【最新版】関節可動域測定(ROM-T)とは?測定方法・角度一覧・臨床応用をリハビリ専門職が解説

関節可動域測定(Range of Motion Test:ROM-T)は、リハビリテーションの基礎であり、身体機能の回復度や治療効果を判断するための重要な評価です。
本記事では、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会による2022年改訂版の最新基準をもとに、関節ごとの参考可動域角度、測定手順、記録方法を詳しく解説します。さらに、臨床での活用事例やデジタル計測への応用も紹介し、現場ですぐに役立つROM評価のポイントを整理しました。



基本情報:関節可動域測定(ROM-T)の概要

関節可動域(Range of Motion:ROM)とは、関節が生理的に動かすことができる範囲のことを指します。
リハビリテーション分野では、ROMを評価することで関節機能の制限の有無や程度を定量的に把握し、治療方針や回復の経過を判断する重要な指標となります。

関節可動域は主に2つの側面から評価されます。

  • 他動的関節可動域(Passive ROM):検者が外力を加えて測定する範囲
  • 自動的関節可動域(Active ROM):被験者自身の筋力による可動範囲

一般的には、他動的関節可動域を基準として測定し、測定値を角度で記録します。
この測定を「関節可動域測定(ROM-T:Range of Motion Test)」と呼び、関節可動域を改善する治療的訓練を「関節可動域訓練(ROM exercise:ROMex)」と区別します。

また、ROM制限はADL(日常生活活動)に大きな影響を及ぼすことが知られています。関節拘縮や強直によって動作の自由度が失われると、着替えや歩行、入浴動作などの基本動作が困難になり、結果として社会参加や外出機会の減少にもつながります。



対象と適応:どんな場面でROM測定を行うのか

関節可動域測定は、身体機能に障害があるすべてのクライアントを対象に実施されます。特に以下のような症例では、ROM測定がリハビリ初期から重要な役割を果たします。

主な適応疾患・状態

  • 脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)による片麻痺
  • 整形外科疾患(骨折、変形性関節症、腱断裂など)
  • 神経筋疾患(ALS、ギラン・バレー症候群など)
  • 廃用症候群による関節拘縮
  • 長期臥床・加齢による可動域制限

ROM制限の原因

ROMが制限される要因は多岐にわたります。主な原因を以下に示します。

原因内容
拘縮・強直結合組織の短縮や関節包の癒着
筋力低下自動運動の不足による動作制限
疼痛関節炎や炎症による防御的制限
感覚障害動作フィードバックの欠如
意欲・理解力の低下運動意識や協力の不足

ROM測定は、こうした要因を明らかにし、治療の方向性を決定するための初期評価・経過評価・退院時評価として広く活用されます。



実施方法:正確に測るための手順と注意点

ROM測定は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(2022年改訂版)の基準に基づいて実施されます。測定は5°刻みで記録し、必要に応じて痛みや痙性などの状態を併記します。

測定手順

  1. 説明と同意
     被験者に目的と内容を説明し、不安を軽減して協力を得ます。
  2. 体位の安定化
     対象関節を露出し、体幹・近位部を安定させます。
  3. 骨指標の確認
     測定部位の骨指標(ランドマーク)を確認し、基本軸・移動軸を設定します。
  4. 他動的に可動
     検者がゆっくりと他動的に関節を動かし、最大可動域を確認します。
  5. 角度の測定
     ゴニオメーターを用い、固定軸と可動軸に沿って角度を読み取ります。
  6. 記録
     角度、体位、測定日、測定者名を記録します。
     ※疼痛が測定値に影響した場合は「pain」などの表記を付加します。

注意点

  • 炎症や疼痛が強い場合は無理に可動させない。
  • 測定前に筋緊張や浮腫、変形の有無を確認。
  • 体位が不安定な場合は結果がばらつくため、同一肢位・同一条件で再現性を確保します。


採点と解釈:測定角度の読み方と記録法

ROM測定は、関節運動ごとに開始角度(0°)からの変化量を角度で記録します。
原則として「0°」を解剖学的基本肢位とし、開始肢位が0°でない場合はマイナス表記を行います。

記録の基本ルール

項目内容
測定単位5°刻みで記録
測定肢位解剖学的肢位または指定肢位
表記例肘関節伸展 −10°、屈曲 130°
付記例痛み(P)、痙性あり、浮腫あり など

測定の種類

  • 他動的ROM(PROM):構造的な制限の把握に有効
  • 自動的ROM(AROM):筋力・協調性の評価に有効

解釈のポイント

  • 健側と患側を比較して制限角度・制限方向を特定する。
  • 経時的な変化を追うことで治療効果の判定やゴール設定に活用できる。
  • 疼痛や筋緊張などの要素を同時に記録することで、可動制限の原因分析が容易になります。


