の歴史について

山根寛先生による『人間・植物関係学会の芽生えに思う』という論文の中には、作業療法と農業(論文内では園芸という表現)について以下のように触れています。

(中略)~医療において積極的に利用されるようになったのは, 18 世紀後半 ~20 世紀にかけての道徳療法(moraltreatment)興隆の中で,精神障害や知的障害がある人たちにもちいられたのが始まりといってもよい。
療法としての効果に関する記述としては,アメリカのBenjaminRushが精神病に対する効果を述べているのが初めではなかろうか。
引用:人間・植物関係学会の芽生えに思う

論文内では“園芸”という表現ですが、俗にいう“土いじり”を療法的に応用したのは300年近く前から…ということになるでしょうね。
職業や生業としての農業はそれこそもっと昔からあるでしょうけど、300年も前から農作業をリハビリテーション的な観点で扱っていたということは非常に興味深い事実です。

園芸療法と同じ?

作業療法をはじめ、医療・福祉分野における農業となると、“園芸療法”が代表としてあげられると思います。
園芸療法について調べると別に園芸…といったって別に花や植物に限ったものではなく、農作業も含めての“園芸”となるようです。

ですから作業療法×農業と園芸療法は似ている部分が多いと思います。

ただ、個人的な意見になりますが単一的な意味での“園芸療法”と作業療法プログラムにおける“農業”とでは導入目的の範囲が少し異なって使い分けたいなと思っています。
園芸療法はあくまで心身機能の改善、コミュニケーション能力の改善を目的としたものです。
作業療法×農業は心身機能の改善、コミュニケーション能力の改善に加え、社会参加(特に就労、職業生活)能力の改善までを介入目的とできる印象を受けます。

つまり作業療法における復職プログラム的な要素も含む…という扱いができるのかな?と。
少しそういう使い分けをしてもいいのかなと思っています!

作業療法に農業を選択するメリット・デメリットについて

では、今回の本題である作業療法において農業を選択し、取り入れることでのメリット、デメリットについてあげてみます。

作業療法×農業のメリット

まずはメリットについてですが、完結にまとめやすいようにICFの生活機能における3つの要素に区別してそれぞれ考えてみます。

生活機能 メリット
心身機能・構造 立位、歩行訓練として・応用動作訓練として・上肢機能訓練として・巧緻訓練として・全身耐久性の向上として
活動 ベッドからの離床機会の創出・外出機会の創出・他者交流機会の創出
参加 家庭内、地域内での役割の創出・就労としての機会の創出

メリット…というよりは作業療法×農業によってもたらされる恩恵…という意味合いだとしっくりきますかね?

作業療法×農業のデメリット

次に作業療法に農業を選択することのデメリットとしてですが、

ICF メリット
心身機能・構造 提供課題の難易度設定が複雑・比較検討しにくい・代償運動を誘発しやすい
活動 農業に興味があるor農家だったという前提条件が必要・安全面での配慮、条件設定が必要
参加 周囲の理解を得るというプロセスが必要・長期的なスパンが必要

病院や施設での作業療法介入内では、診療報酬や体制といった制限下での作業療法プログラムになるため、様々な場面設定や安全確保のための準備、条件などによって展開しづらさを感じることが多々すような気がします。
ただこのデメリットを理解したうえで多くの制限下であってもできること、提供できる価値は多いので、どう作業療法に農業を取り入れ、クライアント支援につなげていくかは作業療法士の手腕にかかっているかと思います!

まとめ

今回は農業と作業療法について解説しました。

作業療法と農業は非常に密接なことは、その歴史的背景からも明確な事実と言えます。
それが農業に馴染みがあるような地方でも、コンクリートだらけの都会でも、その環境に合わせた導入の方法があるはずです。
今回あげたような作業療法に農業を取り入れた場合のメリット、デメリットを把握したうえで、実践につなげていくこともクライアントへ提供できる支援の可能性を広げる一助になるのではないでしょうか?

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