三宅式記銘力検査(東大脳研式)とは?やり方・平均点・カットオフ値をリハビリ専門職が解説

記銘力や注意機能の評価に使われる代表的な検査の一つが「三宅式記銘力検査(東大脳研式)」です。
本記事では、検査の目的や方法、教示文、採点・解釈のポイント、平均点・カットオフ値などを、リハビリセラピスト向けにわかりやすく解説します。
短時間で実施できる聴覚性言語の記憶検査として、認知症・高次脳機能障害・精神疾患の評価にも有用です。



基本情報:三宅式記銘力検査の概要

三宅式記銘力検査(みやけしききめいりょくけんさ)は、聴覚性言語の記憶(対連合学習)を評価する検査です。1923年に精神医学者の三宅鉱一内田勇三郎によって開発され、「東大脳研式記銘力検査」とも呼ばれています。
有関係対語(意味的関連のある語)と無関係対語(意味的関連のない語)の各10対を使用し、3回の試行で想起能力を測定します。

検査の目的

  • 聴覚性短期記憶、対連合記憶、注意機能の評価
  • 記憶の形成・保持・再生過程の把握
  • 認知症、高次脳機能障害、精神疾患などのスクリーニング

所要時間

10〜15分と短時間で実施でき、ベッドサイドでも簡便に行える点が特徴です。

利点

  • 言語理解力を活用した検査で、脳血管障害や認知症患者にも実施しやすい
  • 施行が容易で、他検査と併用しやすい
  • リハビリや認知機能訓練前後の変化測定にも有用


対象と適応:成人を中心に幅広く活用

三宅式記銘力検査は成人を主対象としていますが、軽度認知障害や高次脳機能障害を含むさまざまな症例に対応できます。

適応例

  • 脳卒中後の記銘力低下が疑われる場合
  • 認知症のスクリーニングとしての活用
  • 注意障害や遂行機能障害を伴う高次脳機能障害者の評価
  • 精神疾患(統合失調症、うつ病など)における記憶・注意機能の把握

実施上の留意点

  • 聴覚性言語を前提とするため、聴力障害や失語症の重度例では実施困難な場合があります。
  • 被験者にとっては負担感がある場合もあるため、緊張やストレス軽減への配慮が必要です。
  • 集中困難な患者には、短い休憩や練習を挟むなどの柔軟な対応を行うとよいでしょう。


実施方法:読み上げ・回答・繰り返しの流れ

三宅式記銘力検査は、有関係対語10対・無関係対語10対を3回繰り返して学習・想起させるシンプルな構成です。

手順

  1. 検査前に「これから記憶の検査を行います」と説明し、同意を得る。
  2. 「○○と△△」のように2語をセットで読み上げる。
     ※例題(検査リスト外)を2〜3組用いて練習する。
  3. 検査本番では、有関係対語10組を約2秒間隔で明瞭に読み上げる。
  4. 全10組終了後、前半の単語のみ提示して、後半の語を回答してもらう。
     - 回答時間は10秒以内を目安とし、反応がない場合は「忘却」とみなす。
  5. 同じ手順を3回繰り返す(1回目・2回目で全問正解なら打ち切りも可)。
  6. 有関係対語の後、10分程度の休憩を挟み無関係対語試験を同様に行う。

教示文例

「これから二つの言葉を続けて言います。後で前の言葉を言いますので、後の言葉を思い出して答えてください。」



採点と解釈:正答数と反応を総合的に評価

採点は、正答数・誤答数・回答時間を基に行います。

採点のポイント

  • 各試行ごとの正答数(0〜10点)を記録
  • 誤答や反応遅延をメモし、再生傾向を観察
  • 「有関係対語」「無関係対語」それぞれ別に得点化

評価の視点

  • 第1回目の成績:即時記憶
  • 第2〜3回目の改善度:学習能力
  • 無関係対語の成績:連合形成力と注意維持

結果の見方

  • 有関係対語は通常8〜10点前後が得られるが、無関係対語は低下しやすい。
  • 有関係・無関係の成績差が大きい場合は、連合学習や注意機能低下の可能性を示唆します。
  • 誤反応や反応時間の延長も、前頭葉機能障害のサインとして注目されます。