カットオフ値:正常範囲と制限の判断基準

ROMには明確な「カットオフ値(異常値の基準)」はありませんが、「参考可動域(正常成人の平均可動範囲)」が公式に示されています。
以下は2022年改訂版による代表的な値です。

関節運動方向参考可動域(°)
肩屈曲前方挙上180
肘屈曲145
手関節背屈 / 掌屈70 / 90
股関節屈曲 / 伸展125 / 15
膝屈曲 / 伸展130 / 0
足関節底屈 / 背屈45 / 20
頸部屈曲 / 伸展60 / 50
胸腰部前屈 / 伸展45 / 30

※上記は「正常参考値」であり、性別・年齢・体格・訓練状況によって変動します。
※臨床判断では患側との左右差や疼痛の影響を重視します。



標準化とバージョン情報:公式基準と改訂履歴

ROM測定の標準化は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会・日本足の外科学会の3学会によって定められています。

最新版(2022年改訂版)の特徴

  • 全身の関節について参考可動域角度と軸設定を統一化
  • 「基本軸」「移動軸」「体位」「注意点」まで詳細に明記
  • 記録法(5°単位、pain表記、マイナス表記など)を公式化
  • 国際的基準(ISO 7250)との整合を図る改訂
  • 旧版(1995)との角度値の変更は少数(例:手指・頸部など微調整)

標準化資料の参照

  • 日本整形外科学会公式サイト「関節可動域表示ならびに測定法(2022年改訂)」
  • 都道府県リハビリ関連機関の配布PDF(福祉局・医療局など)
  • JHTS(日本ハンドセラピィ学会)による上肢ROMマニュアル

これらを基に施設ごとのROM測定マニュアルを統一しておくことが望まれます。



臨床応用と活用事例:ROM評価が役立つ場面

ROM測定は、単なる「角度計測」ではなく、臨床推論の出発点として機能します。
以下のような応用が可能です。

主な活用例

  • 初期評価:可動域制限の方向・程度を明確化し、介入計画を立案
  • 経過評価:治療効果の定量的把握(例:術後ROM改善)
  • 機能予後の予測:ROMとADLスコア(FIM、BIなど)との関連
  • 意欲づけ資料:患者本人に可動域改善の成果を「見える化」
  • チームカンファレンス資料:医師・PT・OT・看護間の共有指標

ケース例

  • 人工関節置換術後の膝関節ROM評価
     → 伸展−10°/屈曲90° → 介入後伸展0°/屈曲120°
     → 立ち上がり・階段動作の改善を客観的に確認
  • 脳卒中片麻痺例
     → 上肢屈筋群の痙縮による肘伸展制限(−30°)
     → ボツリヌス療法後にROM改善(−10°)を確認


他検査との関連:複合的な機能評価の中での位置づけ

ROM測定は、単独で使用されるだけでなく、他の運動・ADL評価との組み合わせが有効です。

検査名評価対象ROMとの関係
MMT(徒手筋力検査)筋力筋力低下によるROM制限を補足
FMA(Fugl-Meyer Assessment)片麻痺運動機能他動・自動ROMの差異を分析
FIM / Barthel IndexADL能力関節可動域制限がADLスコアに反映
TUG / 10m歩行下肢機能下肢ROM(股・膝・足関節)が歩行パターンに影響

また、感覚検査・疼痛スケール・痙縮評価(MASなど)と組み合わせることで、ROM制限の原因を多面的に分析できます。
これにより、筋・関節・神経・心理的要因のどれが制限の主因かを明確化できます。



デジタル・ICT対応:ROM測定の最新トレンド

近年、ROM測定はデジタル技術の進化により大きく変化しています。
従来のゴニオメーターに加え、モーションセンサーやスマートフォンアプリを用いた評価が普及しています。

代表的なICT活用例

技術内容
スマホ角度計アプリ内蔵ジャイロセンサーによる自動角度測定(誤差3°以内)
3Dモーションキャプチャ関節角度をリアルタイムで解析、歩行分析にも応用
リハビリ記録アプリ連携ROMデータをクラウド上で共有し、経時比較を自動化
AI姿勢推定(Pose Estimation)カメラ映像からROM推定(非接触型測定が可能)

メリット

  • 測定の再現性・客観性の向上
  • リモートリハビリへの応用(在宅支援)
  • 教育・研究用途での動画解析に活用可能

ただし、デジタル計測では機器のキャリブレーション誤差や装着位置のズレに注意が必要です。
今後はAIとIoTを組み合わせた「自動ROM解析システム」が臨床現場でも主流になることが予想されます。



まとめ

関節可動域測定(ROM-T)は、リハビリテーションの最も基本的でありながら奥の深い評価です。
正しい軸設定、統一された基準、そして再現性の高い測定技術を身につけることで、臨床推論の精度が高まり、治療効果の可視化にもつながります。
2022年改訂の最新基準をもとに、今後もエビデンスに基づいたROM評価を実践していきましょう。


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