TEG3(東大式エゴグラム)は、東京大学医学部心療内科が開発した性格検査で、交流分析理論に基づき個人の自我状態を測定する心理テストです。
本記事では、TEG3の基本情報・対象年齢・実施方法・採点と解釈・標準化情報・臨床応用・他検査との関連・デジタル対応まで、リハビリ専門職(作業療法士・心理士・カウンセラー)向けに詳しく解説します。
臨床現場での活用を検討している方や、TEGⅡとの違いを知りたい方にも役立つ内容です。
TEG3(東大式エゴグラム)とは?|交流分析に基づく性格検査の基礎知識
TEG3(Tokyo University Egogram 3)は、東京大学医学部心療内科TEG研究会によって開発された性格検査です。
エリック・バーンの交流分析理論を基盤とし、5つの自我状態(CP・NP・A・FC・AC)のバランスから、個人の性格傾向や行動パターンを可視化します。
1984年の初版「TEG」以降、2006年に「新版TEGⅡ」、そして2019年に最新版「新版TEG3」が刊行されました。新版TEG3では心理測定学の新しい枠組みである**項目反応理論(IRT)**を導入し、より精度の高い心理測定を実現しています。
TEG3の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発機関 | 東京大学医学部心療内科 TEG研究会 |
| 理論基盤 | 交流分析理論(Transactional Analysis) |
| 出版社 | 金子書房(2019年) |
| 項目数 | 53問(三択式:「はい」「いいえ」「どちらでもない」) |
| 対象年齢 | 16歳以上 |
| 実施時間 | 約10分(採点約5分) |
| 採点方法 | 手動またはPC採点(自動集計対応) |
| 診療報酬 | D284-1 心理検査(80点) |
| 測定内容 | 5つの自我状態:CP・NP・A・FC・AC |
TEG3は、医療・産業・教育といった幅広い現場で用いられています。短時間で実施でき、信頼性・妥当性ともに高い検査として位置づけられています。
対象と適応|TEG3が役立つ人と場面
TEG3の対象は16歳以上の青年・成人です。自己報告式検査であるため、一定の自己認識力と抽象的思考が必要になります。
高校生から高齢者まで、幅広い層に対応できる汎用性の高さが特徴です。
適応となる主な場面
- 医療分野:心理的背景の把握、カウンセリング、心身症治療の一助
- 産業・組織:リーダーシップ開発、職場の対人関係改善、メンタルヘルス評価
- 教育・学生支援:自己理解・進路指導・スクールカウンセリング
- リハビリテーション:患者の性格特性や動機づけの把握、コミュニケーション支援
TEG3は、被験者がどの自我状態を優位にして行動しているかを明らかにすることで、
「指導・支援スタイルの個別化」や「心理的支援方針の調整」に役立ちます。
作業療法士にとっては、患者の性格傾向をふまえたアプローチ設計に有用なツールです。
実施方法|短時間で行える質問紙検査
TEG3は質問紙法による心理検査です。以下の手順で実施されます。
実施の流れ
- 質問紙の準備
金子書房刊行の「新版TEG3」質問紙を用意します。 - 回答
全53問に対し、「はい」「いいえ」「どちらでもない」から最も近い選択肢を選びます。
回答時間はおよそ10分程度です。 - 採点
マニュアルに従って各自我状態の得点を算出。
またはPC採点ソフトを用いて自動算出も可能です。 - 結果の記録
CP・NP・A・FC・ACの5項目それぞれの得点を棒グラフ(エゴグラム)として視覚化します。
注意点
- 深く考えすぎず、直感的に回答することが望ましい。
- テスト時の体調や気分が結果に影響する可能性もあるため、安定した環境で実施すること。
- 医療・心理職の指導のもとで行うとより精度の高い解釈が可能です。
採点と解釈|5つの自我状態をどう読むか
エゴグラムでは、5つの自我状態を棒グラフで示します。
それぞれの自我状態は次のような意味を持ちます。
| 自我状態 | 英語名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| CP | Critical Parent(批判的親) | 道徳・規律・判断力。高すぎると厳格・支配的傾向。 |
