OSA-Ⅱ(作業に関する自己評価)とは?作業療法士が知るべきMOHOに基づく自己評価ツールの使い方と活用法

OSA-Ⅱ(作業に関する自己評価・改訂版)は、人間作業モデル(MOHO)に基づいて開発されたクライアント中心の評価ツールです。
作業療法士がクライアントの“できる感覚”や“価値観”を理解し、リハビリテーションの目標を共同で設定するために欠かせない方法のひとつです。
本記事では、OSA-Ⅱの構成・実施方法・得点の解釈・臨床応用までを、リハビリセラピスト向けに詳しく解説します。
MOHO理論を臨床にどう活かすかを学びたい方におすすめの内容です。



基本情報:OSA-Ⅱの概要と位置づけ

項目内容
評価名作業に関する自己評価・改訂版(Occupational Self Assessment, OSA-Ⅱ)
理論的基盤人間作業モデル(Model of Human Occupation: MOHO)
開発者Gary Kielhofner(米国イリノイ大学シカゴ校)
評価形式自己記入式(クライアント中心評価)
項目数第1部:21項目(遂行・習慣化・意志の3領域)/第2部:環境8項目(日本語改訂版)
評定方法4件法(遂行度:できる程度/重要度:どの程度大事か)
評価目的作業遂行の主観的評価、重要度認識、目標設定支援
対応理論MOHOの構成要素(volition・habituation・performance capacity・environment)

OSAはMOHO評価ツール群の中でも特に「クライアントの主観的視点」を重視する評価として位置づけられています。
作業遂行度(Competence)と重要度(Importance)の2つの軸で構成され、個人の価値観やモチベーションを反映しながら、リハビリの方向性を共同で設定できます。



対象と適応:OSA-Ⅱが活用されるクライアント像

OSA-Ⅱは、自己表現や自己認識がある程度可能な成人・高齢者を対象とします。
脳血管障害・精神障害・身体障害・高次脳機能障害など、多様な対象に応用可能ですが、以下の特徴があります。

<適応条件>

  • 言語理解や自己評価が可能な方
  • 自分の行動・能力・価値について考えられる方
  • リハビリテーションの初期または中期で目標設定を共有したい方

<使用上の留意点>

  • 失語症や重度認知症の場合は、通訳的支援や家族インタビューを補助的に使用
  • 精神科領域では、セルフエフィカシー評価の一部として活用
  • 高齢者領域では、「生活リズム」「役割」「習慣」への気づきを促す支援ツールとして有用

OSA-Ⅱは、単なる機能評価ではなく、クライアントが自らの生活を再構築する過程を支援する評価として機能します。



実施方法:自己評価形式での進め方

OSA-Ⅱの実施は、主に面接+自己記入式のハイブリッド形式で行われます。
基本的な流れは以下の通りです。

① 評価票の説明

  • OSA-Ⅱが「あなたの生活や活動について自己評価するもの」であることを説明します。
  • 評価者(作業療法士)は、言葉の意味や評価方法を丁寧に解説し、誤解を防ぎます。

② 第1部:自分について(21項目)

  • 例:「自分の課題に集中できる」「金銭管理をする」「他人とうまくやっている」など
  • 各項目を「どの程度できているか(4件法)」で評価します。

③ 第2部:環境について(8項目・日本語版)

  • 「生活の場所」「必要な物」「支えてくれる人」「楽しめる場所」などを自己評価します。

④ 重要度(Importance)の評価

  • 各項目について「どのくらい大事か」を4段階で評価します。

⑤ 優先項目の選定

  • 重要度が高く、遂行度が低い項目を優先課題として設定します(目標設定に直結)。
  • 日本語版では目安として「上位4項目」程度を選定します。


採点と解釈:CompetenceとImportanceの理解

OSA-Ⅱでは、以下の2つのスコアが中核です。

スコア名内容評定段階
Competence(遂行度)「どのくらいできているか」を自己評価1=問題あり/2=やや問題/3=よくできている/4=非常によくできている
Importance(重要度)「どのくらい大事か」を自己評価1=大事でない/2=やや大事でない/3=大事である/4=非常に大事である

