HDS-Rの採点方法と点数の見方|配点基準・カットオフ値・失点パターンの解釈を解説

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、認知症のスクリーニングに広く使用される評価ツールで、全30点満点で構成されています。
本記事では、HDS-Rの各設問の配点基準やカットオフ値、点数の意味、誤答や不完全応答の扱い、さらに点数パターンから読み取れる認知機能の特徴までを詳しく解説します。
正確な採点と解釈は、認知症の早期発見と適切なケア計画の立案に不可欠です。
医療・介護・リハビリ現場でHDS-Rを活用する方に向けて、実践的かつわかりやすい情報を提供します。

HDS-Rの採点項目と配点完全ガイド

HDS-Rは、長谷川和夫医師が開発した9項目30点満点の認知機能スクリーニング検査です。
設問は年齢・日付見当識・場所見当識・即時記憶・計算・数字逆唱・遅延再生・5物品課題・言語流暢性で構成されます。
配点は年齢1点、日時見当識4点、場所見当識2点、即時記憶3点、計算2点、数字逆唱2点、遅延再生6点、5物品課題5点、言語流暢性5点です。
年齢は質問に対して2年以内の誤差を許容して1点を与えます。
日時見当識では年・月・日・曜日の4項目を個別採点し、時間見当識障害を精査します。
場所の見当識は自発回答で2点、病院か家かなどのヒント提示後の正答で1点と段階評価されます。
即時記憶は3語を提示し直後に復唱させ、1語1点で短期記憶を測定します。
計算(100から7を2回引く)と数字逆唱でワーキングメモリを多面的に評価する点がHDS-Rの特徴です。



HDS-Rスコア範囲と評価ポイント

HDS-Rの得点範囲は0点から30点で、数分の検査で被験者の全体的な認知水準を把握できます。
30点は全項目正常を示し、0点は広範な認知障害の可能性を示唆します。
点数推移を縦断的に追うことで、経過観察や治療効果判定に利用しやすいことが臨床上の利点です。
失点項目を確認することで、記憶・見当識・注意・流暢性など低下部位を絞り込めます。
特に即時記憶と遅延再生の差は記銘・保持・想起各段階の障害鑑別に役立ちます。
計算や数字逆唱の失点は前頭葉系ワーキングメモリの低下を示唆します。
野菜名流暢性課題は語想起速度を可視化し、前頭葉実行機能の早期低下検出が可能です。
このように、総点だけでなく項目別得点に着目することで、より実践的な介入計画が立案できます。



認知症スクリーニングにおける「HDS-R20点以下」の意義

HDS-Rでは20点以下を「認知症疑いあり」と判断することが国内外で広く採用されています。
この閾値は感度・特異度のバランスが最適化された結果で、一次スクリーニングに適しています。
ただし教育歴や文化的背景、抑うつ状態は得点に影響するため、20点超でも症状があれば再評価が必要です。
軽度認知障害(MCI)はHDS-R単独では拾いにくく、20〜26点帯に注意を払うと見逃しを減らせます。
MMSEやMoCA-Jなど他検査との併用はスクリーニング精度向上に有効です。
画像検査やADL評価と組み合わせることで、診断精度と生活支援計画の妥当性が高まります。
カットオフはあくまで「疑い」を示すマーカーであり、確定診断には神経心理学的・生物学的評価が必須です1
したがって、HDS-R得点と臨床症状を統合的に解釈する姿勢が求められます。



HDS-R点数の臨床的解釈と活用法

高得点の維持は見当識・記憶・実行機能が良好であることを示唆しますが、主観的記憶障害がある場合には追加検査を考慮します。
即時記憶の失点が多い場合は記銘障害、遅延再生での失点は保持・想起障害を示すことが多いです。
計算と数字逆唱の低下は注意配分や作業記憶の問題を反映し、前頭葉血流低下と相関する報告があります。
場所見当識や日時見当識の誤答は早期アルツハイマー病でしばしば観察され、進行度の目安にもなります。
野菜名が6個未満しか出ない場合は語想起の減速が疑われ、社会的会話でも表出障害が予測されます。
個別項目を生活機能評価と組み合わせると、IADL低下のリスク管理に役立ちます。
点数が良好でも経年で下降傾向がある場合は、予備力低下やSCDの可能性を念頭に置く必要があります。
このようにHDS-R得点は介入優先度の判定や家族への説明資料としても有効です。



誤答・無反応時の採点ルール

採点はガイドラインに従い機械的に行い、過度な誘導や追及は避けて被検者の負担を軽減します。
年齢誤差が3年以上ある場合は0点とし、生年月日を言えても年齢を答えられなければ不正解です。
日時・即時記憶・計算・逆唱での誤答はすべて0点とし、やり直しは認めません。
場所見当識と遅延再生のみ段階ヒントが許容され、ヒントで正答した場合は1点減点して記録します。
言語流暢性は6個以上から採点を開始し、重複語を後から差し引くことが推奨されています。
反応がない場合は10秒を目安に打ち切り、検査全体の進行リズムを維持します。
無反応時の強い再質問はストレス増大と誤誘導のリスクがあるため避けるべきです。
統一手順を守ることで多施設間でも高い信頼性を確保できます。



得点パターンから読み解く認知機能低下のサイン

即時記憶と遅延再生の両方が低い場合は海馬機能障害の可能性が示唆されます。
逆に即時記憶が保たれ遅延再生だけ低下していれば保持や想起過程の障害が疑われます。
計算・数字逆唱の失点は注意機能や遂行機能低下を示し、交通安全や金銭管理への介入指標になります。
場所見当識の失点が際立つ場合は空間記憶障害が顕著で、転居や外出支援を検討する目安となります。
言語流暢性のみ極端に低いケースでは前頭側頭型認知症やうつ状態の鑑別が必要です。
全体的な低得点は進行性認知症を示唆し、多職種連携の早期介入が望まれます。
項目別パターンをグラフ化すると家族説明や経過観察に視覚的な説得力が生まれます。
HDS-Rは「どの領域が弱いか」を読み解くことで個別リハビリ計画作成にも応用できます。



HDS-R活用のまとめと実践アドバイス

HDS-Rは短時間・高信頼性で認知機能を多面的にスクリーニングできる優れたツールです。
20点以下は認知症疑いの目安ですが、教育歴や心理状態を加味した柔軟な解釈が必要です。
得点だけでなく失点項目のパターンを把握することで、記憶・注意・見当識などの低下領域が明確になります。
採点基準を厳守し、ヒント提示ルールや打ち切り時間を統一すると評価者間誤差を抑えられます。
結果はMMSE・MoCA-J・画像検査・ADL評価と組み合わせ、総合的に生活支援へつなげましょう。
縦断的な得点推移を記録すれば、疾患進行や介入効果を早期に把握できます。
家族へはグラフや具体例を用いて説明し、理解と協力を得るとケア負担軽減に役立ちます。
HDS-Rを“点数”ではなく“生活機能の出発点”として活用することが、質の高い認知症ケアへの第一歩です。

数”ではなく“生活機能の出発点”として活用することが、質の高い認知症ケアへの第一歩です。

HDS-Rの採点はシンプルながら各項目に明確な基準があり、点数だけでなく失点パターンから認知機能の特徴を読み取ることができます。
ただし診断を確定するには、HDS-Rだけでなく他の検査や臨床情報との組み合わせが不可欠です。

脚注

  1. HDS-Rは診断ではなくスクリーニングに用いられ、カットオフは参考値です。 ↩︎

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