行動変容 – 5つのステージ・アプローチ・理論・具体例について

行動変容 - 5つのステージ・アプローチ・理論・具体例について 用語

行動変容は、個人が特定の目標に向かって行動を変えるプロセスで、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージを経て進行します。
本記事ではこの5つのステージとアプローチ、背景にある理論的枠組みや具体例について解説します。


行動変容とは

行動変容(behavior change)とは、個人が特定の目標に向かって行動を変えるための心理学的アプローチであり、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージを経て進行します。
このプロセスを理解し、適切な働きかけを行うことで、行動変容をスムーズに進めることができます。

行動変容を簡単にわかりやすく一言で言ってしまえば「人の行動や習慣が変わること」を指すんだ!
このプロセスを理解し、適切なサポートを提供することで、持続可能な行動の変化を実現することが可能になるんですね!

行動変容の5つのステージ

行動変容は5つのステージに分けることができます。
この5つとは…

  • 無関心期
  • 関心期
  • 準備期
  • 実行期
  • 維持期

…になります。
それぞれ解説します。

無関心期

無関心期は行動変容の最初のステージで、個人はまだ問題の存在に気づいておらず、行動を変える必要性を感じていない時期です。
例えば、喫煙者が喫煙の健康リスクについて認識していない段階です。
この段階では、個人は変化する理由を理解していないため、外部からの情報提供や啓発が重要となります。
問題の深刻さを示し、行動変容の利点を伝えることで関心を引き出すことが求められます。

健康リスクや行動変容のポジティブな影響を明確に伝えることで、個人の認識を変え、次のステージへの移行を促すことが可能です。

関心期

関心期では、個人が問題の存在に気づき、行動変容に興味を持ち始める時期です。
喫煙者が健康リスクを認識し、禁煙について考え始める段階がこれに該当します。
この段階では、行動変容の必要性を感じ始め、変化のための情報収集を行います。
個人には行動変容の具体的な方法やそのメリットについて詳しい情報を提供することが重要です。

また、行動変容に向けたモチベーションを高めるためのサポートやカウンセリングを行うことで、次のステージへの移行を促進することができます。

準備期

準備期は、個人が行動変容の準備を始め、具体的な計画を立てる時期です。
例えば、喫煙者が禁煙プログラムに参加する計画を立てたり、サポートグループに参加する準備をする段階です。
この段階では、変化を実行するための具体的なステップや戦略を考え始めます。
行動計画の作成を支援し、具体的な目標設定や障害予測、対処法などを一緒に考えることが重要です。

実際の行動変容に向けた具体的なステップを明確にし、実行期にスムーズに移行できるようサポートを提供します。

実行期

実行期は、個人が実際に行動を変え始める時期です。
例えば、喫煙者が禁煙を開始し、ニコチンパッチを使用するなどの具体的な行動を取る段階です。
この段階では、計画を実行に移し、具体的な行動を取ります。
新しい行動を継続するための具体的な戦略を立て、周囲のサポート体制を整えることが必要です。
また、行動の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて計画を調整することで、行動変容を持続的にサポートします。

行動変容の成功には、実行期の適切なサポートと励ましが不可欠です。

維持期

維持期は、新しい行動や習慣が定着し、個人が持続的な変化を遂げる時期です。
例えば、禁煙を維持し続けるためのサポートや、成功体験を共有することでモチベーションを維持することが求められます。
この段階では、変化した行動を長期的に維持するための戦略が重要となります。
達成感や自己効力感を高めるようなフィードバックを行い、行動が習慣として定着するよう支援します。
また、予期せぬ障害が発生した場合の対処法を考えることで、行動変容の持続可能性を高めます。

維持期の成功は、個人の生活の質の向上に大きく寄与します。

トランスセオレティカルモデル(TTM) - 提唱者・4つの概念・具体例について
行動について5つの段階に分け、それぞれに適切なサポートの重要性を説いた理論のトランスセオレティカルモデル(TTM)について解説します。

セラピストがこの行動変容のプロセスを理解し、各ステージに適したサポートを提供することは、患者さんの持続的な行動変化を促進する上で非常に有効なんだ!
またこの5つのステージをフレームワーク的に活用することで、健康行動の改善や新しい習慣の定着に対する効果的なアプローチが可能となりますね!

