DAD(Disability Assessment for Dementia)とは?認知症のADLを介護者インタビューで可視化する評価法【作業療法士・リハビリ向け解説】

DAD(Disability Assessment for Dementia)は、認知症の方の生活自立度を、介護者へのインタビューで評価する国際的な尺度です。
「過去2週間に実際に行ったか」という実行ベースの指標により、在宅生活でのADL・IADL能力を正確に把握できます。

本記事では、作業療法士やリハビリ専門職向けに、DADの基本情報から採点法、臨床での活用事例、ICT対応までをわかりやすく解説します。



基本情報|認知症の生活機能を包括的にとらえるDADとは

DAD(Disability Assessment for Dementia)は、認知症のクライアントにおける日常生活動作(ADL)能力を介護者インタビューによって評価する尺度です。
1999年にカナダのGélinasらによって開発され、アルツハイマー型認知症(AD)を中心とした地域在住者の機能障害評価に用いられています。

特徴として、能力(できる/できない)ではなく、「過去2週間に実際に行ったかどうか」という実行(performance)を測定します。
これにより、生活の中での遂行度をリアルに反映でき、介護者の観察を通じて機能低下の早期発見が可能です。

評価の主な領域:

  • 基本的ADL(B-ADL):衛生、更衣、排泄、摂食など
  • 手段的ADL(IADL):食事準備、家事、外出、金銭・服薬管理、電話、在宅安全など
  • 余暇・趣味活動

構成項目: 全40項目
所要時間: 約15分
評価者: 介護者(家族、介護スタッフなど)へのインタビュー形式



対象と適応|主に在宅のアルツハイマー型認知症患者に適応

DADは、在宅または地域で生活する軽度〜中等度の認知症者を対象としています。特に、アルツハイマー型認知症(AD)患者の自立度評価で信頼性が高く、日常生活の中での変化を定量的に把握できます。

対象条件としては以下が挙げられます。

  • 認知症の診断を受けており、日常生活に介助や支援が必要な方
  • 2週間以上、介護・観察している家族または介護者がいること
  • 在宅、通所、施設入所いずれの環境でも可(特別な機材は不要)

一方、重度認知症や介護者が不在の場合は、質問への回答精度が低下するため適応が難しい場合があります。
DADは患者本人の回答能力を前提としないため、失語や記憶障害があっても施行可能です。



実施方法|介護者へのインタビュー形式で行う15分評価

DADは介護者への半構造化インタビュー形式で実施します。評価期間は「過去2週間の行動」が対象です。
面接は静かな環境で行い、評価者が質問票に沿って回答を記録します。

実施手順:

  1. 評価票の準備(DAD質問票を使用)
  2. 介護者に「過去2週間に本人が実際に行ったか」を尋ねる
  3. 各項目に「はい(1点)」「いいえ(0点)」「非該当(N/A)」で回答
  4. 全40項目を網羅(B-ADL・IADL・余暇活動)
  5. 所要時間は約15分

評価上の留意点:

  • クライアントの性別や文化的背景で行っていない活動は「N/A」として除外
    例:料理経験のない男性、車を運転しない女性など
  • 能力ではなく「行動の実施」を評価するため、実行されていない理由(忘却、無関心、身体制限など)を併せて把握すると臨床的解釈が深まります。


採点と解釈|%スコアで自立度を可視化

DADの採点は以下のルールで行います。

評価区分記入内容得点
実施したはい(Yes)1点
実施しなかったいいえ(No)0点
非該当N/A(除外)分母から除外

スコア算出:

[総得点 ÷(回答可能項目数) × 100 = 自立度スコア(%)]

このスコアは0〜100%で表され、高いほど自立度が高いことを示します。
B-ADL、IADL、余暇活動など各領域ごとにサブスコアを算出することも可能です。

解釈のポイント:

