DENVER-Ⅱ検査とは?発達遅滞を早期発見する方法と実施手順を徹底解説【リハビリ・発達支援向け】

DENVER-Ⅱ(デンバー第二版発達スクリーニング検査)は、0〜6歳の乳幼児を対象にした発達スクリーニング検査です。
発達の4つの主要領域(粗大運動・微細運動・言語・社会性)を多面的に評価し、発達遅滞や発達障害の早期発見に役立ちます。
リハビリテーション領域では、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士が発達経過を客観的に捉える指標として活用しており、療育や個別支援計画の立案にも有用です。
この記事では、DENVER-Ⅱの概要・対象と適応・実施手順・採点と解釈・カットオフ基準・臨床応用までをわかりやすく解説します。



基本情報:DENVER-Ⅱとは

DENVER-Ⅱ(Denver Developmental Screening Test II)は、Frankenburgらによって1992年に改訂された乳幼児用の発達スクリーニング検査です。
診断ツールではなく、発達の「気づき」と「早期支援」への橋渡しを目的としています。

主な特徴

項目内容
対象年齢生後0か月〜6歳
評価領域粗大運動・微細運動/適応・言語・社会性
所要時間約20〜30分
判定カテゴリNormal / Suspect / Untestable
スコア方式Pass / Fail / Refusal / No Opportunity

目的

  • 発達遅滞・発達障害の早期発見
  • 保健・医療・教育現場での発達評価
  • 必要時の再検査・専門機関への紹介
  • 発達経過のモニタリング

DENVER-Ⅱは、子どもの「できる/できない」だけでなく、成長過程における能力の獲得時期を視覚的に把握できる点が特徴です。



対象と適応:どんな子どもに使う?

DENVER-Ⅱは、0〜6歳の乳幼児すべてを対象に使用できます。
特に以下のような場面で有用です。

臨床・地域での活用例

  • 小児科外来での発達相談
  • 保健センター・集団健診
  • 保育所・幼稚園での発達確認
  • 療育施設での経過観察
  • リハビリテーション科での発達スクリーニング

適応の目安

  • 言葉の遅れ、歩行の遅れ、社会的反応の乏しさなどが気になる場合
  • 発達障害が疑われるが診断確定には至らない場合
  • 発達経過を定期的にモニタリングしたい場合

注意点
DENVER-Ⅱはあくまでスクリーニングであり、診断的検査ではありません。
異常が疑われた場合は、WISCや新版K式発達検査などの精査的評価に進む必要があります。



実施方法:準備から評価までの流れ

DENVER-Ⅱの実施は、シンプルながら体系的なステップに基づいて行われます。
以下の流れで評価を進めます。

① 準備

  • 使用物品:赤い毛糸、小鈴、赤鉛筆、小型人形、プラカップ、積み木など
  • 静かで落ち着いた環境を整える
  • 年齢に応じた記録票を準備

② 年齢線の設定

  • 生年月日から正確な月齢を計算し、記録票上に年齢線を引く
  • 年齢線が交差する項目がその子の「発達域」となる

③ 項目の実施

  • 4領域(粗大運動/微細運動/言語/社会性)から順に評価
  • 評価者は温かく支持的な態度を保ち、課題の意図を簡潔に説明

④ 記録

  • 各項目を以下の4分類で記録
    • Pass(できた)
    • Fail(できなかった)
    • Refusal(拒否)
    • No Opportunity(機会なし)

⑤ 再検査・紹介

  • SuspectまたはUntestableの場合は、1〜2週間後に再評価
  • 結果が変わらなければ、専門機関への紹介を検討


採点と解釈:結果の読み方と判定基準

DENVER-Ⅱの判定は、単一項目ではなく「全体パターン」で解釈します。

基本概念

判定項目定義意味
Delay(遅れ)年齢線の左側の項目でFailまたはRefusal発達の遅れを示唆
Caution(注意)年齢線が75〜90%の帯域にかかる項目でFail注意が必要な傾向
Normal(正常)Delayがなく、Cautionが1つ以下年齢相応の発達
Suspect(要注意)Delayが1つ以上、またはCautionが2つ以上再評価または紹介が必要
Untestable(判定不能)多数のNo Opportunity/Refusal再検査推奨

判定の流れ

  1. 各領域の結果を総合して発達プロファイルを作成。
  2. DelayやCautionの位置を確認し、判定カテゴリを決定。
  3. Suspect/Untestableの場合は1〜2週間後に再評価。
  4. 発達遅滞の傾向が持続する場合は、専門機関へ紹介。