行動変容を促すアプローチ

では、実際に臨床で患者の行動変容を促すときにはどのようなアプローチを試みればよいでしょうか?
ここでは…

  • 情報提供型
  • 動機づけ型
  • 環境整備型

……について解説します。

情報提供型

情報提供型のアプローチは、問題の深刻さや行動変容のメリット、具体的な方法についての情報を提供することで、個人が行動を変える動機を持つきっかけを作ることを目的としています。
このアプローチは、特に無関心期や関心期にいる人々に効果的です。
無関心期の人々は、問題の存在やその深刻さに気づいていないことが多いため、情報提供によって問題意識を喚起し、行動変容の必要性を感じてもらうことが重要です。
例えば、喫煙の健康リスクについてのパンフレットや禁煙セミナーの開催は、喫煙者が喫煙の害について理解し、禁煙を考えるきっかけとなります。
関心期にいる人々に対しては、行動変容の具体的な方法やそのメリットを詳しく説明することで、実際に行動を変えるためのモチベーションを高めます。
例えば、禁煙の成功事例や禁煙支援プログラムの紹介を通じて、禁煙のメリットや具体的な方法を伝えることができます。

情報提供型のアプローチは、個々の状況に応じた適切な情報を提供することが成功の鍵となります。

動機づけ型

動機づけ型のアプローチは、個人が行動変容を実現するための内的および外的な動機を高めることを目指しています。
具体的な目標設定や自己効力感の向上、社会的支持を通じて、個人が行動を変えるための強い意欲を持つことが重要です。
目標設定は、個人が具体的な行動計画を立て、その達成に向けて努力するための指針となります。
例えば、禁煙を目指す場合、具体的な禁煙日を設定し、その日までに必要な準備を行うことが効果的です。
自己効力感の向上は、個人が行動変容を実現できるという自信を持つことを促します。
これは、過去の成功体験や周囲のサポートによって強化されます。例えば、禁煙に成功した他の人々の体験談を聞くことで、自分もできるという自信を持つことができます。
社会的支持は、家族や友人、コミュニティからのサポートを受けることで、行動変容を持続させる力となります。

例えば、禁煙を応援してくれる友人や同じ目標を持つグループに参加することで、モチベーションを高めることができます。

環境整備型

環境整備型のアプローチは、行動変容を促すための物理的および社会的な環境を整備することを目的としています。
物理的環境の改善には、行動変容を実現しやすい環境を提供することが含まれます。
例えば、喫煙者が禁煙しやすい環境を作るために、公共の場所での喫煙を禁止し、喫煙エリアを制限することが効果的です。
また、健康食品の販売促進やフィットネス施設の設置なども、健康的な行動を促すための物理的環境の整備の一例です。
社会的環境の改善には、社会全体の規範や価値観を変えることが含まれます。
例えば、健康に関する正しい情報をメディアを通じて発信し、健康的な行動を推奨するキャンペーンを行うことが挙げられます。
政策の変更も重要であり、健康を促進するための法規制やインセンティブを導入することで、個人が健康的な行動を取りやすい社会環境を整えることができます。
これにより、個人が行動変容を容易に実行できる環境を提供し、新しい行動を習慣化することを促進します。

例えば、自転車道の整備や健康的な食事を提供する食堂の設置などが具体例です。

行動変容を促すためには、情報提供、動機づけ、環境整備の各アプローチを統合し、個々のステージに応じた適切なサポートを提供することが重要なんだ!
これにより、個人が持続可能な行動変化を実現しやすくなりますね!

行動変容の背景にある理論的枠組み

では、この行動変容の背景にある理論的枠組みとはなにがあげられるでしょうか?
主なものとして…

  • トランスセオレティカルモデル(TTM)
  • 認知行動療法(CBT)
  • モチベーショナルインタビュー(MI)
  • ナッジ理論
  • COM-Bモデル

…があげられます。
それぞれ解説します。

トランスセオレティカルモデル(TTM)

トランスセオレティカルモデル(TTM)は、個人が行動を変える際に通過する5つのステージを提唱するステージモデルで、無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の順に進行します。
無関心期では、個人はまだ問題の存在に気づいておらず、行動変容の必要性を感じていません。例えば、喫煙者が喫煙の健康リスクを認識していない段階です。
関心期では、個人は行動変容の必要性を感じ始め、変化に向けた情報収集を行います。
例えば、喫煙者が健康リスクを理解し、禁煙について考え始める段階です。
準備期では、個人が具体的な行動計画を立てます。
例えば、禁煙プログラムに参加する計画を立てたり、サポートグループに参加する準備をする段階です。
実行期では、個人は計画を実行に移し、具体的な行動を取ります。
例えば、喫煙者が禁煙を開始し、ニコチンパッチを使用するなどの具体的な行動を取る段階です。
維持期では、新しい行動や習慣が定着し、個人が持続可能な変化を遂げます。
例えば、禁煙を維持し続けるためのサポートや、成功体験を共有することでモチベーションを維持することが求められます。