| NP | Nurturing Parent(養育的親) | 優しさ・保護・支援。高いと面倒見が良いが過保護にも。 |
| A | Adult(大人) | 論理性・客観性・合理的判断。冷静さを象徴。 |
| FC | Free Child(自由な子ども) | 自発性・創造性・感情表現。高いと独創的。 |
| AC | Adaptive Child(適応的子ども) | 協調性・従順・適応。過剰だと自己主張が弱くなる。 |
結果のパターン(山型・谷型・平坦など)から性格傾向を読み解くことで、
支援者と被験者双方が「行動の背景」を共有できます。
作業療法の場面では、モチベーション・ストレス耐性・対人行動のスタイル理解に役立ちます。
カットオフ値と判定の考え方
TEG3には「異常/正常」という医学的なカットオフ値は設けられていません。
本検査は診断目的ではなく、自己理解・性格傾向の把握を目的とした心理尺度です。
評価のポイント
- 各自我状態のバランスが重要。
- 特定のスコアが高すぎる/低すぎる場合、その傾向が行動や人間関係にどう影響しているかを考察。
- パターンの比較により、時期的変化やストレス反応を評価することも可能。
臨床では、エゴグラムの形だけでなく、本人の語り・観察・他の検査との併用により、
多面的に解釈することが推奨されます。
標準化とバージョン情報|TEG2からTEG3への進化
TEG3は2019年に出版され、最新版として再標準化されています。
主な変更点
- 標準化データの更新(最新の大規模サンプルを使用)
- 質問項目の一部改訂(曖昧な表現の修正・新項目追加)
- 項目反応理論(IRT)の採用
- 採点精度と信頼性の向上
TEG2(2006年版)は古典的テスト理論(CTT)を基本としており、
TEG3ではIRTによる統計的検証を導入した点が大きな進化です。
この更新により、現代日本社会の心理特性に即した信頼性の高い評価が可能となりました。
臨床応用と活用事例|医療・教育・職場での利用
TEG3は以下のような多様な場面で活用されています。
- 医療・リハビリ領域:心理的背景の把握、動機づけ、セルフモニタリング支援
- 作業療法:患者の行動傾向・感情コントロール特性を把握し、アプローチ選定に活用
- 産業保健・メンタルヘルス:ストレスマネジメント・職場適応支援
- 教育領域:生徒指導、キャリア教育、対人スキルトレーニング
特に医療・リハビリ分野では、TEG3によって得られた心理プロファイルが
治療同盟の形成や介入動機づけの向上に役立ちます。
作業療法士が扱う「人の行動変容」を読み解く上で、
TEG3は客観的な自己理解の起点として位置づけられます。
他検査との関連|TEG3と組み合わせる心理評価
TEG3単独では診断目的には適しませんが、他検査との併用で高い有用性を発揮します。
主な併用例
| 検査名 | 補完する機能 |
|---|---|
| Y-G性格検査 | パーソナリティ特性の全体像把握 |
| POMS2 | 一時的な情動・気分変動の確認 |
| STAI | 状態不安と特性不安の測定 |
| BDI-II | 抑うつ傾向の併存評価 |
| WAIS-IV/MMPI | 認知特性・心理的適応の多角的把握 |
TEG3の「自我バランス」情報を、他検査の感情・行動データと組み合わせることで、
より多面的な心理像が得られます。
デジタル・ICT対応|オンライン化と臨床現場での活用
新版TEG3では、PCやタブレットによる回答・採点に対応しています。
金子書房が提供する専用ソフトウェアを利用することで、
結果の自動集計・グラフ化・履歴比較などが可能です。
デジタル活用のメリット
- 採点精度の向上:ヒューマンエラーを防止
- 迅速なフィードバック:即時にグラフ表示・共有が可能
- データ蓄積:経時的な変化を追跡可能(リハビリ経過評価に有用)
- リモート実施:オンライン面談・カウンセリングへの応用
リハビリ領域では、心理的変化のトラッキングや自己理解支援として、
ICT化されたTEG3が今後さらに活用されていくと考えられます。