CAT(Clinical Assessment for Attention:標準注意検査法)は、日本高次脳機能障害学会が開発した、注意機能を体系的に評価する日本の標準検査です。
持続・選択・転換といった注意の下位機能を多面的に測定し、脳損傷や高次脳機能障害などにおける認知的困難を可視化します。
また、最新版のCAT-R(2022年改訂版)では、標準化データとPC課題が更新され、より臨床現場で使いやすくなりました。
本記事では、CATの基本情報から実施方法、採点、臨床での活用までをわかりやすく解説します。
CAT(標準注意検査法)とは
CAT(Clinical Assessment for Attention:標準注意検査法)は、日本高次脳機能障害学会 Brain Function Test 委員会が作成した、注意機能を体系的に評価する標準検査です。
注意の下位機能(持続・選択・転換など)を多面的に測定し、臨床介入や経過評価に役立つ信頼性の高いツールとして位置づけられています。
正式名称:標準注意検査法(CAT)
最新版:CAT-R(2022年改訂版)
開発:日本高次脳機能障害学会・Brain Function Test 委員会
診療報酬点数:D285-3 450点
CATは、脳損傷後の注意障害を中心に、注意の障害構造を明確化し、作業療法や神経心理学的リハビリテーションの方向性を導く検査として活用されます。
CATの主な特徴
- 注意の下位機能を定量的に評価できる
- 年齢別・教育歴別の標準化データを完備
- 下位課題ごとに信頼性・妥当性が検証済み
- 実施者間の再現性が高く、施設間比較が可能
CATは、注意障害の「気づき」「代償」「訓練」の基礎をつくる検査として、臨床実践で広く用いられています。
対象と適応
CATは、脳損傷や加齢により注意機能の低下がみられる方を中心に、広く臨床で使用されています。
特に、脳血管障害後の注意障害、高次脳機能障害、外傷性脳損傷、認知症初期などに有用です。
対象となる主な疾患
- 脳卒中後の注意低下(右半球損傷に多い)
- 外傷性脳損傷や低酸素脳症
- 脳腫瘍・脳炎後の注意障害
- 軽度認知障害(MCI)や初期認知症
評価目的
- 注意機能の構造的把握(どの段階に問題があるか)
- リハビリ介入前後の比較(効果検証)
- 退院・復職時の能力評価
- 注意訓練プログラムの設計根拠として活用
また、CATは注意に特化した検査であるため、遂行機能や社会的認知などを補う際には、BADSやFABなど他の検査と併用することが推奨されます。
実施方法と構成
CATは、半構造化された複数の下位検査から構成されており、所要時間はおおむね40〜60分です。
安静で静かな環境を確保し、注意の持続や転換が途切れないよう配慮します。
実施の流れ
- 説明と同意:被検者に目的と手順を説明し、理解を確認
- 課題実施:各下位検査を規定手順で提示
- 記録:反応時間・正答数・誤り・修正行動を詳細に記録
- 採点:基準表に基づいて得点化し、年齢別標準値と比較
- 解釈:注意のどの側面に問題があるかを分析
主な下位検査
| 分類 | 下位課題 | 測定内容 |
|---|---|---|
| 持続的注意 | CPT(Continuous Performance Test) | 一定時間の反応持続力 |
| 選択的注意 | 抹消課題 | 不要情報の抑制力 |
| 転換的注意 | TMT(Trail Making Task)類似課題 | 課題切り替え能力 |
| 聴覚的注意 | PASAT | 同時処理能力・情報保持 |
| 短期記憶関連 | 数唱・視空間スパン | 情報保持と更新 |
実施者は、反応パターンやエラーの質を観察することが不可欠です。単に得点を出すのではなく、遂行のプロセスを把握することで臨床的価値が高まります。
採点と解釈のポイント
CATの採点は、正答率や反応時間などの定量データと、エラー傾向や戦略使用などの定性データの両面から評価します。
定量的評価項目
- 正答率・的中率:集中力と抑制の指標
- 反応時間:情報処理速度の評価
- エラー数:衝動性や選択的不注意の指標
- 達成率:持続的注意力の指標
定性的評価項目
- エラーの種類(省略・保続・衝動など)
- 自己修正の有無
- 注意の再集中に要する時間
- 課題への適応戦略(スキャン方法・確認行動など)
解釈例
| 評価結果 | 臨床的意味 |
|---|---|
| 反応時間の遅延 | 注意転換・処理速度の低下 |
