Trunk Control Test(TCT)とは?脳卒中患者の体幹制御を5分で評価できる方法と臨床応用を解説【リハビリ専門職向け】

Trunk Control Test(TCT)は、脳卒中や脊髄損傷などの患者における体幹制御能力を、わずか5分で評価できる臨床検査です。
体幹は姿勢保持や歩行の基盤であり、その回復度はADL自立や退院後の生活の質に大きく影響します。
この記事では、TCTの構成・採点方法・予後予測の活用法を、リハビリセラピストが臨床で使える視点から詳しく解説します。
治療計画や研究活用を見据えた、信頼性の高いエビデンスに基づく内容です。



基本情報|Trunk Control Test(TCT)の概要

項目内容
名称Trunk Control Test(TCT)/体幹コントロールテスト
開発者Collin & Wade(1990)
評価目的体幹制御能力の評価、予後予測、治療計画立案
主な対象脳卒中・脊髄損傷・神経筋疾患などの体幹障害例
評価項目寝返り(左右)、起き上がり、座位バランスの4項目
採点範囲各項目0・12・25点の3段階、総点0〜100点
実施環境ベッドサイドで簡易実施可能(特別な器具不要)
所要時間約5分程度

TCTは、ベッド上での基本的な体幹動作を評価することで、患者の体幹制御力を総合的に把握できます。
体幹は姿勢保持・四肢運動・バランス能力の基礎であり、特に脳卒中リハビリにおけるADL自立度の指標として重要です。



対象と適応|どんな患者にTCTを使うのか

TCTは、脳卒中・脊髄損傷・神経筋疾患・脳性麻痺など、体幹の安定性やコントロールに課題がある患者に適応します。

主な対象疾患

  • 脳卒中(Stroke):片麻痺による体幹の非対称性や座位バランス低下の評価に。
  • 脊髄損傷(SCI):体幹筋麻痺による座位・起き上がり能力の判定に。
  • 神経筋疾患(NMD):筋力低下に伴う姿勢制御能力の定量評価に。
  • 脳性麻痺(CP):歩行能力・座位バランスとの関連を把握する指標として。

適応場面

  • ベッド上・早期離床期の評価
  • リハビリ開始時・経過観察・退院前評価
  • 体幹トレーニング介入の効果測定
  • 研究・臨床試験におけるアウトカム指標

TCTは評価手順がシンプルでありながら、患者の体幹機能とADL自立の関連を把握できる信頼性の高い検査として、理学療法士・作業療法士双方に有用です。



実施方法|4つの動作で体幹制御を評価

TCTは以下の4項目から構成されます。すべてベッド上で介助者1名が安全に実施できます。

番号評価項目内容
T1麻痺側への寝返り仰臥位から麻痺側へ寝返りができるかを確認。
T2非麻痺側への寝返り非麻痺側への寝返り動作の可否と制御を観察。
T3仰臥位から座位上体を起こし、座位まで移行する動作を評価。
T4座位バランス座位姿勢での安定性と体幹の保持を観察。

実施上のポイント

  • 寝返りでは体幹の柔軟性・回旋制御・重心移動を評価。
  • 起き上がりでは腹直筋・腸腰筋など体幹筋群の筋力・協調性を確認。
  • 座位バランスでは上肢動作や外乱に対する安定性をチェック。

評価時間は約5分と短く、早期離床期のリスク評価にも有用です。



採点と解釈|スコアでみる体幹機能レベル

各項目は次の3段階で採点し、合計100点満点で評価します。

得点判定基準
0点動作不可、または介助を要する
12点自助具・支えを用いれば可能
25点自立して動作可能

解釈の目安

  • 80点以上:体幹制御が良好で、歩行・ADL自立の可能性が高い。
  • 50〜79点:部分的な体幹制御障害。継続的な運動療法で改善が見込まれる。
  • 50点未満:体幹機能の重度低下。寝返り・起き上がり介助が必要。

Duarteら(2002)の研究では、入院時のTCTスコアがFIM・歩行能力・退院時ADLと有意に相関することが報告されています。
したがって、TCTは機能回復予測やゴール設定の初期評価指標として信頼性が高いといえます。



