【完全解説】ボックス&ブロックテスト(BBT)とは?|上肢機能を1分で評価できるリハビリ検査マニュアル

ボックス&ブロックテスト(Box and Block Test:BBT)は、わずか1分で上肢の粗大巧緻動作を数値化できるリハビリ評価法です。
脳卒中やパーキンソン病、整形疾患など、上肢機能の左右差や改善経過をシンプルに把握できることから、理学療法士・作業療法士を中心に世界的に用いられています。
この記事では、BBTの基本情報から実施方法、採点・解釈、臨床応用、さらにはデジタル化までをリハビリセラピスト向けにわかりやすく整理しました。
評価場面で迷わないよう、図表・チェックリスト形式で徹底的に解説します。



基本情報|ボックス&ブロックテストとは

ボックス&ブロックテスト(Box and Block Test:BBT)は、上肢の粗大巧緻動作(gross manual dexterity)を定量的に測定するための評価法です。
主に片手でブロックを掴んで移動させるスピードを測定するもので、1分間に移動できたブロックの数をスコアとします。

BBTの特徴

  • 評価時間が短く(約3〜5分)簡便
  • 再現性・信頼性が高い
  • 学習効果が少ない
  • リハビリ介入の経過追跡に適している

使用する器具

項目内容
箱のサイズ約53.7 × 25.4 × 8.5 cm(中央に仕切り)
ブロック一辺2.5 cmの立方体(約150個)
試行時間各手1分間
評価姿勢椅子に座位、肘90度屈曲、前腕中間位で机上に支持

BBTは上肢のスピードと協調動作を評価する代表的な検査であり、手指や前腕の麻痺、筋力低下、巧緻動作の障害を簡便に数値化できる点が特徴です。



対象と適応|どんな患者に有効か

BBTは、上肢の動作能力を必要とするあらゆる対象に適用可能です。特に、以下のような疾患・病態で広く使用されています。

適応疾患の例

  • 脳卒中(片麻痺)
  • 脳外傷後の上肢機能障害
  • パーキンソン病などの運動緩慢
  • 末梢神経損傷、手外科疾患
  • 骨折後のリハビリ
  • 高齢者の巧緻性・フレイル評価

臨床での主な使用目的

  • 左右差の定量化
  • 回復過程の経時的追跡
  • 訓練効果の評価(Before/After)
  • 装具・補助具・治療機器の効果検証

実施上の注意

  • 注意障害、失認、失行が強い場合はルール理解を確認
  • 疼痛、疲労、血行動態不安定などでは中止基準を設定
  • 評価条件(椅子高・机高・ブロック配置)を標準化

BBTは単に「スピード」を測る検査ではなく、上肢動作における協調性・集中力・反応速度の総合評価として位置づけられます。



実施方法|標準化された測定手順

BBTの実施はシンプルですが、再現性を確保するためには手順の統一が不可欠です。

標準化された手順

  1. 被験者を座位にし、テーブル中央に箱を設置します。
  2. 測定する手で、ブロックを1つずつ中央の仕切りを越えて隣の区画へ移動します。
  3. 反対の手は膝の上に置き、補助をしないようにします。
  4. 1分間で移動できたブロックの個数をカウントします。
  5. 左右別に実施し、それぞれのスコアを記録します。

測定のポイント

  • 練習試行を10秒程度行い、ルール理解を確認。
  • ブロックを2個以上同時に持つのは無効。
  • 移動途中でブロックを落とした場合はカウントしない。
  • 終了の合図は明確に伝える。

姿勢・環境設定

項目標準条件
姿勢肘90度屈曲、前腕回内外中間位
テーブル高肘下3〜5cm程度が理想
椅子背もたれ付き・足底接地

再現性を高めるため、姿勢・器具・実施者を統一することが重要です。



採点と解釈|スコアの見方と評価基準

採点は「1分間に移動できたブロック数(個)」を得点とします。
左右の値を独立して扱い、利き手・非利き手の差を比較します。

主な評価のポイント

  • 左右差の大きさ(通常5個以内が正常範囲)
  • 経時的変化(リハ効果のモニタリング)
  • 年齢・性別参照値との比較
  • 疾患特性に応じた解釈(例:片麻痺、震戦)

スコア解釈の目安(成人例)

年齢層男性平均(右/左)女性平均(右/左)
20〜39歳約85 / 78個約80 / 75個
40〜59歳約80 / 75個約75 / 70個
60歳以上約70 / 65個約65 / 60個

