小児リハビリテーションでADLの自立度を定量的に評価する「WeeFIM(ウィーフィム)」。
本記事では、WeeFIMの基本構造・対象年齢・評価方法から、採点基準や臨床での活用法、FIMとの違いまでをリハビリ専門職向けにわかりやすく解説します。
子どもの「できる力」だけでなく「実際にしている生活行動」を捉えるための重要な評価法として、臨床現場での応用ポイントも詳しく紹介します。
基本情報|WeeFIMとはどんな検査か?
子どものための機能的自立度評価法(WeeFIM:Functional Independence Measure for Children)は、日常生活動作(ADL)の自立度を定量的に評価するための標準化された尺度です。
成人のFIM(Functional Independence Measure)を小児向けに修正したもので、1994年にMsall、DiGaudio、Duffyらによって発表されました。
WeeFIMは、乳幼児から学童期前半の子どもを対象に、「どの程度介助を必要とするか(介助量)」で自立度を評価します。
評価項目は成人FIMと同じ18項目で構成され、次の6領域に分かれます。
| 領域 | 項目数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| セルフケア(Self-Care) | 6項目 | 食事、整容、清拭(洗体)、更衣(上下)、トイレ動作 |
| 排泄管理(Sphincter Control) | 2項目 | 排尿、排便のコントロール |
| 移乗(Transfers) | 3項目 | ベッド/いす/車いす間、トイレ、浴槽・シャワーへの移乗 |
| 移動(Locomotion) | 2項目 | 歩行/車いす/這い這い、階段昇降 |
| コミュニケーション(Communication) | 2項目 | 理解、表出 |
| 社会的認知(Social Cognition) | 3項目 | 社会的交流、問題解決、記憶 |
「Wee」とは英語で“小さい”という意味であり、「子どものためのFIM」という名称にもその意図が込められています。
対象と適応|WeeFIMが活用される年齢と対象者
WeeFIMは生後6か月から7歳までの小児を主な対象としています。
健常児の発達段階を基準としているため、この年齢層での標準的なADL発達水準を比較的正確に把握できます。
ただし、発達障害や脳性まひなどの障害児では、7歳を超えても使用される場合があります。
また、国際的には次のような区分も存在します:
- 0〜3歳:WeeFIM 0–3 モジュール(発達早期用)
- 3〜7歳:標準WeeFIM(主要年齢層)
- 7歳以上〜12歳未満:FIMまたはWeeFIMを選択
- 12歳以上:原則としてFIMを使用
WeeFIMは、**「どの程度できるか(能力)」ではなく「実際にどのように行っているか(遂行)」**を評価する点が特徴です。
そのため、介護者・保護者からの聞き取りと観察を組み合わせて評価することで、より現実的な生活自立度を反映します。
実施方法|WeeFIMの評価手順と観察ポイント
WeeFIMは、18項目すべてを観察・聞き取り・記録によって評価します。
評価は、通常の生活場面での行動をもとに、介助量と自立度の観点から7段階で採点します。
■評価の進め方
- 評価準備
- 主介護者や保護者から日常の様子を聴取
- 評価環境(自宅・園・病棟など)を確認
- 観察・実施
- 可能であれば実際の動作を観察
- 難しい場合は、行動の再現や動画確認などを活用
- 採点・記録
- 各項目を1〜7点で採点し、18項目の総得点(18〜126点)を算出
- 解釈
- 各領域の自立度プロファイルを作成し、発達段階との比較・介助計画に活用
■評価の留意点
- 評価者は標準的な発達段階を理解しておくことが重要。
- 子どもが**「できる」動作ではなく「実際にしている」動作**を評価。
- 保護者の関与や生活環境も結果に影響するため、包括的な情報収集が不可欠です。
採点と解釈|WeeFIMの7段階スコアと意味
WeeFIMは、介助量に基づく7段階評価スケールを採用しています。
各スコアの意味は以下の通りです。
| スコア | 判定区分 | 定義 |
|---|---|---|
| 7点 | 完全自立 | 補助具なしで安全・効率的に遂行 |
| 6点 | 修正自立 | 補助具使用・時間延長・安全監視を要するが自立 |
| 5点 | 監視/準備 | 口頭指示・見守りが必要 |
| 4点 | 最小介助 | 介助量25%以下(本人が75%以上実施) |
| 3点 | 中等度介助 | 介助量26〜50%未満 |
| 2点 | 最大介助 | 介助量51〜75%未満 |
| 1点 | 全介助 | 介助量75%以上 |
■総得点の範囲
- 最低:18点(全介助)
- 最高:126点(完全自立)
評価結果からは、どの領域が自立しており、どの領域に介助が必要かを明確に把握できます。
また、経時的な変化を追うことで、リハビリテーションの効果や発達の進行度を定量的にモニタリングできます。