カットオフ値|TCTの閾値と関連研究

TCTには標準化された「カットオフ値」は存在しません。
これは、TCTが機能的段階を評価する定性的テストであり、得点変化そのものが改善指標となるためです。

一方で、関連する尺度であるModified Trunk Impairment Scale(mTIS)では、
Leeら(2018)がModified Barthel Indexとの関連で10.5点以上
を自立の目安と報告しています(Disability and Rehabilitation, 40巻, 2018年)。

このように、TCT単体よりも他尺度との併用・相関解析が臨床研究で重視されています。
臨床的には、TCT 50点前後を目安に寝返りや座位バランスの自立度を判断することが多いです。



標準化・バージョン情報|TCTの信頼性と他バージョン

TCTはCollin & Wade(1990)によって開発されて以来、
多くの研究で高い信頼性(ICC>0.95)と構成妥当性
が確認されています。

主なバージョンと派生

  • 原版TCT:4項目×3段階(0/12/25点)構成
  • 修正版(Modified TCT):特定疾患向けに感度を高めた改良版
  • mTIS/TISとの比較研究:より詳細な体幹評価との併用が行われる

標準化のポイント

  • 評価者間信頼性が高く、再現性がある
  • 短時間で実施できるため、早期評価・追跡に適す
  • 器具を必要とせず、教育・研究環境にも導入しやすい

これらの特徴から、TCTは世界的に標準的な体幹評価スケールとして位置づけられています。



臨床応用と活用事例|リハビリ実践での使い方

TCTは、脳卒中やSCIの早期リハビリで次のように活用されています。

臨床応用例

  1. 予後予測
     入院初期TCTスコアで退院時ADL・歩行自立度を予測(Duarte 2002)。
  2. 治療計画立案
     低スコア群に対して体幹筋トレーニング・座位保持訓練を重点化。
  3. 研究利用
     体幹制御と歩行能力・バランスの関連性を解析(Verheyden 2006)。

活用のコツ

  • 体幹スコアを経時的に追うことで、介入効果を明確化。
  • 改善が停滞した場合は、他の感覚系・下肢筋力評価も併用。
  • 早期から「座位バランス練習+TCT再評価」のループを行うと効果的。

TCTは単なる評価法に留まらず、目標設定・モチベーション支援ツールとしても機能します。



他検査との関連|TCTとTIS・BBS・FIMの比較

TCTは他の体幹・バランス評価と強い相関を示します。

検査名評価内容TCTとの関連
Trunk Impairment Scale(TIS)座位バランスや体幹回旋の詳細評価高い相関あり(r=0.85前後)
Berg Balance Scale(BBS)立位・動的バランス評価中等度相関(r=0.6前後)
Functional Independence Measure(FIM)ADL全般の自立度有意な正相関(Duarte 2002)
mTIS感度を高めた改良版体幹スケール自立度予測に有用(Lee 2018)

TCTは座位〜起居レベルの初期バランス評価に適し、
立位を含む広範囲の動作をみるBBSなどと組み合わせることで、より正確な機能予測が可能になります。



デジタル・ICT対応|TCTの電子化・リモート評価の可能性

近年、TCTをデジタル化して評価する試みも進んでいます。

ICT活用例

  • 動画解析アプリを用いた動作採点(AI姿勢解析による自動スコアリング)
  • ウェアラブルセンサーによる体幹傾斜・重心移動量の定量化
  • オンラインリハビリにおける在宅体幹訓練の遠隔モニタリング
  • 電子カルテ連携による経時的スコア推移の自動記録

こうした技術により、TCTは従来の主観評価から客観的・定量的評価ツールへ進化しつつあります。
今後は、AI姿勢解析・メタバースリハなどの分野で、TCTを基礎とした体幹制御トレーニングの自動評価システムが開発される可能性があります。



参考文献

  1. Collin, C., & Wade, D. (1990). Trunk control test in stroke: validity and reliability. Clinical Rehabilitation.
  2. Duarte, E. et al. (2002). Journal of Rehabilitation Medicine, 34(6), 267–272.
  3. Verheyden, G. et al. (2006). Clinical Rehabilitation, 20, 451–458.
  4. Lee, Y., An, S., & Lee, G. (2018). Disability and Rehabilitation, 40, 1200–1205.
  5. Quinzaños-Fresnedo, J. et al. (2018). The Journal of Spinal Cord Medicine, 43, 331–338.

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