教育用プロトタイプとして、評価・説明・生活行為への転移が見える構成に整理します。
指定された順番で、画面内の番号または文字をクリックしてください。
これは何か
トレイルメイキング・ミニは、画面上に配置された数字や文字を、決められた順番で選択していくブラウザアプリです。
数字のみを順番に選ぶモードと、数字・文字を交互に選ぶモードを想定しています。
視覚探索、注意の持続、順序保持、注意の切り替え、誤りへの気づきなどを、臨床や教育の場で説明するためのプロトタイプです。
標準化された検査そのものを再現することは目的としていません。
診断や能力判定ではなく、課題に含まれる認知的負荷を分解して説明するために使います。
想定する対象
このアプリは、以下のような場面での使用を想定しています。
- 注意の持続が難しい方
- 視覚探索に時間がかかる方
- 順序立てて行動することが苦手な方
- 数字や文字のルール切り替えで混乱しやすい方
- 遂行機能や注意切替の説明が必要な方
- 本人、家族、支援者に課題特性を共有したい場面
対象は、患者さん本人だけではありません。
作業療法学生、新人療法士、リハビリ職への教育教材としても使えます。
使用場面
臨床での説明補助
注意障害や遂行機能障害について、本人や家族に説明するときに使います。
たとえば、
「目は見えているけれど、探す範囲が広いと見つけにくい」
「順番を覚えながら操作すると混乱しやすい」
「ルールが切り替わるとミスが増える」
といった説明につなげることができます。
教育・研修
Trail Making 系の課題が、単純な視力や手の速さだけを見るものではなく、複数の認知機能を含む課題であることを説明する教材として使います。
課題設計の練習
アプリ開発や教材作成の場面で、
「どの条件を変えると、どの認知負荷が変わるのか」
を考えるための試作課題としても使えます。
使い方
- 実施前に、数字のみのモードか、数字・文字交互モードかを選びます。
- 画面上に配置されたターゲットを確認します。
- 指定された順番に、番号または文字をクリック・タップします。
- 誤って別の対象を選んだ場合は、誤クリックとして記録されます。
- 最後のターゲットまで選択すると、所要時間や誤クリック数を確認します。
- 結果だけでなく、迷い方、探し方、修正の仕方を振り返ります。
重要なのは、速さだけを見ることではありません。
どこで迷ったか、どう探したか、誤りに気づけたかを見ることです。
課題の構造
この課題には、複数の認知的負荷が含まれています。
| 課題要素 | 内容 |
|---|---|
| 視覚探索 | 画面上から次の対象を探す |
| 順序保持 | 次に選ぶべき数字や文字を覚えておく |
| 注意の持続 | 最後まで課題に集中し続ける |
| 注意切替 | 数字と文字など、ルールを切り替えて選ぶ |
| 抑制 | 目についた対象をすぐ押さず、正しい対象を選ぶ |
| エラー修正 | 間違いに気づき、次の行動を立て直す |
| 操作能力 | クリックやタップで正確に選択する |
数字のみのモードでは、主に視覚探索、順序保持、処理速度の負荷が中心になります。
数字・文字交互モードでは、そこに注意切替やルール保持の負荷が加わります。
作業療法的に見ている要素
作業療法では、このアプリの結果を単なる点数として見るのではなく、行為のプロセスとして見ます。
視覚探索
対象をどのように探しているかを見ます。
左から右へ順に探すのか、目についたところから探すのか、特定の場所を見落としやすいのかを観察します。
注意の持続
途中で集中が切れないか、後半で反応が遅くならないかを見ます。
疲労、焦り、課題への飽きも観察対象になります。
注意切替
数字のみではできても、数字と文字の交互選択になると混乱する場合があります。
これは、生活場面でいうと、複数のルールを同時に扱う場面に関係します。
順序立て
「次に何をするか」を保持しながら行動できるかを見ます。
更衣、調理、服薬、買い物、公共交通機関の利用など、手順のある生活行為と関連づけて考えることができます。
エラーへの気づき
間違えたときに、自分で気づけるか。
気づいたあとに修正できるか。
同じミスを繰り返すか。
ここは遂行機能を見るうえで重要です。
難易度調整
難易度は、以下の条件で調整できます。
| 調整項目 | 易しい設定 | 難しい設定 |
|---|---|---|
| ターゲット数 | 少ない | 多い |
| 配置 | 整列・間隔広め | ランダム・密集 |
| 表示 | 大きい | 小さい |
| モード | 数字のみ | 数字・文字交互 |
| 制限時間 | なし | あり |
| 説明 | 手順を見ながら実施 | 記憶して実施 |
| 練習 | あり | なし |
| 入力方法 | マウス・タップしやすい環境 | 小さい画面・不安定な姿勢 |
臨床で使う場合は、難しくしすぎないことが重要です。
特に初回は、失敗させるためではなく、課題の仕組みを理解できる難易度から始めた方がよいです。
記録できる指標
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 所要時間 | 開始から終了までにかかった時間 |
| 誤クリック数 | 次に選ぶべき対象以外を押した回数 |
| 進行状況 | どこまで正しく進めたか |
| 次の対象 | 現在選ぶべき数字または文字 |
| 修正回数 | 誤りのあとに正しい対象へ戻れた回数 |
| 中断の有無 | 途中で止まった、説明が必要になったなど |
| 観察メモ | 探し方、迷い、焦り、見落としなど |
現時点では、所要時間、進行、次の対象、誤クリック数の表示を想定しています。
今後は、CSV出力や実施条件の記録ができると、教育や研究のプロトタイプとして使いやすくなります。
生活行為への転移
このアプリで見ている要素は、生活行為にもつながります。
| アプリ上の反応 | 生活場面で考えられる関連 |
|---|---|
| 次の対象を探すのに時間がかかる | 物を探す、標識を探す、書類から必要情報を探す |
| 順番を間違える | 更衣、調理、服薬、手続きの手順ミス |
| ルール切替で混乱する | 買い物、交通機関利用、複数条件の判断 |
| 誤クリックに気づきにくい | 間違いに気づかず作業を続ける |
| 後半で遅くなる | 疲労による注意低下、作業持続の難しさ |
| 焦ってミスが増える | 時間制限のある場面で失敗しやすい |
ただし、このアプリの結果だけで生活能力を判断することはできません。
生活行為への転移を見るには、実際のADL・IADL場面での観察が必要です。
作業療法では、アプリ上の反応をきっかけに、生活行為で何が起きているかを確認する使い方が適しています。
注意点
このアプリは教育用・説明用のプロトタイプです。
医療機器ではありません。
標準化検査の代替として使うことはできません。
診断、能力判定、運転可否判断、復職可否判断などには使用しないでください。
結果は、画面サイズ、入力方法、姿勢、疲労、理解度、練習の有無、ターゲット配置によって変わります。
特に注意が必要なのは、次の点です。
- 「時間が遅い=能力が低い」と単純に判断しない
- ミスの数だけで評価しない
- 標準化検査名と混同されないように説明する
- 本人に失敗体験を強く与えすぎない
- 焦りや疲労が強い場合は中止する
- 結果よりも観察と振り返りを重視する
Therabby上では、評価アプリというより、課題の構造を説明する教材アプリとして見せた方が安全です。