TTMは、各ステージに応じた異なるアプローチが必要であり、無関心期には情報提供が重要であり、維持期には行動の継続をサポートするための強化策が有効です。

認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)は、思考と行動の関係に焦点を当てる心理療法であり、特に不安やうつ病の治療に効果的です。
CBTの基本的な考え方は、ネガティブな思考パターンが不適応な行動を引き起こすというものであり、これをポジティブな思考に変えることで行動を変えることを目指します。
具体的な手法としては、認知再構成、エクスポージャー療法、問題解決スキルの訓練などがあります。
認知再構成は、ネガティブな思考パターンを特定し、それをポジティブなものに置き換えるプロセスです。
エクスポージャー療法は、不安を引き起こす状況に対する段階的な曝露を通じて、恐怖反応を減少させる方法です。
問題解決スキルの訓練は、個人が現実的な解決策を見つけ出す能力を向上させることを目的としています。
CBTは、個人が自分の思考パターンを認識し、それを修正することで行動を改善するため、持続的な行動変容を促進します。
また、エビデンスに基づくアプローチであり、多くの臨床試験でその効果が確認されています。

CBTの効果は広範な精神的および行動的問題に対応できるため、非常に汎用性が高いです。

モチベーショナルインタビュー(MI)

モチベーショナルインタビュー(MI)は、個人の内発的な動機を引き出すことを目的とした対話技法です。
このアプローチは、クライアント中心であり、抵抗感を減らしながら変化への意欲を高めることを目指します。
MIは、クライアントが自分自身の目標や価値観に基づいて行動変容を考え、実行するためのサポートを提供します。
具体的には、オープンエンドな質問、共感的な傾聴、肯定的なフィードバックなどの技法を用います。
オープンエンドな質問は、クライアントに自由に考えを述べる機会を与え、その思考を深めることを促します。
共感的な傾聴は、クライアントの感情や視点を理解し、それに共感を示すことで、信頼関係を築きます。
肯定的なフィードバックは、クライアントの努力や成功を認め、それを強化することで、モチベーションを高めます。
MIは依存症治療や生活習慣病の管理において特に効果的であり、クライアントの自己効力感を高めることで持続的な行動変容を促します。

MIの成功は、クライアントが自らの目標を達成するための内発的な動機を強化することにあります。

ナッジ理論

ナッジ理論は、選択肢の提示方法を工夫することで、自然に望ましい行動を選ばせるアプローチです。
ナッジとは「小さな押し」という意味で、個人が気づかないうちに行動に影響を与える方法です。
例えば、健康的な食品を目立つ場所に配置することで、健康的な選択を促すことができます。
階段をより利用しやすくするためのデザイン変更や、エネルギー消費量を減らすためのインセンティブを提供することもナッジの一例です。
ナッジ理論は、行動経済学の一部として発展し、政策や公共健康キャンペーンにおいて広く応用されています。
例えば、公共施設での健康促進プログラムや、エネルギー使用の効率化を図る政策などがナッジの具体例です。
ナッジは個人の自由な選択を尊重しながら、望ましい行動を促進する点で効果的です。

これにより、個人は無意識のうちに健康的な選択をするようになり、持続可能な行動変容を実現します。

COM-Bモデル

COM-Bモデルは、University College LondonのSusan Michie博士によって開発された行動変容モデルで、行動(Behavior)を変えるためには能力(Capability)、機会(Opportunity)、動機(Motivation)の3要素が必要であるとされています。
能力(Capability)は行動を実行するための身体的および心理的な能力を指し、知識やスキル、経験が含まれます。
機会(Opportunity)は行動を可能にする外的な要因や環境で、時間や場所、環境、金銭などが含まれます。

動機(Motivation)は行動を促進する内的な意欲や欲求で、信念や感情、意思決定がこれに該当し、これら3要素が相互に影響し合いながら行動変容を促進します。

COM-Bモデル - 3つの要素・メリット・デメリット・課題・具体例について
行動変容を促進するために能力、機会、動機の3要素を統合的に考慮するフレームワークであるCOM-Bモデルについて解説します。

これらの理論とアプローチは、行動変容の支援において多様な方法を提供し、個人の健康や生活の質を向上させるために役立つんだ!
それぞれの理論は異なる視点と技法を持ち、具体的な状況や個人のニーズに応じて最適な方法を選択することが重要でしょうね!

