FMA(Fugl-Meyer Assessment)とは?脳卒中片麻痺の運動回復を数値化するリハビリ評価法を徹底解説

脳卒中後の片麻痺リハビリにおいて、「どれだけ回復しているのか」を正確に把握することは重要です。
FMA(Fugl-Meyer Assessment)は、運動・感覚・バランスなどを定量的に評価できる世界的な標準スケールです。
本記事では、FMAの基本情報・対象・実施手順・採点方法・臨床活用・ICT化の最新動向までをわかりやすく解説します。



基本情報:FMAとは何か?

Fugl-Meyer Assessment(FMA)は、脳卒中後の片麻痺患者における運動機能の回復を定量的に評価する国際的な標準評価法です。
1975年にFugl-Meyerらによって開発され、感覚・運動・バランス・関節可動域・関節痛の5領域に分かれた包括的スケールとして広く使われています。

FMAは、Brunnstromの回復段階理論に基づき、運動の出現と統合のプロセスを段階的に評価できる点が特徴です。
臨床では機能回復の目安、研究では介入効果の比較・検証に用いられています。

FMAの特徴

  • 感覚運動障害の回復度を数値化できる
  • 評価用紙と基本的な備品のみで実施可能
  • 信頼性・再現性が高い(ICC>0.95)
  • 世界各国で翻訳版が使用されている

一方で、項目数が多いため評価時間が長く、検者の熟練度が結果の信頼性に影響する点には注意が必要です。



対象と適応:どのような患者に用いるか

FMAは、主に脳卒中による片麻痺患者の運動機能回復を評価するために開発されました。
適応範囲は以下の通りです。

対象となる疾患・状態

  • 脳梗塞・脳出血後の片麻痺
  • 外傷性脳損傷後の片麻痺
  • 一側上下肢の運動麻痺を呈する神経疾患

対象の特徴

  • 意識が清明で指示理解が可能な者
  • 重度失語・失認・失行が著明でない者
  • 安静坐位・立位保持がある程度可能な者

また、FMAは「上肢」「下肢」「感覚」「バランス」「関節可動域・痛み」といったサブスケール単位での評価も可能です。
たとえば、FMA-UE(上肢版)はリハビリ効果の検証や研究に最も多く用いられています。

一方で、認知障害や高次脳機能障害などはFMAの評価範囲に含まれないため、ADLや社会参加を含む包括的な機能評価を行う際には、FIMやSIASなど他の指標と併用することが推奨されます。



実施方法:必要物品と評価手順

FMAの実施には特別な高額機器を必要とせず、以下のような基本的な備品で評価できます。

準備物品

  • 評価用紙
  • 打腱器
  • 紙・鉛筆
  • 缶や瓶(シリンダ)
  • テニスボール
  • 綿ボール
  • ゴニオメーター(関節角度計)
  • アイマスク(感覚検査用)
  • 椅子、ベッドサイドテーブル
  • ストップウォッチ

評価項目

  1. 上肢運動(66点)
  2. 下肢運動(34点)
  3. 感覚機能(24点)
  4. バランス機能(14点:座位6点+立位8点)
  5. 関節可動域(44点)
  6. 関節痛(44点)

所要時間

  • 全項目:約30〜60分(平均45分前後)
  • 上肢のみ:約15〜30分

被験者の疲労度に配慮し、休憩を挟みながら段階的に進めることが望ましいとされています。

実施前には「時間がかかる評価であること」をクライアントに説明し、心理的・身体的負担を軽減できる環境づくりが大切です。



採点と解釈:スコアの意味と評価精度

FMAはすべての項目を**3段階評価(0〜2点)**で採点します。

評価意味
0点全くできない
1点部分的または不十分にできる
2点正常または十分にできる

総得点は226点満点で、以下のように構成されています。

項目満点
運動機能(上肢66+下肢34)100点
感覚機能24点
バランス14点
関節可動域44点
関節痛44点
合計226点

得点が高いほど運動機能や感覚の回復が良好と判断されます。
研究では、FMA-UEの改善が上肢ADLの改善(FIM-MotorやARATなど)と強く相関することが示されています。

