作業療法の臨床や現場においても、クリニカルリーズニングを基礎にする必要があります。
今回はこの”作業療法におけるクリニカルリーズニング”について解説します。
クリニカルリーズニングとは?
クリニカルリーズニング(clinical reasoning)とは、
- 臨床の考え方、もしくは臨床の推論
- 臨床実践の根拠
…を言います。
そもそもこの“リーズン(reason)”には、“理由”や“根拠”、“推理”や“理屈”といった意味があります。
つまり、“リーズニング(reasoning)”となると「根拠を持った理由づけ」という意味になります。
“臨床の”という意味であるクリニカル(clinical)と合わせた語として、リハビリテーション医療の現場で使われています。
“reasoning”と“speculation”の違いについて
“resoning”とよくセットで使われる言葉で”speculation”があります。
この”speculation”は日本語では”憶測”と訳されます。
「根拠を持った理由づけ」を意味する”reasoning”とは意味としては大きく異なります。
作業療法は”speculation”が多い?
リハビリテーションの臨床や現場では、クライアントの症状や現象の説明が十分とはいえないケースの評価、治療場面も多いと言えます。
そうなるとどうしても”speculation”寄りの介入になりがちです。
特にこれは生活場面という個人差が大きい要素を対象とする作業療法士に多い傾向とも言えます。
できる限り”speculation”になりすぎない論理的に問題解決への対応力を思考する能力を高めていく必要があります。
作業療法におけるクリニカルリーズニングとは?
作業療法におけるクリニカルリーズニングは…
- 対象者の臨床的イメージをつくりだす思考・認知・問題解決過程であり意思決定過程
- 作業療法士が特定の対象者と接する臨床場面において、作業療法士の判断や行動を導く思考であり、その道筋
…を意味します。
つまり、作業療法士が臨床や現場においてクリニカルリーズニングを行うには…
- クライアントの”訴え”はどのようなものか?
- どんな”症状”があるのか?
- どのような”現象”が起こっているのか?
…といったことから、根拠のある知識や情報をもとに病態を推測し、作業療法士自身が考えたいくつかの仮説を証明するための検査を行う。
そして考え出した結論に最もふさわしい介入を決定していくプロセスになります。
クリニカルリーズニングのプロセスについて
では、実際の作業療法におけるクリニカルリーズニングのプロセスを解説します。
大まかに…ですが、次のようなプロセスを基本としています。
- 観察
- 知識へのリンク
- 仮説
- 介入
- 評価
以下にそれぞれ解説します。
1.観察
作業療法士がそのクライアントを観察することで、どのような点に気づくことができるか?
どのような情報収集が可能か?という点が重要視されます。
2.知識へのリンク
観察で得た情報と自身が持つ知識をリンクさせます。
クライアントの現象や症状と、作業療法士自身が持つ知識(根拠や裏付けのある情報)とをつなぎ合わせる工程です。
3.仮説
それらの情報から、いくつかの仮説を導き出します。
この仮説は決して一つだけではなく、複数であることが理想と言えます。
4.介入
それらの複数の仮説を基に、実際の介入を行います。
この介入は徒手的な介入から、自助具や環境設定と様々なものになります。
5.評価
作業療法士の介入によって、歓迎されるべき変化が見られたら仮説が証明されたと判断し、さらにその介入展開していくことになります。
逆に、仮設とは異なる変化が見られた場合は、その仮説は不適切という判断をし、再度仮説を立案したうえで介入を繰り返していきます。
臨床でのクリニカルリーズニングは同時進行?
実際、臨床や現場で行われるクリニカルリーズニングでは、その思考過程は非常に複雑であり、一つ一つ順番に行われるのではなく、瞬時に並列処理されることが多いとされています。
そのため文章化、言語化することが難しいという指摘もあります。
思考過程を明瞭かし、知識として積み重ねていくためには、その対象となる課題をより細分かして検討していく手続きも必要になってきます。
まとめ
今回は”作業療法におけるクリニカルリーズニング”について解説しました。
多様性に富む生活を支援する作業療法だからこそ、しっかりと根拠に基づいた評価、介入を行う必要があると言えます。
今後はさらにクリニカルリーズニングを基礎にした作業療法の展開が今後さらに求められるようになってくるのでしょうね!