行動変容の具体例

ではこの行動変容の具体例として、「リハビリを面倒がって継続しないケース」について考えてみます。

無関心期:「リハビリは面倒だし、特に続けるつもりはない。」

無関心期は、リハビリテーションの必要性や重要性を認識しておらず、具体的な行動を起こす意図がない段階です。
この段階では、患者はリハビリの効果や重要性についての理解が不足しており、行動を変える意識がありません。
リハビリテーションが苦痛に感じられる、効果を実感できない、日常生活に忙しくて時間がないなどが原因で、リハビリを続ける動機を持っていないことが多いです。
介入方法としては、リハビリの重要性やメリットを分かりやすく説明し、興味を引き出すことが求められます。

具体的には、成功事例やリハビリの具体的なメリットを示すことで、患者にリハビリの重要性や効果についての情報を提供し、意識を高めることが重要です。

関心期:「最近、痛みがひどくなってきた。リハビリを続けた方がいいかもしれない。」

関心期では、患者はリハビリの必要性について意識し始め、情報収集を行う段階です。
この段階では、患者はリハビリの必要性を感じ始めていますが、まだ具体的な行動には移していません。
痛みや不快感が動機となり、リハビリに対する関心が高まっています。
介入方法としては、リハビリに関する情報提供を行い、具体的な目標設定を支援することが重要です。

患者の関心をさらに高めるために、リハビリの具体的な効果や改善例を示し、患者の不安や疑問に答えることで、リハビリを始めるためのサポートを提供します。

準備期:「来週からリハビリを再開する計画を立てて、週に2回は通うようにしよう。」

準備期は、具体的な行動計画を立て、実行に向けて準備を進める段階です。
患者はリハビリを始めるための具体的な計画を立て、リハビリのスケジュールや目標を設定し、実行に向けた準備を進めています。
この段階では、リハビリテーションの効果に対する期待、目標設定、周囲のサポートなどが重要な役割を果たします。
介入方法としては、リハビリ計画の作成を支援し、具体的な行動計画を立てることが重要です。

患者が立てた計画をサポートし、具体的な目標設定やスケジュールの調整、リハビリを始めるための環境整備や必要なリソースの提供を行います。

実行期:「今日からリハビリを再開した。まずは軽い運動から始めてみよう。」

実行期は、患者が実際に新しい行動を開始する段階です。
この段階では、患者は実際にリハビリを始め、初期段階では軽い運動や簡単なリハビリプログラムからスタートし、徐々に負荷を増やしていきます。
準備段階での計画の実行、周囲のサポート、自己効力感の向上などが、リハビリの継続に寄与します。
介入方法としては、リハビリの実施をサポートし、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。

患者の進捗を定期的に評価し、フィードバックを提供することで、リハビリの効果を実感できるようにサポートし、モチベーションを維持するための励ましやアドバイスを行います。

維持期:「リハビリを続けて3ヶ月が経った。痛みも和らいできたし、このまま続けよう。」

維持期は、新しい行動を習慣化し、長期的に続ける段階です。患者はリハビリを継続し、新しい習慣が定着しています。
この段階では、リハビリの効果を実感し、痛みの軽減や機能の改善が見られます。
介入方法としては、長期的なモチベーション維持のための支援を行い、リバウンドを防ぐことが重要です。

継続的なサポートを提供し、患者がリハビリを続けられるように環境を整え、リハビリの効果を維持するためのアドバイスや新たな目標設定を行います。

これは段階的行動変容モデル(TTM)に基づいた典型的なケースといえるね!
TTMを参考に、患者さんの状況に合わせて適切な支援を行うことで、より効果的なリハビリテーションが実現しますね!

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THERABBYを運営している臨床20年越えの作業療法士。
行動変容、ナッジ理論、認知行動療法、家族療法、在宅介護支援
ゲーミフィケーション、フレームワーク、非臨床作業療法
…などにアンテナを張っています。

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