| エラーの保続傾向 | 前頭葉機能の抑制障害 |
| 自己修正なし | モニタリング障害の可能性 |
| 途中集中力低下 | 持続的注意の障害 |
これらをICFモデル(心身機能・活動・参加)に沿って整理することで、日常生活動作や社会参加に結びつけた介入設計が可能となります。
標準化とバージョン情報
CATは2000年代初頭に開発され、2022年に最新版「CAT-R(改訂版)」が公表されました。
同時に「CAS(標準意欲評価法)」とペアで使用できる形で頒布されています。
標準化の経緯
- 日本人健常者・脳損傷者を対象に大規模データ収集
- 年齢・教育歴別の基準値を整備
- 再検査信頼性・評価者間信頼性を検証済み
- 改訂により一部課題(CPT2など)をPC実施に対応
CAT-Rの特徴
- 注意下位機能ごとの解釈枠組みを明確化
- 臨床現場での簡便化を重視
- 同封ソフトウェアにより自動集計が可能(Windows対応)
- 診療報酬区分「D285-3」として算定可能
標準化データの充実により、CATは日本の注意機能評価の基準として確立されています。
臨床応用と実践例
CATは「評価して終わり」ではなく、介入設計の出発点として活用されます。
注意障害はADLやIADLの遂行に直結するため、CATの結果を基に具体的な支援を設計します。
臨床応用の例
- 回復期リハビリでの注意訓練プログラム設定
- 就労支援での業務負荷調整や環境整備
- 在宅支援における注意分散対策
- 認知症初期の注意維持訓練(音読・視覚課題など)
作業療法士の視点からの活用
- 結果→行動分析→介入計画の流れを作る
- 家族・多職種と情報共有し、環境調整を提案
- 注意機能の改善を「できることの拡大」として説明
- 再評価で経過を追い、リハのPDCAを可視化
CATは、作業療法士の「観察力・分析力・説明力」を統合的に活かす検査といえます。
他検査との組み合わせ
CATは注意に特化した検査であるため、他の認知検査と組み合わせることでより多面的な理解が得られます。
| 検査名 | 主な評価領域 | CATとの関係 |
|---|---|---|
| FAB(前頭葉機能検査) | 遂行・抑制 | 前頭葉由来の注意障害を補完 |
| BADS | 遂行機能 | 実生活場面での行動制御との関連分析 |
| TMT | 注意の切り替え | CATの転換課題と比較検討が可能 |
| MMSE | 全般認知 | CATで注意領域を詳細化 |
| CAS | 意欲・動機 | 注意機能との関連評価が可能 |
これらを組み合わせることで、**「注意×遂行×動機」**という臨床三軸を包括的に捉えることができます。
デジタル・ICT対応
CAT-Rでは、一部課題(例:CPT2、PASAT)をPC上で提示・記録する形式に対応しており、より正確な反応時間測定が可能になりました。
現在のICT対応範囲
- CPT2課題:専用ソフトで刺激提示と自動集計
- PASAT課題:音声提示と入力の自動記録
- 結果のデジタル保存と印刷出力
将来的な展望
- 自動化された反応パターン解析(AI支援)
- 遠隔実施(テレリハ)への応用研究
- CompBased-CAT(地域高齢者対象PC版)との連携研究
現時点で「公式タブレット版CAT」は存在しませんが、今後のデジタル実装に向けた研究が進行中です。
ICT化により、CATはより効率的で再現性の高い評価ツールへと進化しています。
まとめ
CAT(標準注意検査法)は、日本の注意障害評価のスタンダードとして広く臨床で活用されています。
その意義は、単なるスコアリングではなく、注意機能を生活行動へどうつなげるかにあります。
- 注意の下位機能を明確化し、介入計画に直結できる
- 結果をもとにチームで共有し、支援方針を統合できる
- 再評価によりリハビリ効果を定量化できる
作業療法士にとってCATは、「認知評価」と「生活支援」を橋渡しするツールです。
注意障害を的確に捉え、患者の生活再構築を支える実践の中核に位置づけられます。
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CAT(標準注意検査法)は注意機能を定量的・定性的に評価し、リハビリ介入に直結する日本の標準検査。最新版CAT-R(2022年)対応。
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