脳卒中片麻痺の運動機能を、短時間で客観的に数値化するならMotricity Index(MI)が有効です。上肢・下肢の6項目を0〜33点で評価し、MMTでは拾いにくい変化も可視化できます。
本記事では、正確な手順と配点、SAFEやTCTを用いた予後予測との連携、臨床応用、デジタル活用までを体系的に解説します。
作業療法士・理学療法士の現場でそのまま使える実践的な内容です。
基本情報:Motricity Indexとは?
Motricity Index(モトリシティ・インデックス:MI)は、脳卒中後の上肢・下肢の運動麻痺の程度を定量的に評価するスケールです。
1980年にDemeurisseらによって提唱され、手軽かつ信頼性の高い運動評価法として臨床や研究で広く用いられています。
MIは以下の6項目(上肢3項目、下肢3項目)で構成されます。
各動作は0~33点の序数尺度で評価され、合計点を指数化して運動障害の重症度を表します。
| 評価領域 | 動作項目 | 評価点範囲 |
|---|---|---|
| 上肢 | ピンチグリップ・肘関節屈曲・肩関節外転 | 0〜33点 |
| 下肢 | 足関節背屈・膝関節伸展・股関節屈曲 | 0〜33点 |
合計点は最大100点(上肢・下肢それぞれの総合スコア)となり、高得点ほど運動機能が良好と判断されます。
MIは、MMT(徒手筋力テスト)では評価困難な重度麻痺ステージにも対応できる点が大きな利点です。
対象と適応:どんな患者に有用か?
Motricity Index(MI)は主に以下のような場面で使用されます。
対象
- 脳卒中後の片麻痺患者(急性期〜回復期〜維持期)
- 外傷性脳損傷などの中枢性麻痺
- 神経筋疾患による上下肢筋力低下患者
適応場面
- MMTでの定量化が難しい場合
→ MIは「動きの有無」から「抵抗に抗する強さ」まで6段階で評価できるため、回復過程を客観的に追跡可能。 - リハビリ介入の効果測定
→ 前後比較により機能改善度を可視化できる。 - 研究や臨床試験での運動評価指標
→ 妥当性・再現性が高く、データ収集に適する。
MIは、軽度~重度麻痺のいずれにも適用可能な汎用性の高い指標です。
実施方法:6つの動作で測るシンプルな評価
上肢・下肢それぞれ3項目ずつを評価します。
すべての動作は**0点(動きなし)~33点(強い抵抗に抗する)**の6段階で採点されます。
上肢の評価
| 動作 | 開始肢位 | 主な評価基準 |
|---|---|---|
| ピンチグリップ | 親指と人差し指で2.5cm立方体をつかむ | つかもうとする動き~強い抵抗に抗して保持までを6段階で採点 |
| 肘関節屈曲 | 肘90°屈曲位 | 筋収縮の触診可~強い抵抗に抗して可動までを評価 |
| 肩関節外転 | 胸の前から外転 | 筋収縮の有無、重力・抵抗に抗する能力を判定 |
下肢の評価
| 動作 | 開始肢位 | 主な評価基準 |
|---|---|---|
| 足関節背屈 | 底屈位から背屈運動 | 筋収縮~抵抗に抗する動きまでを6段階評価 |
| 膝関節伸展 | 膝90°屈曲位から伸展 | 重力・抵抗に対する動作可否を評価 |
| 股関節屈曲 | 股90°屈曲位 | 重力に抗して可動できるかを判定(※屈曲が正) |
実施に必要な道具は2.5cm立方体と簡易的な支持具のみで、ベッドサイドでも評価可能です。
採点と解釈:スコアでみる運動機能の重症度
Motricity Indexは、各項目の得点を合計し、指数(0〜100点)として表します。
採点方法の概要
- 各項目:0, 9, 14, 19, 25, 33点(ピンチのみ11・19・22・26・33点)
- 各動作の得点を合計し、上肢または下肢の運動指数を算出
解釈の目安
| MI総合点 | 解釈 |
|---|---|
| 0〜33点 | 重度麻痺(動きほぼなし) |
| 34〜66点 | 中等度麻痺(重力に抗する動きあり) |
| 67〜100点 | 軽度麻痺(抵抗に抗して動かせる) |
特徴
- MMTよりも段階的・客観的な変化が把握しやすい
- 片側麻痺の回復過程を定量化し、治療効果の可視化に優れる
- FMAやBrunnstrom Stageと組み合わせることで回復段階を多面的に評価可能
カットオフ値:予後予測との関連
上肢の予後予測(SAFEモデル)
上肢の回復予測には、**MIよりもMRCスケールによるSAFE(Shoulder Abduction and Finger Extension)**が有効とされています。