重要ポイント

  • 評価は「遅れているか」ではなく「発達がどの段階か」を知るためのもの。
  • 子どもの興味や集中力の波を考慮して柔軟に実施すること。


カットオフ値:判定基準と臨床判断

DENVER-Ⅱには、数値的なカットオフスコアは存在しません。
代わりに、DelayとCautionの数と位置関係によって総合判定を行います。

臨床的な判断基準(例)

  • Delayが1項目以上 → 要注意(Suspect)
  • Cautionが2項目以上 → 要注意(Suspect)
  • Delayなし・Caution1以下 → 正常(Normal)

再評価の推奨

  • SuspectまたはUntestable → 1〜2週間後に再検査
  • 状況が変わらない場合 → 発達外来や療育センターへ紹介

補足

  • 数値スコアではなく、年齢線との相対的位置で判断する点がDENVER-Ⅱの特徴です。
  • カットオフ的な扱いを誤用すると、誤った評価につながるため注意が必要です。


標準化・バージョン情報:信頼性と日本版の現状

DENVER-Ⅱは1992年に米国で改訂され、世界各国で翻訳・標準化されています。

標準化概要

項目内容
開発者Frankenburg, Doddsら
改訂年1992年(Denver II)
原版名称Denver Developmental Screening Test II
日本での活用公衆衛生・療育・保育分野などで広く使用
日本語版正式な全国標準化は限定的。地域・施設単位で翻訳使用例あり

信頼性・妥当性研究

  • Shahshahani et al. (2010):信頼性・妥当性ともに高い(イラン版)
  • Durmazlar et al. (1998):国際的妥当性確認(トルコ版)
  • 米国CDC・AAP(小児科学会):一次スクリーニングとして推奨ツールの一つ

日本での現状

  • 公式翻訳版は一部の研究・自治体で使用されているが、全国的標準化データは未整備。
  • 実務では「K式発達検査」「乳幼児精神発達診断法」と併用するケースが多い。


臨床応用と活用事例:リハビリ現場での使い方

リハビリテーション領域では、DENVER-Ⅱを以下のように活用できます。

1. 発達スクリーニングとして

  • 初診時の発達プロフィール把握
  • 発達遅滞や社会的反応の遅れを早期に発見

2. 介入計画の立案

  • 粗大運動や微細運動の得意・不得意を明確化
  • 領域別課題(例:積み木、模倣、言語反応)をもとに訓練方針を設定

3. 経過観察ツールとして

  • 療育プログラム実施前後の比較により効果を確認
  • DelayやCaution項目の改善をモニタリング

4. チーム支援ツールとして

  • 医師・OT・ST・保健師・保育士など多職種間での共通指標として機能

臨床活用例

  • 発達相談外来での初期評価
  • 通所リハでの個別支援プラン策定
  • 乳幼児健診での二次スクリーニング


他検査との関連:併用で精度を高める

DENVER-Ⅱはスクリーニングツールであるため、詳細評価を行う際は他検査との併用が推奨されます。

代表的な併用検査

検査名目的特徴
新版K式発達検査発達水準の詳細把握領域別発達年齢を算出可能
WISC-V学童期以降の知的評価知能構成を多面的に分析
Vineland-II適応行動評価日常生活能力を客観的に測定
M-CHAT自閉スペクトラム傾向スクリーニング18〜30か月児対象

ポイント

  • DENVER-Ⅱで遅れが示唆された場合、上記検査で詳細評価を行う。
  • 多検査併用により、発達支援計画の精度が向上する。


デジタル・ICT対応:現代的活用の展望

近年、DENVER-Ⅱのデジタル化・ICT活用が進みつつあります。

デジタル展開の動向

  • モバイルアプリ版(Denver II App):英語版が海外で利用可
  • 電子記録フォーム:評価・判定・再検スケジュールをクラウドで管理
  • 遠隔評価:オンライン発達相談や在宅支援でのビデオ観察活用

リハ分野での応用例

  • タブレットを使った動画提示や記録の自動化
  • チーム間でのデータ共有(OT・ST・保健師など)
  • VR/ARを使った模倣課題・視覚認知トレーニングとの連携研究

注意点

  • 日本語版公式アプリは未整備のため、導入時は倫理・データ保護の確認が必要。
  • ICT化による精度の担保には、評価者のトレーニングが不可欠です。


まとめ

DENVER-Ⅱは、乳幼児の発達を多面的に評価できる信頼性の高いスクリーニングツールです。
リハビリ専門職が導入することで、発達支援の初期評価や経過観察がより科学的・客観的に行えるようになります。
ただし、診断的評価には他の詳細検査との併用が不可欠です。


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