SDS(自己評価抑うつ尺度)とは?リハビリで使えるうつ状態の定量評価法を徹底解説

SDS(Self-Rating Depression Scale:自己評価抑うつ尺度)は、うつ状態の程度を短時間で客観的に評価できる心理検査です。
1965年にZungによって開発され、日本語版は福田・小林により標準化されました。
作業療法やリハビリテーションの現場では、患者の心理的変化を数値で把握するツールとして活用されています。
この記事では、SDSの基本構成、実施手順、採点と解釈、カットオフ値、臨床応用、他検査との違い、そしてICT対応までをわかりやすく解説します。
心理評価の基礎知識としてだけでなく、臨床実践の質を高めたいリハビリ専門職にも役立つ内容です。



基本情報|SDS(Zung自己評価抑うつ尺度)の概要

項目内容
名称SDS(Self-Rating Depression Scale)/うつ性自己評価尺度
開発者William W. K. Zung(デューク大学精神科教授)
開発年1965年
日本語版福田一彦・小林重雄(1973)/株式会社三京房(著作権・販売)
構成20項目(陽性・陰性各10項目)
回答形式4件法(「少しの間」「ときどき」「かなりの時間」「ほとんどいつも」など)
実施時間約5〜10分程度
使用目的抑うつ症状の程度を定量的に把握するための自己評価尺度

SDSは、気分・感情・行動の変化を自己記入式で簡便に評価できる点が特徴です。Zungは、うつ病の臨床経過を客観的にモニタリングする目的でこの尺度を開発しました。
日本では株式会社三京房が正式版を発行しており、医療・研究・産業保健など多様な現場で利用されています。



対象と適応|自己記入が可能なクライアントに適する

SDSは自己評価式であるため、自身で質問項目を理解し、選択肢を選ぶことができるクライアントが対象になります。
そのため以下のような条件に配慮する必要があります。

【適応】

  • 抑うつ症状が疑われるクライアント
  • 心理的ストレス、睡眠障害、意欲低下などの訴えがある場合
  • 作業療法の初期評価・経過観察で心理面の変化を追う場合

【適応外】

  • 重度の認知症や失語症などで質問理解が困難な場合
  • 意識障害・せん妄などで自己記入が不可能な場合
  • 強い不安や混乱により回答への集中が難しい場合

また、SDSは医療資格がなくても実施可能な形式ですが、心理評価の解釈やフィードバックには臨床的知識が求められます。
日本版を扱う三京房では「専門家または専門家の指導下で使用すること」を推奨しており、リハビリ職が用いる際もチーム内で共有・連携しながら運用することが重要です。



実施方法|4段階評価で自己回答する手順

SDSは20項目の質問に対して、以下の4段階で回答します。

評価段階内容例
1点ほとんどない/少しの間しかない
2点ときどきある
3点かなりの時間ある
4点ほとんどいつもある

質問は陽性・陰性がランダムに配置され、反応パターンが偏らないよう設計されています。
陽性項目では高得点が「良好な状態」を、陰性項目では高得点が「抑うつ的な状態」を示すため、採点時に逆転処理が必要です。

また、原版には検者が印象を点数化する「Global Rating」欄があり、クライアント自己評価との整合性を確認する補助指標として利用できます。
リハビリ場面では、SDS実施時の表情・態度・言語内容など、非言語的サインの観察も並行して行うことが推奨されます。



採点と解釈|総得点と指数で重症度を判断

20項目×4点法により、得点範囲は20〜80点になります。
また、得点を1.25倍して**指数(25〜100)**に換算し、以下のように重症度を分類します。

指数範囲状態目安
50未満正常範囲抑うつ傾向は軽微
50〜59軽度の抑うつ傾向注意深く観察
60〜69中等度の抑うつ臨床的支援が必要
70以上重度の抑うつ精神科的治療介入が望ましい

SDSの得点は単なる診断基準ではなく、「現在の心理的状態のスクリーニング指標」として扱うのが正確です。
作業療法士が活用する場合は、得点の変化を経時的モニタリングとして捉え、活動量・睡眠・社会参加との関係を分析することで介入の効果を可視化できます。



カットオフ値|40点(指数50)を基準とした臨床的目安

SDSの**カットオフ値は原著で40点(指数50)**とされます。
この閾値以上は抑うつ傾向ありと判断されることが多いですが、対象集団により妥当なカットオフは異なります。
近年の研究では以下の点が指摘されています。

  • 一般成人:40点前後で感度・特異度のバランスが最適
  • 高齢者:35〜38点程度をカットオフとする報告もある
  • 臨床うつ病群:指数60以上で診断精度が高いとされる

このため、SDSは単独で診断するのではなく、他の臨床評価(面接、GDS、BDIなど)と組み合わせて総合的に判断することが推奨されます。



標準化とバージョン情報|信頼性と妥当性の確立

SDSは国内外で広く標準化研究が行われており、心理測定学的信頼性が高い検査として知られています。

【信頼性】

  • 内的一貫性:Cronbach α=0.80前後
  • 再検査信頼性:r=0.73〜0.90

【妥当性】

  • 正常・神経症・うつ病群の平均得点に有意差(p<0.01)
  • 他尺度(BDI、GDS)との高い相関(r=0.6〜0.8)
  • 因子構造は「感情」「身体」「心理」など3〜4因子モデルで安定

日本語版(福田・小林版)は1973年に発表され、以降、三京房から正式出版されています。
臨床・研究ともに使用実績が多く、心理検査としての妥当性は国内外で確認されています。



臨床応用と活用事例|心理・行動面の変化を客観的に把握

SDSは以下のような目的でリハビリテーション領域でも活用されています。

【臨床活用例】

  • うつ傾向を示す高齢者の心理状態スクリーニング
  • 身体疾患後の意欲低下・離床困難例の心理的評価
  • 作業療法プログラム前後での気分変化モニタリング
  • リワーク(職場復帰)支援における再燃リスク評価
  • 慢性疼痛や神経疾患に伴う抑うつ症状の副次評価

また、チーム医療においては、SDSのスコアを共有することで医師・看護師・臨床心理士との多職種連携を促進し、心理社会的支援の質を高めることができます。



他検査との関連|GDS・BDIとの使い分けと組み合わせ

検査名主な特徴適応
SDS自己評価式、20項目、汎用性高い一般成人・高齢者全般
GDS(Geriatric Depression Scale)高齢者用、質問が簡潔高齢者・認知軽度群
BDI(Beck Depression Inventory)臨床的うつ病診断に強い精神科領域・研究用途
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)不安と抑うつを同時評価身体疾患を持つ患者

SDSは短時間で幅広い年齢層に適用可能な点が利点です。
一方で高齢者や身体疾患患者では、身体症状の影響を受けやすいため、GDSやHADSとの併用が望まれます。
リハビリ現場では、身体機能評価(FIM・BIなど)と合わせて総合的にQOLを把握することが有効です。



デジタル・ICT対応|オンライン評価と電子記録の活用

近年、SDSはデジタルツールや電子カルテに統合され、リモート評価や自動集計が容易になっています。

【活用例】

  • タブレット・スマホ入力による自己評価フォーム化
  • AI記録システムとの連携による自動スコア算出
  • 継時変化をグラフ化した心理状態の可視化
  • 在宅・訪問リハにおけるオンラインフォローアップ

ただし、Webフォームなどで実施する場合には、プライバシー保護と心理的安全性に十分配慮する必要があります。
また、日本版SDSは著作権管理下にあるため、正式なライセンスに基づいて使用・デジタル化することが求められます。



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