信頼性と感度

  • 再検査信頼性:r=0.94〜0.98(高信頼)
  • 最小可検変化(MDC):約5〜6個
  • 学習効果:1〜2個程度と小さい

リハビリの効果判定では、「5個以上の変化」が臨床的に意味のある改善として扱われることが多いです。



カットオフ値|どこから機能低下とみなすか

BBTは連続変数評価であり、厳密な「カットオフ値」は疾患や年齢で異なります。
一般的には、同年代の平均値−1SD以下を「低下域」とみなします。

臨床的な参考目安

  • 同年代平均−10%:軽度低下
  • 同年代平均−20%:中等度低下
  • 同年代平均−30%:重度低下

また、以下の臨床指標との関連も注目されています。

  • 日常生活動作(ADL)での自立レベルと関連
  • 職業復帰や上肢動作速度の指標として有用
  • Fugl-Meyer Assessment(FMA-UE)との中等度相関

カットオフ値の運用では、「経時変化(Δスコア)」を重視し、個人内比較を中心に解釈するのが安全です。



標準化とバージョン情報|再現性を高める工夫

BBTは、国際的に標準化された手順が確立しています。

標準化要素

  • ブロック:木製2.5cm角(質量・摩擦が一定)
  • 箱サイズ:53.7×25.4×8.5cm(中央に仕切り)
  • 時間:1分間
  • 実施条件:椅子高・机高・姿勢を統一
  • カウント方法:検者が明示的に数えるか、タイマー連動カウンター使用

再現性確保のための工夫

  • 測定手順書(SOP)の作成
  • 検者トレーニングによる誤差削減
  • デバイス間較正(自作器具と市販品での検証)

BBTには派生版として、小児版BBT(Pediatric BBT)も存在し、3歳〜15歳までの発達段階に合わせた基準値が整備されています。



臨床応用と活用事例|現場での実践例

BBTは臨床現場でさまざまな目的に活用できます。

活用例

  1. 回復期リハ:週1回のBBTで上肢回復の推移を定量化。
  2. 急性期:早期介入効果を短時間で測定。
  3. 生活期:ADLスピードや家庭内作業(洗濯・調理など)との関連づけ。
  4. 装具評価:装具・補助具装着の有無によるスコア比較。
  5. 職業復帰支援:手作業の反復速度・協調性を評価。

記録・報告の工夫

  • スコアの推移をグラフ化(週次・月次)
  • 疼痛・疲労感(Borgスケール)との併記
  • 動画記録による動作分析

臨床的な意義
BBTは、訓練成果を“数値で見える化”できるツールとして、モチベーション維持にも寄与します。
また、作業療法・理学療法・リハビリ工学の連携評価にも活用しやすい点が強みです。



他検査との関連|併用で見える上肢機能の全体像

BBTはスピード中心の粗大巧緻性検査であり、他検査と組み合わせることでより多面的な評価が可能です。

分野併用検査評価の焦点
微細巧緻性Nine Hole Peg Test(NHPT)つまみ・分化動作
両手協調Purdue Pegboard Test両手の連携・組立能力
ADL速度Jebsen-Taylor Hand Function Test実生活動作に近い速度
筋力握力・ピンチ力測定出力能力の基礎評価
麻痺段階FMA-UE・ARAT麻痺回復段階の把握

読み解きのポイント

  • BBTとNHPTの乖離=「スピード良好だが精度低い」などの分析材料に。
  • ARATやFMA-UEと併用し、神経回復と巧緻性の関係を確認。
  • 機能低下の要因(筋力/協調/注意/感覚)を分離して分析。

複数指標を組み合わせることで、よりICF的な包括評価が可能になります。



デジタル・ICT対応|AIと連携する次世代のBBT

近年はBBTのデジタル化・自動化が進んでいます。

ICT応用の方向性

  1. 自動カウント装置の導入
     ブロック移動を赤外線センサーやカメラで検出し、自動で個数を記録。
  2. デジタルデータ管理
     スコアを電子カルテ・クラウドに同期し、グラフ化・比較分析が容易。
  3. VR/ARによる模擬評価
     仮想ブロックを操作するAR版BBTが研究段階で開発中。
  4. AI解析
     動作軌跡・速度・リズムをAIが解析し、「協調性」や「疲労傾向」を可視化。

導入上の注意

  • センサー位置や反応時間の較正を必ず行う。
  • 自作器具を使用する場合は標準寸法に準拠。
  • データの個人情報保護・匿名化を徹底。

デジタルBBTは、在宅リハビリ・遠隔リハ支援にも応用可能であり、今後のリハビリ評価の標準ツールとして期待されています。



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