これらを散布図や優先順位表として整理し、「重要なのに十分できていない項目=介入ターゲット」として抽出します。

また、OSAは能力そのものを客観評価するツールではなく、自己認識の変化を可視化する評価であることに留意が必要です。
再評価時にCompetenceの上昇やImportanceの再構成がみられれば、作業的自己理解や適応が進んだと解釈できます。



カットオフ値:OSA-Ⅱには設定なし

OSA-Ⅱには、疾患別・年齢別のカットオフ値は存在しません。
あくまで自己認識・目標設定・作業遂行の主観的変化を可視化するツールであるため、得点を「正常/異常」で区切る使い方は行いません。

評価の焦点は、**スコアそのものではなく「個人内変化」や「価値の再構築」**にあります。
定量的分析を行う場合は、Rasch解析による尺度化(英語版OSA 2.2マニュアルに準拠)を参照します。



標準化・バージョン情報:OSA-Ⅱと原版の違い

項目OSA(原版)OSA-Ⅱ(日本語改訂版)
開発国アメリカ日本
Version 2.2改訂版(OSA-Ⅱ)
項目数21項目21項目+環境8項目(日本版独自)
評価軸Competence/Importance同上(日本語訳対応)
理論基盤MOHO(Volition, Habituation, Performance Capacity)同一理論を踏襲
監訳・発行MOHO Clearinghouse (UIC)日本作業療法士協会監修/教育現場等で活用

OSA-Ⅱは、原版OSAを日本の文化的文脈・生活環境に合わせて改訂したバージョンです。
特に環境要因(生活場所、支援者など)を追加した構成が特徴的です。



臨床応用と活用事例:目標共有と動機づけ支援に

OSA-Ⅱは、以下のような臨床シーンで活用されています。

① 脳卒中リハビリ

  • 「自分でできることが増えた」という主観変化を数値化。
  • 身体機能だけでなく、自己効力感の向上を可視化できます。

② 精神科リハビリ

  • 意志・価値観に基づく活動選択を促進。
  • 社会参加やロールリカバリー支援に有効。

③ 高齢者リハビリ・生活期OT

  • 日課や役割に関する自己評価を通じて、生活再設計を支援。

④ チームアプローチ

  • 他職種と共有し、クライアント中心のゴールプランニングを可能にします。

OSA-Ⅱを用いることで、「作業療法士の視点」ではなく「本人の語り」を可視化する臨床実践が実現します。



他検査との関連:COPM・AMPSとの比較

OSA-Ⅱは、他のMOHO関連評価やリハビリ評価との併用でより効果的に使えます。

評価名主な特徴OSAとの関係
COPM(カナダ作業遂行測定)満足度と遂行度を自己評価構造が類似。目標設定ツールとして併用可能
AMPS(運動・処理技能評価)客観的観察評価OSAの主観評価結果を裏づける客観データとして補完
WEIS/REIS(作業環境評価)環境要因の観察・面接評価OSA-Ⅱの環境8項と理論的に連動

このように、OSA-Ⅱは主観的評価の中核として位置づけられ、客観評価ツールとの組み合わせで包括的な作業理解を得ることができます。



デジタル・ICT対応:電子化とオンライン評価の展開

近年では、OSA-Ⅱの電子版やタブレット評価フォームも研究・実装が進んでいます。

デジタル化の利点

  • クライアント自身がスマートデバイス上で回答可能
  • グラフ自動生成による視覚的フィードバック
  • 再評価データの経時比較が容易
  • チーム共有や遠隔リハビリにも応用可能

注意点

  • セキュリティ管理・データ匿名化が必要
  • 面接過程を省略しない設計が望ましい

今後は、OSA-Ⅱのデジタル版と電子カルテ・AI分析を連携させ、作業遂行の「変化プロセス」をリアルタイムに可視化するICT評価システムへの展開が期待されています。



関連文献

  • Kielhofner G. Model of Human Occupation: Theory and Application. 5th ed. Lippincott Williams & Wilkins.
  • Park S., Fisher AG. Psychometric properties of the OSA. OTJR.
  • キールホフナーの人間作業モデル―理論と応用―(日本語版)
  • 日本作業療法士協会:OSA-Ⅱ作業に関する自己評価・改訂版 実施ガイドライン

関連文献

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