コミュニティーベースドリハビリテーション(CBR) – 定義・目的・実施方法・原則・具体例・CBRとCBIDの違いについて

コミュニティーベースドリハビリテーション(CBR) - 定義・目的・実施方法・原則・具体例・CBRとCBIDの違いについて 用語

コミュニティーベースドリハビリテーション(CBR)は、障害者が地域社会で自立し、社会参加を促進するための包括的な支援アプローチです。
保健、教育、生計、社会、エンパワメントの5分野を通じて、誰もが平等に暮らせる社会を目指します。

本記事ではこのCBRについて解説します。


コミュニティーベースドリハビリテーション(CBR)とは

コミュニティーベースドリハビリテーション(CBR)は、障害者や高齢者が地域社会で自立し、その人らしい生活を送ることを支援する包括的なアプローチです。
この手法は、地域の資源や住民の協力を活用し、障害者自身やその家族、地域住民が主体的に参加することを重視しています。
もともと1980年代にWHOによって開発されたCBRは、途上国の農村地域で障害者とその家族の生活向上を目的とした地域開発戦略として始まりました。
現在では、障害のある人々の生活の質を向上させ、社会参加を促進するためのグローバルな取り組みとして進化し、都市部や発展途上国においても適用されています。

CBRの成功は、地域全体の連携と、障害者が自身の生活や社会活動において主体性を発揮できる環境の整備にかかっています。

CBRは、障害者や高齢者が地域社会で自立した生活を送れるよう、地域資源を活用し、住民や家族が主体的に支援する包括的なアプローチなんだ!
1980年代にWHOによって開発され、当初は途上国の農村地域を対象としていましたが、現在では都市部や世界各地で生活の質向上と社会参加の促進を目的に広く活用されているんですね!

CBRの定義

CBR(コミュニティーベースドリハビリテーション)の定義は以下の通りになります。

  • 障害を持つすべての子どもおよび大人のリハビリテーション
  • 機会均等化
  • 社会統合
  • 地域社会開発の戦略
  • 多様な関係者の協力

それぞれ解説します。

障害を持つすべての子どもおよび大人のリハビリテーション

CBRは、障害を持つ人々がその住む地域社会の中でリハビリテーションを受けることを目的としています。
これは病院や専門施設だけでなく、日常生活の場での支援を重視する点が特徴です。
そのため、地域社会の中で障害者が継続的に必要なケアを受けられる仕組みが求められます。
特に、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の障害者が対象であり、個々のニーズに応じた柔軟な支援が重要です。

CBRは、生活の質の向上と自立の促進を主な目標とし、リハビリテーションの枠組みを地域全体で支える方法論です。

機会均等化

CBRは、障害者が他の人々と同等に社会の機会を享受できるようにする戦略です。
これには、教育や雇用、医療サービスへのアクセスの向上が含まれます。
また、制度や慣習による差別を解消し、物理的・社会的なバリアを取り除くことが重要です。
地域社会における啓発活動や政策提言を通じて、平等な社会の実現を目指します。

障害者が平等な権利を持つ市民として社会に参画できる環境の整備が求められます。

社会統合

CBRは、障害者が社会に統合され、他の人々と共に生活できることを目指します。
これは、障害者が孤立せず、地域社会の一員として受け入れられる環境の創出を意味します。
社会統合は、教育、雇用、文化活動、地域行事など、多岐にわたる分野での参加を促進することが鍵です。
障害者と健常者が互いに理解し合い、共に成長できる地域社会を構築することが目標です。

そのためには、差別や偏見の解消に向けた意識改革が不可欠です。

地域社会開発の戦略

CBRは、地域社会の既存の資源を活用し、障害者を支援する地域開発の一環として実施されます。
これには、医療機関、教育機関、地域組織などが連携することで、包括的な支援を提供する仕組みが含まれます。
地域全体が主体となって障害者のニーズに応えるため、地域のリーダーや住民の協力が重要です。
CBRの目的は、障害者だけでなく、地域全体の発展と福祉の向上にも寄与することです。

持続可能な開発を実現するために、地域ごとの状況に応じた柔軟な対応が求められます。

多様な関係者の協力

CBRは、障害者本人、家族、地域住民、政府、非政府組織など、多様な関係者の協力によって成り立ちます。
それぞれの関係者が役割を理解し、連携して取り組むことが成功の鍵です。
例えば、家族は日常的なケアを提供し、地域住民は障害者を支える環境づくりに貢献します。
政府やNGOは、制度的な支援や資金提供を行い、持続的な活動を支えます。

関係者全員が共通の目標を持ち、協力し合うことで、CBRはより効果的に機能します。

CBRは、地域社会を基盤に、障害を持つ人々が自立した生活を送り、平等に社会参加できる環境を整える包括的なアプローチなんだ!
その実現には、リハビリテーションの提供、機会均等化、社会統合、地域資源の活用、多様な関係者の協力が不可欠なんですね!