カットオフ値:年齢別平均との比較で判断

三宅式記銘力検査には全国統一のカットオフ値は存在しません
そのため、年齢群の平均値や臨床経験に基づいて総合的に判断します。

参考平均値(例示)

年代有関係対語(1回目)無関係対語(1回目)
成人前期(30代)約9点約4点
中年期(40代〜50代)約8点約3点
老年期(60代以降)約8点約1点

※あくまで代表的傾向であり、使用リスト・教育歴・疾患特性により変動します。

判定のポイント

  • 年齢群の平均値より著しく低い場合、記銘力低下を疑う
  • 有関係対語と無関係対語の得点差が極端な場合は、意味記憶と注意の偏りを示唆。
  • 経過観察やリハ介入前後の比較では、**改善率(学習効果)**に注目します。


標準化とバージョン情報:東大脳研式・S-PAとの関係

三宅式記銘力検査は、1977年に東大脳研究所で改変された語リストが現在もっとも広く使われています。
リストの内容や読み順に微差があるため、施設間で統一版を確認することが重要です。

主なバージョン

種類内容特徴
原法(1923)三宅鉱一・内田勇三郎初期リストで語彙が古い
東大脳研式(1977)改変版現行の標準的形式
S-PA(標準言語性対連合学習検査)後継的検査並行版あり、年齢別標準値が整備

標準化状況

  • S-PAは18〜79歳の年齢別平均値と信頼性データが整備されており、研究・臨床両方で利用されています。
  • 三宅式を用いる場合も、S-PAの基準を参考値として補完的に使用することが推奨されます。


臨床応用と活用事例:幅広い領域で有用

三宅式記銘力検査は、リハビリテーションの初期評価・経過観察・治療効果判定など、さまざまな場面で活用されています。

主な活用領域

  • 高次脳機能障害リハビリ:注意・記憶再建プログラムの前後比較
  • 認知症リハビリ:早期発見および認知予防プランの策定
  • 精神疾患領域:統合失調症やうつ病患者の認知プロフィール把握
  • 老年期リハビリ:生活記憶や学習能力の維持評価

保険点数

  • 区分:D285-2(操作が複雑なもの)
  • 点数:280点(3割負担で約840円)

注意点

  • 被験者に過度なストレスを与えないよう、言葉がけや環境配慮を行う。
  • 失敗を否定せず、安心して回答できる雰囲気をつくることが重要です。


他検査との関連:RBMTやS-PAとの比較

三宅式記銘力検査は、言語性短期記憶に特化した対連合学習課題です。

関連する検査

検査名主な評価領域特徴
RBMT(リバーミード行動記憶検査)日常記憶現実的課題による実生活適応の評価
S-PA言語性対連合記憶三宅式の標準化版。年齢別基準あり
WMS-R作動記憶・論理記憶記憶全体のプロファイルを詳細に把握
HDS-R/MMSE全般的認知機能認知症スクリーニング目的で併用可能

三宅式で「記銘の型」を把握し、他検査と組み合わせることで、より立体的な認知機能評価が可能になります。



デジタル・ICT対応:電子化と研究応用の動き

近年、三宅式記銘力検査もデジタル化やアプリ化が進みつつあります。

ICT活用の例

  • 音声提示アプリによる自動読み上げ・反応時間の自動記録
  • Web版記憶課題としての研究ツール化(大学・病院で導入事例あり)
  • 電子カルテ連携による結果自動保存

メリット

  • 実施者間の誤差を軽減できる
  • 反応時間や誤答傾向の客観的データ取得が可能
  • 在宅・遠隔リハビリへの応用が期待される

注意点

  • 著作権・検査倫理の観点から、非公式PDFや自作版の使用は避けること。
  • 正規販売元から検査用紙を購入し、倫理的に運用することが重要です。


まとめ

三宅式記銘力検査は、聴覚性言語記憶と注意機能を短時間で評価できる優れたツールです。
認知症から高次脳機能障害、精神疾患まで幅広く応用でき、リハビリテーションの方向性を明確にする上で非常に有用です。
臨床では、RBMTやS-PAと組み合わせながら、より多面的に記憶機能を評価していくことが望まれます。


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