インピンジメント症候群の評価・検査方法|Neer・Hawkins-Kennedyなど理学検査のポイントを解説

肩関節の痛みを訴える患者において、最も頻繁に遭遇するのが「インピンジメント症候群(肩峰下インピンジメント)」です。
評価・検査の精度を高めることは、腱板損傷や凍結肩との鑑別、そして適切なリハビリテーション計画の立案に欠かせません。
この記事では、Neerテスト・Hawkins-Kennedyテスト・Painful Arcテストなど代表的な理学検査の実施手順と解釈のポイントを中心に、臨床現場で使えるインピンジメント症候群の評価プロセスをわかりやすく解説します。
作業療法士・理学療法士の臨床推論に役立つ、最新のエビデンスに基づいた内容です。



インピンジメント症候群とは:肩の痛みと圧迫のメカニズム

インピンジメント症候群(Impingement Syndrome)は、肩関節の腱板や滑液包が肩峰(けんぽう)と上腕骨の間で圧迫されることにより、肩の痛みや可動域制限を生じる疾患です。
近年はより包括的に「サブアクロミアル疼痛症候群(Subacromial Pain Syndrome:SAPS)」として扱われることもあります。

肩の動作は、骨・筋肉・靭帯・滑液包が協調して働くことでスムーズに行われますが、このうちのいずれかに炎症や機能障害が起こると「挟まる(Impingement)」状態が生じ、痛みを引き起こします。

主な特徴は以下の通りです。

  • 肩を上げる・回す動作で痛みが強くなる
  • 上腕外側(特に三角筋付近)に放散痛を感じる
  • 夜間痛があり、寝返りで目が覚める
  • 加齢や姿勢不良、肩甲骨の動きの悪さが関与
  • オーバーヘッド動作(投球・荷上げ)で増悪

また、**腱板断裂や石灰沈着性腱炎、肩峰形態異常(骨棘など)**が背景にあることもあります。

インピンジメント症候群は、肩関節疾患の中でも特に発症頻度が高く、中高年やオーバーヘッド動作を伴うアスリートに多くみられます。
一方で、若年者でも筋力バランスの崩れや姿勢異常により発症することがあるため、職業的・スポーツ的要因の評価が重要です。



インピンジメント症候群の主な症状

インピンジメント症候群では、炎症や摩擦によって肩の動作時に痛みが生じます。代表的な症状は以下の通りです。

症状内容
肩の痛み腱板や滑液包の炎症による鋭い痛み。特に外転60〜120°付近で痛み弧(painful arc)がみられる。
夜間痛寝返りや側臥位で肩に圧がかかると痛みが増強。睡眠障害の原因となる。
可動域制限痛みによる防御的な筋緊張で、外転・屈曲の制限が出やすい。
筋力低下腱板機能不全による挙上・外旋筋力の低下。
動作時の引っかかり感肩峰下での摩擦音(クリック)やゴリゴリ感を自覚することがある。

また、慢性化すると肩の筋力低下や拘縮が進み、**凍結肩(フローズンショルダー)**との鑑別が必要になります。

臨床では以下のような訴えが多く聞かれます。

  • 「洗濯物を干すときに肩が痛い」
  • 「上の棚に手を伸ばせない」
  • 「夜中にズキズキして目が覚める」

このような症状が続く場合は、早期に原因を特定し、保存療法中心の介入を開始することが重要です。



インピンジメント症候群の原因とリスク要因

原因は「構造的要因」と「機能的要因」に分けられます。

● 構造的要因

  • 肩峰の形態(フラット型、カーブ型、フック型)
  • 肩峰下の骨棘形成
  • 腱板の加齢変性や石灰沈着
  • 骨折や外傷後の変形

● 機能的要因

  • 肩甲骨の下制・前傾・内転の制限(スキャプラ・ディスキネジー)
  • インナーマッスル(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)の筋力低下
  • 猫背姿勢や胸椎後弯増強
  • オーバーユース(野球、水泳、テニス、建設・塗装業など)
  • 体幹筋群の弱化による運動連鎖の乱れ

特に近年の研究では、「肩甲骨運動の異常」や「体幹・下肢との協調性の欠如」が注目されています。
姿勢や日常動作のクセが肩関節の動的安定性を損ない、腱板へのストレスを増加させるためです。

また、加齢による腱板変性もリスク要因の一つであり、40歳以降では腱板の微小断裂が増加します。



インピンジメント症候群の診断と画像検査

診断は、問診・理学検査・画像評価の三本柱で行われます。

● 問診のポイント

  • 発症時期と動作(繰り返し動作、外傷の有無)
  • 痛みの性質(夜間痛・動作痛)
  • 日常生活や職業での肩使用頻度

● 身体検査の観察項目

  • 肩甲帯の位置(下制・前方移動)
  • 肩峰下スペースの減少
  • 肩の挙上角度と痛み弧の確認

● 代表的な理学検査(誘発テスト)

テスト名検査方法意義
Neerテスト肩を内旋させ前方挙上。疼痛誘発で陽性。肩峰下インピンジメントの確認
Hawkins-Kennedyテスト肩と肘を90°屈曲し内旋。疼痛誘発で陽性。サブアクロミアル圧迫を評価
Painful Arcテスト外転60〜120°で痛み出現を確認。クラスター評価の一要素
外旋抵抗テスト肘90°屈曲位で外旋抵抗により痛みを確認。棘下筋・小円筋の機能評価

単一テストでは信頼性が限定的であり、3つ以上陽性で診断精度が向上します(Parkら, 2005)。

● 画像検査

  • X線:骨棘・石灰沈着・変形を評価
  • 超音波:腱板損傷や滑液包炎のスクリーニング
  • MRI:腱板断裂・筋萎縮・滑液包肥厚などの詳細確認

ただし、画像所見のみで診断を確定するのではなく、臨床症状と組み合わせて総合的に判断します。



リハビリテーションでの評価・検査方法

リハビリテーションの目的は、疼痛軽減・可動域改善・機能再建です。
そのために必要なのは、構造的な損傷だけでなく「機能的な原因」を見極めることです。

● 評価の流れ

  1. 姿勢と肩甲骨運動の観察
     → 胸椎後弯、肩甲骨下制・前傾・内転の有無を確認。
  2. アクティブROMと痛み弧
     → 60〜120°で疼痛が強まる場合はインピンジメントを疑う。
  3. 筋力評価(MMT)
     → 棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・前鋸筋の筋出力バランスを確認。
  4. スキャプラ介助テスト(SAT)/スキャプラ後退テスト(SRT)
     → 介助により痛みや挙上が改善すれば機能的要因が関与。
  5. 疼痛評価スケール(VAS)と機能指標(SPADI・QuickDASH)
     → ベースラインを定量化し経過を追跡。

● 理学検査の活用ポイント

  • Neer・Hawkins・外旋抵抗・Painful Arcのクラスター評価
  • Lift-offテスト(肩甲下筋断裂の有無を確認)
  • Posterior Impingement Sign(投球肩など後方痛に)

● 評価表(例)

項目方法判定
Painful Arc外転中の疼痛有無60〜120°で痛み陽性
外旋抵抗肘屈曲90°・外旋抵抗痛み or 筋力低下
SAT肩甲骨を介助痛み減少=機能性要因
SPADI13項目自己評価点数高=障害重度

リハビリでは、姿勢修正・肩甲骨安定化・インナーマッスル強化を段階的に進めます。
体幹トレーニングも組み合わせることで、運動連鎖を整え、再発を防止します。



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