信頼性については、検者間・検者内ともにICC>0.95と非常に高く、訓練を受けた評価者であれば再現性の高い結果を得られます。



カットオフ値:回復判定の目安

FMAには「カットオフ値」として明確な基準は存在しません。
しかし、臨床的には次のような回復段階の目安として用いられることがあります。

  • 0〜50点:重度麻痺
  • 51〜84点:中等度麻痺
  • 85点以上:軽度麻痺

また、上肢に関してはFMA-UE 50点以上で手指・上肢動作の実用性が高まるという報告もあります(Page et al., 2001)。

このようにFMAのスコアは絶対的基準ではなく、経時的変化の指標として活用されることが重要です。
治療経過における「before-after」の比較により、介入効果や自然回復の度合いを客観的に捉えることができます。



標準化・バージョン情報:国際的な普及状況

FMAは世界的に使用されており、各国語版が標準化・検証されています。

主な標準化データ

  • 原版:Fugl-Meyer et al. (1975)
  • 英語版(改訂版):Gladstone et al. (2002)
  • 日本語版:上田ほかによる翻訳研究あり
  • 中国語版・韓国語版・スウェーデン語版なども信頼性確認済み

信頼性・妥当性

  • 高い内的一貫性(Cronbach’s α > 0.95)
  • 高い再現性(ICC > 0.90)
  • 他検査(FIM, ARAT, WMFTなど)との高い相関性

また、上肢機能評価に特化した「FMA-UE」や、簡略版の「Short FMA」なども研究利用が進んでおり、臨床負担を軽減した形式が開発されています。



臨床応用と活用事例:実際の現場での使い方

FMAは以下のような臨床シーンで有効に活用されています。

1. 回復過程の定量評価

  • 脳卒中初期〜慢性期までの運動回復経過を数値で把握
  • 回復期リハビリでの機能変化の可視化に最適

2. 治療効果の検証

  • 介入プログラム(促通療法、CI療法、ロボット療法など)の前後比較
  • 研究論文や学会発表での標準的アウトカム指標として使用

3. 他職種・多施設での共有

  • スコアが統一されているため、他施設間の比較が容易
  • 医師・理学療法士・作業療法士間の共通言語として活用可能

4. モチベーション支援

  • クライアント自身が数値で改善を実感でき、自己効力感を高める要素となる

このようにFMAは、単なるスコアリングにとどまらず、リハビリの「見える化」に貢献する指標といえます。



他検査との関連:FIM・ARAT・SIASとの併用

FMAは主に運動機能の回復度を評価するスケールであり、ADLや社会参加を直接測定するものではありません。
そのため以下の検査との併用が推奨されます。

検査名主な評価領域補完関係
FIM(機能的自立度評価)ADLの自立度FMAで得た機能回復をADLレベルで補足
ARAT(上肢機能テスト)手指の巧緻動作FMA-UEの実用性確認に適する
SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)感覚・運動・高次脳機能FMAより簡便でスクリーニング的に有効

また、FMAの運動項目はBrunnstrom Stageと対応関係があり、ステージごとの回復段階を客観的に追跡する際にも利用されています。



デジタル・ICT対応:自動評価とオンライン活用の現状

近年、FMAの評価をデジタル化・自動化する取り組みが進んでいます。
代表的な開発事例は以下の通りです。

1. 動作解析センサーによる自動スコアリング

  • モーションキャプチャーや加速度センサーを用いてFMA項目を自動評価
  • 人的誤差を減らし、時間短縮が可能

2. タブレットアプリ・Web版FMA

  • 項目入力・得点計算を自動化するシステム(例:RehabMeasures, PhysioToolsなど)
  • スコア履歴のグラフ化・エビデンスデータ管理に対応

3. VR/ARを活用した上肢トレーニング

  • FMAスコア改善を目的としたVR上肢リハビリプログラムの臨床試験が増加中(2020年代以降)

デジタル版FMAは、今後の遠隔リハビリ・AI支援評価の基盤ツールとして期待されており、研究開発が続いています。



まとめ

Fugl-Meyer Assessment(FMA)は、脳卒中片麻痺の運動回復を最も体系的に評価できるスケールのひとつです。
正確な手順と再現性の高い採点により、治療効果の「見える化」を可能にします。
今後はデジタル技術の導入により、より効率的かつ客観的なリハビリ評価ツールとしての進化が期待されます。


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