  • 約80%以上:多くのADLを自立して実行可能
  • 40〜70%:中等度の介助・監督が必要
  • 40%未満:多くの生活動作で介助を要する

また、スコア変化は病勢進行や介護方針変更の指標として有用です。介入効果やリハビリ成果を数値で示すこともできます。



カットオフ値|重症度分類はないが変化指標として有効

DADには明確な「カットオフ値(基準値)」は設定されていません。
これは疾患進行度や文化背景、生活環境によってばらつきが大きいためです。

ただし、臨床的には以下のような傾向が報告されています。

  • 70〜80%台:軽度認知症レベル
  • 40〜70%台:中等度認知症レベル
  • 40%未満:高度認知症レベル

個々の経過を縦断的に比較し、変化量(減少率)を観察することが推奨されています。
特に在宅生活の維持・デイサービス利用判断などにおいて、有効な指標となります。



標準化・バージョン情報|国際的に広く使用される認知症ADL尺度

DADはカナダで開発され、英語・フランス語版を中心に世界的に標準化されています。
日本語版は正式翻訳版は限定的ですが、研究レベルでは国内でも一部施設で使用されています。

基本情報まとめ:

項目内容
開発者Gélinas, I. et al., 1999
開発国カナダ
原著言語英語/フランス語
構成40項目(B-ADL+IADL+余暇)
評価形式介護者インタビュー
標準化欧米・カナダを中心に信頼性・妥当性検証済み
日本語版研究レベルで一部翻訳利用あり

心理測定学的には、内的一貫性α=0.96、再現性ICC=0.95前後と報告され、高い信頼性を有します。



臨床応用と活用事例|介護計画・リハビリ評価・研究の指標に

DADは以下のような場面で活用されています。

  • 在宅介護計画の立案(自立度に応じた支援設計)
  • リハビリ介入効果の評価(ADL能力の維持・改善)
  • 病勢進行のモニタリング
  • 介護負担・介護効率の改善支援
  • 臨床研究・介入試験での主要アウトカム指標

特に、認知症の機能的変化を定量的に示せる点が強みであり、BI(Barthel Index)など身体中心の評価では拾いきれない「遂行機能低下」も反映できます。
在宅生活支援や地域リハにおいて、実際の生活パフォーマンスの質をとらえる尺度として有用です。



他検査との関連|BIやIADL系尺度との併用で精度向上

DADはBarthel Index(BI)やLawton IADL尺度と高い相関を示すことが知られています。
また、Mini-Mental State Examination(MMSE)との関連では中等度の相関(r≈0.6前後)が報告されています。

代表的な関連尺度との比較:

評価法主対象評価者評価範囲特徴
BI身体ADL評価者実施能力短時間・身体中心
Lawton IADL高次ADL本人/介護者IADL中心性差影響あり
DAD認知症ADL介護者B/IADL+余暇実行重視・文化補正可

リハビリ実践上のポイント:
BIやMMSEなど他検査と併用し、身体・認知・行動の三側面から統合的に評価することが推奨されます。



デジタル・ICT対応|オンライン面接・電子化での応用も進む

近年、DADは電子版(e-DAD)や遠隔面接対応が検討されています。
タブレットやクラウドシステム上での入力により、スコア自動算出・経過グラフ化が可能になりつつあります。

ICT応用の事例:

  • 介護記録アプリとの連携による日常データ収集
  • 遠隔介護支援でのオンライン面接フォーム(Zoom等)
  • データベース化による経時変化の可視化

将来的には、AIによる生活動作検出(センサーモニタリング)とDADスコアの統合も期待されています。
デジタル化により、より客観的で継続的な在宅生活支援が可能になるでしょう。



参考文献

  • Gélinas, I., Gauthier, L., McIntyre, M., & Gauthier, S. (1999). Disability Assessment for Dementia (DAD): Measurement of functional disability in AD and other dementias. Int J Geriatr Psychiatry, 14(10), 978–988.
  • DCRC (Dementia Collaborative Research Centres). Assessment Tools: Disability Assessment for Dementia (DAD).
  • 日本認知症ケア学会編『認知症ケアハンドブック 第2版』

関連文献

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