GHQ(General Health Questionnaire)は、精神的健康状態を短時間で評価できる自己記入式のスクリーニング検査です。
医療・リハビリ・教育・職場など、あらゆる現場で活用でき、ストレスやうつ傾向、不安などの心理的変化を可視化します。
本記事では、GHQの基本情報から採点法、カットオフ値、臨床応用までをリハビリ専門職向けにわかりやすく解説します。
基本情報:GHQとは何か?
GHQ(General Health Questionnaire:一般健康質問票)は、精神的健康状態をスクリーニングするための自己記入式質問紙です。
開発者は英国の精神科医 David P. Goldberg(1972年)。主に「心理社会的な不調を経験しているが、まだ臨床的診断には至っていない人々」を特定する目的で作成されました。
GHQは医療機関だけでなく、職場・学校・地域など幅広い場面で使用されており、神経症的傾向やストレス、不安、抑うつなどを早期に把握するための代表的ツールです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | GHQ(General Health Questionnaire) |
| 開発者 | David P. Goldberg |
| 日本版監修 | 中川泰彬・大坊郁夫(日本文化科学社) |
| 初版 | 1985年(日本版GHQ60) |
| 形式 | 自己記入式(紙・デジタル両対応) |
| 所要時間 | 約5〜10分 |
| 主な用途 | 精神的ストレス・神経症傾向のスクリーニング |
精神科領域のみならず、リハビリテーションにおける心理的適応評価や、退院支援時のメンタルチェックにも活用可能です。
対象と適応:どのような人に使えるか?
GHQは、12歳以上の青年から高齢者まで幅広く適用可能です。
日本版GHQの対象年齢範囲は「12歳0か月~成人」とされており、臨床・教育・職域・地域保健など多様な環境で利用できます。
主な適応場面
- 一般病院外来やリハビリ病棟でのメンタルスクリーニング
- 精神科以外の診療科での「うつ・不安」早期発見
- 職場におけるストレスチェックや労働衛生管理
- 学校・大学での学生相談やカウンセリング
- 地域包括支援センターや介護施設での高齢者メンタル評価
リハビリセラピストが活用する意義
- 身体機能回復だけでなく、心理的回復や社会参加意欲を多角的に評価できる。
- 精神的不調の早期把握により、介入のタイミングや家族支援の方針が立てやすくなる。
- 認知症・脳血管疾患・整形疾患などでの抑うつ症状の補助的指標としても有効。
実施方法:GHQの使い方と手順
GHQの実施は非常に簡便です。特別な訓練は不要で、短時間で実施できます。
実施の流れ
- 目的の明確化
例:退院時メンタル確認、職員ストレス調査、学生支援の一環など。 - バージョンの選択
時間や目的に応じてGHQ-12/28/30/60を選択。 - 説明と同意
対象者に目的と回答方法を説明し、同意を得ます。 - 質問紙の配布・記入
各項目に「最近の自分の状態」に最も近い選択肢を○で囲む形式です。 - 回収・採点
完了後、指定の採点法に従ってスコアを算出します。
注意点
- プライバシーを確保した環境で実施する。
- 結果は「診断」ではなく「スクリーニング」として扱う。
- 高スコアの場合は、精神科医・臨床心理士などへの二次評価を推奨。
GHQは、リハビリ場面でも「心理的負担の見える化」を支援するツールとして有効です。
採点と解釈:スコアの意味を理解する
GHQの採点方法は主に2種類あります。
| 採点法 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 二値法(0-0-1-1) | 上位2つの選択肢を「0」、下位2つを「1」として加算。 | スクリーニング向け(陽性/陰性を判別) |
| リッカート法(0-1-2-3) | 4段階をそのまま得点化。 | 精神健康の程度を連続的に把握できる。 |
総スコアが高いほど、心理的ストレスや不調の可能性が高いと判断されます。
ただし、GHQは状態像のスナップショットを捉えるものであり、診断的解釈には臨床的判断を併用する必要があります。
結果の活用例
- 継時的な経過観察(入院初期→退院前の変化)