- 発症72時間以内に「肩外転」と「手指伸展」がいずれもMRC 1以上の場合
→ 約6か月後に良好な上肢機能回復が見込まれる
MIは同様の動作を含むため、SAFE評価の補完として活用可能です。
歩行の予後予測(TWISTモデル)
歩行自立の予測には、MIよりもTCT(Trunk Control Test)と下肢筋力(MRC)を組み合わせたTWISTモデルが一般的です。
- 発症1週時にTCT>40点 → 6週以内に歩行自立が高確率
- TCT≤40点でも股関節伸展MRC≥3で12週以内に自立歩行の可能性あり
MIはこれらの筋力指標と相関が高く、予後推定の補助的評価指標として位置づけられます。
標準化・バージョン情報:信頼性と妥当性
信頼性
- 検者間・再検査信頼性が非常に高い(ICC > 0.90)
- 上肢・下肢とも**ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)**による筋力測定値と高い相関(r = 0.78〜0.91)
妥当性
- **他の運動機能スコア(FMA, MRC, BI)**との間にも有意な相関が報告
- 重度麻痺患者でも「動きの有無」からスコア化できるため天井効果・床効果が少ない
標準化
- 原著(Demeurisse et al., 1980, J Neurol Neurosurg Psychiatry)に基づく統一手順あり
- 国際的にはRehabMeasures Databaseや**StrokeEDGE(AHA)**で採用されている標準化済みツール
臨床応用と活用事例:MIの使い方と実例
臨床での活用例
- 脳卒中患者の麻痺回復過程の追跡
- リハビリ介入前後の客観的アウトカム指標
- 他職種カンファレンスでの共有指標(スコア提示)
- 訓練効果の研究データ化
研究での活用
- Fugl-Meyer AssessmentやBarthel Indexとの比較研究
- 上肢・下肢別リハビリプログラムの効果判定
- 電気刺激・装具療法などの運動出力改善指標
MIは簡便性・信頼性・国際的普遍性の三拍子が揃った評価法であり、
臨床実践と研究の橋渡しツールとして非常に有用です。
他検査との関連:FMA・TCT・MMTとの比較
| 検査名 | 主な特徴 | MIとの関係 |
|---|---|---|
| FMA(Fugl-Meyer) | 詳細な運動・感覚・協調の多次元評価 | MIと高い相関。MIは簡易版として利用されることも多い |
| MMT | 筋力の定性的評価(0〜5) | MIはMMTを補完し、より定量的に変化を捉える |
| TCT(Trunk Control Test) | 体幹機能評価 | MI下肢スコアと相関。歩行予測因子として併用される |
MIは単独ではなく、FMA・TCT・SAFEなどと組み合わせることで臨床的価値が最大化します。
デジタル・ICT対応:評価の効率化とデータ活用
- タブレットアプリや電子カルテ統合ツールによるMI自動スコア化が進行中。
- **リハ支援システム(例:RehabMeasures DB, PT-OT評価支援ツール)**ではMI入力テンプレートを搭載。
- AI解析・センサー連携による運動データ可視化(HHD・モーションキャプチャなど)も増加。
- 臨床現場ではMMT・FMA・TCTとの自動相関グラフ生成など、リハ評価のデジタル統合が加速しています。
将来的には、MIデータを基盤とした個別化リハ予測AIモデルの活用も期待されています。
まとめ
Motricity Index(MI)は、脳卒中片麻痺の運動機能を簡便・客観・定量的に評価できる信頼性の高いツールです。
FMAやTCTなどの他検査と併用することで、より正確な回復過程の把握と予後予測が可能になります。
推奨文献
- Demeurisse G et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1980
- Bohannon RW et al. Arch Phys Med Rehabil. 1999
- Nijland RH et al. Brain. 2010
- Kwakkel G et al. Stroke. 2010
- RehabMeasures Database(University of Illinois, Chicago)