聴診三角は、背中に位置する三角形の領域で、筋層が薄いため肺の呼吸音が明瞭に聞こえる部位です。
呼吸器疾患の診断に適しており、僧帽筋、広背筋、大菱形筋に囲まれています。
本記事では聴診三角について解説します。
聴診三角とは
聴診三角は、背中の筋肉が薄くなっている部分で、呼吸音が最も明瞭に聞こえる領域です。
この三角形の領域は、僧帽筋の外側縁、肩甲骨の内側縁、広背筋の上縁によって囲まれています。
筋肉が薄いため、特に肺の音を聴診する際に最適な場所とされています。
聴診三角の構成
聴診三角は、以下の3つの筋肉によって囲まれています。
- 広背筋
- 僧帽筋
- 大菱形筋
それぞれ解説します。
広背筋
広背筋は、背中の大部分を覆う広い筋肉で、肩や腕の動きに大きな役割を果たします。
主に肩関節の伸展、内転、内旋を担当し、腕を体に引き寄せたり、後ろに引いたりする動作に関与します。
この筋肉は特に登山や懸垂など、腕を上げたり引っ張る動作でよく使われます。
また、広背筋は腰部から脇の下まで広がり、体の後面の強さと安定性を提供します。
全体的に、日常的な動作から運動まで幅広く重要な役割を果たす筋肉です。
僧帽筋
僧帽筋は、首から肩、そして背中の中央にかけて広がる筋肉で、肩甲骨の動きをコントロールします。
この筋肉は上部、中部、下部に分かれ、それぞれ肩甲骨の挙上、内転、下制を行います。
僧帽筋は頭を支える役割も持ち、姿勢の維持に重要です。
また、肩こりの原因となる筋肉でもあり、ストレスや不良姿勢によって過度に緊張しやすい部位です。
この筋肉の健康は、首や肩の動き、姿勢の改善に密接に関連しています。
大菱形筋
大菱形筋は、肩甲骨の内側に位置する筋肉で、肩甲骨を背骨に引き寄せる働きを持ちます。
主に肩甲骨の内転と下方回旋を担当し、肩甲骨を安定させることで腕や肩の動作をスムーズにします。
この筋肉は、姿勢を正す上で重要な役割を果たしており、背中を丸めず、胸を開いた状態を維持することに寄与します。
また、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用によって弱まりやすく、肩こりや猫背の原因になることがあります。
大菱形筋の強化は、姿勢改善と肩甲骨の安定に有効です。
聴診三角の臨床的な意義
聴診三角で聴診することで、以下のことがわかります。
- 呼吸音
- 異常音
それぞれ解説します。
呼吸音
呼吸音は、聴診三角で肺の健康状態を評価するための重要な指標です。
正常な呼吸音は、空気が気道や肺胞を通過する際に発生し、特に肺胞呼吸音や気管支呼吸音として区別されます。
呼吸音の強さや高さ、左右での違いを確認することで、肺の通気性や空気の流れの異常を評価します。
例えば、呼吸音が弱くなっている場合、肺の一部が虚脱している可能性があります。
また、呼吸音が異常に高い場合は、気道が狭くなっている可能性があり、注意深い診察が必要です。
異常音
異常音は、肺や気道に何らかの異常がある場合に聴かれる異音で、喘鳴や湿ら音などが代表的です。
喘鳴は、気道が狭くなることによって生じる笛のような音で、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などでよく聞かれます。
湿ら音は、肺内に液体が存在する場合に聴かれ、肺炎や心不全などの症状として現れます。
これらの異常音を早期に検出することで、病気の進行を防ぎ、早期治療を開始することが可能です。
異常音の性質や発生場所を詳しく聴き分けることで、診断の精度が高まります。
聴診三角と経穴(ツボ)の関係性
聴診三角に関連する経穴(ツボ)は「譩譆(いき)」と呼ばれます。
譩譆は、背中にある重要な経穴で、主に呼吸器系の症状に対する治療に用いられます。
この経穴は、第6胸椎棘突起の下縁と同じ高さに位置し、背骨の中央から外側に約3寸の場所にあります。
呼吸困難や咳、喘鳴など、肺の異常に対する鍼灸治療に効果があるとされています。
聴診三角の構成部位を語呂合わせで覚えるには?
「広(ひろ)い背中で僧侶(そうりょ)が大きな菱形(ひしがた)を描く」