- 多職種カンファレンスでの心理社会的情報共有
- 家族への支援計画立案(「最近元気がない」「眠れない」などの兆候の可視化)
カットオフ値:スクリーニングの基準
GHQのカットオフ値はバージョンや対象によって異なります。
一律ではなく、研究・臨床目的に応じて設定されます。
| バージョン | 推奨カットオフ(参考) | 備考 |
|---|---|---|
| GHQ-60 | 14~16点前後 | 研究・精神科臨床向け |
| GHQ-30 | 5~7点程度 | 一般医療・調査研究向け |
| GHQ-28 | 4点以上 | 職域・教育機関での使用例あり |
| GHQ-12 | 2~3点以上 | 大規模スクリーニングに適用 |
※カットオフは母集団・採点法・文化差によって変動します。
特にGHQ-12はカットオフ2/3を用いる研究が多いですが、実施目的を明示したうえで基準設定することが重要です。
標準化・バージョン情報:日本版の特徴と信頼性
日本版GHQは、**中川泰彬・大坊郁夫(日本文化科学社)**により翻訳・標準化されました。
各バージョンの概要を以下に示します。
| バージョン | 項目数 | 特徴 | 日本版発行年 |
|---|---|---|---|
| GHQ-60 | 60項目 | 神経症症状の包括的評価 | 1985年 |
| GHQ-30 | 30項目 | 睡眠障害・気分変調・希死念慮なども網羅 | 1996年 |
| GHQ-28 | 28項目 | 4下位尺度(身体症状、不安・不眠、社会的機能障害、抑うつ) | 1996年 |
| GHQ-12 | 12項目 | 時間がない場面での迅速スクリーニング | 2013年 |
信頼性・妥当性は国内外で多数検証されており、Cronbach’s αは0.85以上の報告が多く、高い一貫性を持ちます。
また、翻訳版はWHOを含む多文化研究で広く使用され、国際比較も可能です。
臨床応用と活用事例:リハビリ現場での使い方
リハビリテーションの現場では、GHQを以下のように活用できます。
活用例
- 脳卒中患者の退院前メンタル評価
→ うつ症状が強い場合、家族教育や社会復帰計画に反映。 - 整形疾患の長期入院患者の心理的適応把握
→ 治療意欲の低下サインを早期に検出。 - 高齢者デイケアでの生活満足度チェック
→ 生活リズム・社会参加支援の一助。 - 職員のメンタルヘルス支援
→ 職場ストレスや燃え尽きの早期発見。
また、介入後の変化(GHQスコアの改善)を追跡することで、心理社会的アプローチの効果検証にも活用できます。
他検査との関連:心理評価バッテリーとの組み合わせ
GHQは単独使用よりも、他の心理検査や生活機能評価と併用することで臨床的解釈が深まります。
| 組み合わせ検査 | 評価対象 | 組み合わせの意義 |
|---|---|---|
| HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale) | 不安・抑うつ | 医療場面での相補的スクリーニング |
| BDI-II(Beck Depression Inventory) | 抑うつの重症度 | GHQ陽性時の詳細評価 |
| WHO-QOL26 | 生活の質 | メンタルと生活満足度の統合評価 |
| FIM/BI | ADL・自立度 | 身体機能と心理機能の相互関係の可視化 |
このように、GHQは心理・行動・身体・社会参加の橋渡し的ツールとして機能します。
デジタル・ICT対応:オンライン評価と今後の展開
近年ではGHQのデジタル化が進んでおり、オンラインフォーム・スマホアプリ・ウェブ調査としての実施も可能になっています。
デジタル対応の利点
- 自動集計によるスコアリングの迅速化
- 経時変化のグラフ化やダッシュボード管理
- 職員・患者へのフィードバック共有が容易
- 匿名性を確保した集団スクリーニングが可能
研究・教育分野では、電子化GHQが学内・企業・自治体レベルで導入されており、リハ職による心理的支援計画の一助として注目されています。
まとめ
GHQは、短時間で心理社会的ストレスを可視化できる優れたスクリーニングツールです。
リハビリ領域では、患者の心理的回復段階を把握する補助指標として、今後さらに活用が期待されます。