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カットオフ値|発達段階における目安
WeeFIMは発達評価というよりも機能的自立度を定量化する評価であり、厳密な「カットオフ値」は設定されていません。
ただし、年齢別の平均得点と標準偏差を基に、発達の遅れや支援の必要度を推定することは可能です。
参考例(健常児データより)
| 年齢 | 平均総得点(目安) |
|---|---|
| 1歳 | 約30〜40点 |
| 3歳 | 約70〜80点 |
| 5歳 | 約100点前後 |
| 7歳 | 約120点前後 |
これらは日本人健常児の規範値(石井ら, 1999 AJPM&R)を参考にしたもので、個人差があります。
発達評価の目的で用いる場合は、発達検査(遠城寺式・津守式など)と併用し、総合的に判断することが推奨されます。
標準化・バージョン情報|日本版WeeFIMの特徴
日本版WeeFIMは、1990年代後半に慶應義塾大学などによる翻訳・標準化が進められました。
その後、**UDSmr(Uniform Data System for Medical Rehabilitation)**によって正式に管理され、WeeFIM IIとして改訂・電子化されています。
■日本版WeeFIMの特徴
- 翻訳・文化的調整が行われ、家庭・学校での使用に適応。
- 日本語マニュアルが存在し、FIM同様のスコアリング基準を維持。
- 標準値データ(6か月〜7歳)を基に、年齢ごとの発達プロファイルを算出可能。
■WeeFIM II(国際版)の主な改訂点
- 0〜3歳用モジュールの追加
- 電子データ収集(UDSmr Pediatric Data System)対応
- 臨床と研究での一貫したベンチマーク化
臨床応用と活用事例|WeeFIMの現場での使い方
WeeFIMは、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士などが連携して使用することが多く、特に小児リハビリテーション領域で幅広く用いられます。
■主な活用例
- 発達障害や脳性麻痺のADL評価
- 小児病棟での自立支援プログラムの効果測定
- 発達リハビリセンターでの経過追跡
- 退院時・入園時の支援計画立案
また、WeeFIMは**「行動としてのADL」を評価するため、発達検査でとらえきれない実生活の自立度や介助負担**を可視化できる点が強みです。
これにより、介護者教育や目標設定にも活用されています。
他検査との関連|発達検査との相関性
研究では、WeeFIM総得点が遠城寺式乳幼児分析的発達検査や津守式乳幼児精神発達検査による発達年齢と高い相関を示すことが報告されています(慶應義塾大学研究班, 1997)。
ただし、WeeFIMは機能的な日常生活能力を評価するものであり、純粋な発達検査とは目的が異なります。
| 検査 | 主な目的 | 相関の特徴 |
|---|---|---|
| 津守式発達検査 | 精神発達の年齢換算 | WeeFIM総得点と高相関 |
| 遠城寺式発達検査 | 身体・社会・言語発達評価 | 各領域とWeeFIM項目の対応性あり |
| FIM | 成人ADL評価 | 構造的に同等。WeeFIMは小児版 |
このように、WeeFIMは発達検査を補完する形で使用することで、発達の質的な側面とADL自立度の両面を把握できます。
デジタル・ICT対応|WeeFIMの電子化と今後の展望
近年、WeeFIMは電子カルテやモバイル端末での入力に対応し、UDSmr社の「WeeFIM II」システムとしてデジタル管理が進んでいます。
■主なデジタル対応例
- 電子スコアリングツール:タブレットやPCで自動集計
- クラウドデータベース:症例データを匿名化して研究活用
- 発達曲線の可視化:年齢・得点ごとの推移を自動グラフ化
- 教育・研修支援:オンラインマニュアル・動画教材が提供
今後は、AIを活用した自動分析や、リハビリ支援アプリとの統合も進むとみられます。
また、保護者が自宅で簡易的に入力できる**家庭版WeeFIM(予測スコア型)**の開発も期待されています。
参考文献
- Msall ME et al. WeeFIM: Functional Independence in Children. Clin Pediatr 1994.
- 石井ら. 日本人健常児におけるWeeFIM発達規範. Am J Phys Med Rehabil. 1999.
- Uniform Data System for Medical Rehabilitation (UDSmr) official materials.
- 慶應義塾大学リハビリテーション医学教室. WeeFIM日本語版マニュアル.
このように、WeeFIMは小児の「できる」だけでなく「している」生活行動を捉え、リハビリテーションの方向性を明確にする実践的評価法です。
小児領域での介入計画や家族支援において、欠かせないツールとして位置づけられています。