CBRの目的

CBRの目的は、障害のある人が、その人が住む地域で、その人らしい生活を送ることができるように支援することです。
より具体的に、以下の目的が挙げられます。

  • 障害者のリハビリテーション
  • 機会の平等化
  • 社会的包摂の促進
  • 貧困の削減
  • エンパワーメント
  • 地域社会の開発
  • 家族支援
  • 保健医療サービスの改善

障害者のリハビリテーション

CBRは、障害を持つ人々の身体的、精神的、社会的機能を回復または向上させることを目的としています。
これには、日常生活動作(ADL)の改善を支援するリハビリテーションプログラムの提供が含まれます。
地域レベルでのリハビリテーションは、病院外での日常生活に即した支援を可能にします。
障害者が自立して生活するためのスキルを向上させることが重要です。

この取り組みを通じて、障害者がその能力を最大限に発揮できる環境が整備されます。

機会の平等化

CBRは、障害者が教育、雇用、社会サービスなどの機会に平等にアクセスできるようにすることを目指します。
障害者の権利を保障し、法的・社会的な差別を解消するための施策が必要です。
バリアフリーな環境の整備や政策提言を通じて、平等な社会の実現を推進します。
また、障害者自身がこれらの機会を活用できるよう、地域社会と連携した支援が不可欠です。

平等な機会は、障害者が社会に積極的に参加するための基盤を提供します。

社会的包摂の促進

CBRは、障害者が地域社会に完全に参加し、非障害者と共に生活できる環境を作ることを重視します。
社会的包摂を実現するためには、障害者と非障害者の相互理解を深めることが重要です。
地域イベントや教育活動を通じて、共存を促進する取り組みが行われます。
障害者が孤立せず、社会の一員として受け入れられる環境を整えることが目標です。

これにより、障害者が自分らしい生活を送りながら社会に貢献できるようになります。

貧困の削減

CBRは、障害者が経済的に自立できるよう支援することを目的としています。
職業訓練や生計手段の確保を通じて、障害者の収入を向上させる取り組みが行われます。
また、雇用機会の提供や地域経済への参加を促進することが重要です。
これらの活動は、障害者とその家族の生活水準を向上させる効果があります。

経済的な安定は、障害者がより自由に生活し、社会に積極的に参加するための土台となります。

エンパワーメント

CBRは、障害者が自分自身の意思決定能力を強化し、自立を促進することを目指します。
自己擁護スキルを向上させるためのトレーニングや教育プログラムが提供されます。
障害者が自分の声を地域社会や政策決定の場で発信できる環境を整えることが重要です。
エンパワーメントは、障害者が自信を持って生活を切り開く力を育む鍵です。

これにより、障害者が自身の生活や社会活動において主体性を発揮できるようになります。

地域社会の開発

CBRは、インクルーシブな社会の実現を目指し、地域全体で障害者を支援する仕組みを構築します。
地域のバリアフリー化を推進し、すべての住民が安全で快適に暮らせる環境を作ります。
また、地域資源を活用し、障害者と非障害者が共に成長する社会を目指します。
これにより、障害者だけでなく、地域全体の福祉と発展が促進されます。

地域社会の持続可能な発展は、CBRの長期的な目標でもあります。

家族支援

CBRは、障害者の家族に対する支援やカウンセリングを提供することで、家庭全体の負担を軽減します。
介護負担を軽くするための具体的なリソースやスキルの提供が重要です。
家族が障害者を支える中で直面する心理的、社会的な問題に対する解決策が必要です。
また、家族が地域社会と連携しやすくなるよう、支援ネットワークの構築も推進されます。

家族の安定は、障害者自身の生活の質にも直結するため、重要な取り組みといえます。

保健医療サービスの改善

CBRは、地域レベルでの基本的な保健医療サービスへのアクセスを向上させることを目指します。
予防や早期発見・早期介入の体制を強化することで、障害の進行を抑えることができます。
また、医療サービスの質を向上させるため、地域住民と専門家の協力が求められます。
地域社会が主体となることで、障害者が必要な医療ケアを身近で受けられる環境が整います。

これらの取り組みは、障害者の健康と生活の質を大幅に向上させる効果があります。

CBRの目的は、障害者が地域社会で自立し、平等に社会参加できる環境を整えることなんだ!
これには、リハビリテーションの提供、機会均等化、社会的包摂の促進、貧困の削減、エンパワーメント、地域社会の開発、家族支援、保健医療サービスの改善が含まれるんですね!

CBRの実施方法

CBRは、地域全体で障害のある人がその人らしい生活を送れるように支援する取り組みです。
その実施方法は、地域や対象者、提供するサービスによって異なりますが、一般的に以下のステップで進められます。

  1. ニーズの把握とアセスメント
  2. 目標設定
  3. 支援計画の作成
  4. サービスの提供
  5. モニタリングと評価
  6. 地域社会との連携
  7. 研究と開発

それぞれ解説します。

ニーズの把握とアセスメント

CBRの最初のステップは、対象者や地域社会のニーズを把握し、アセスメントを行うことです。
具体的には、障害者の障害の種類や程度、生活状況、希望などを詳細に聞き取り、現状を正確に理解します。
同時に、医療機関、福祉施設、ボランティア団体など、地域に存在する資源を調査し、それらをどのように活用できるかを評価します。
このプロセスを通じて、対象者や家族のニーズだけでなく、地域社会全体のニーズも明確にすることが重要です。
ニーズの把握とアセスメントは、以降のステップで効果的な支援を行うための基盤となります。

目標設定

次に、短期目標と長期目標を設定し、支援の方向性を明確にします。
短期目標には、例えば車いすでの移動ができるようになるといった具体的な成果が含まれます。
長期目標は、対象者が地域社会で自立して生活することを目指します。
個々の状況や能力に応じて、実現可能で具体的な目標を設定することが求められます。
目標設定は、支援の成果を測定し、モチベーションを維持するための重要な要素です。

支援計画の作成

目標が設定された後、それに基づいた支援計画を作成します。
多職種連携を活用し、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士など、様々な専門職が協力して計画を立案します。
計画は、対象者のニーズや目標に応じた個別化された内容であり、状況の変化に対応できるよう柔軟に調整可能であるべきです。
計画には、具体的な支援内容、実施のスケジュール、進捗確認の方法が含まれます。
この段階でしっかりとした計画を立てることで、支援の効果を最大化することができます。

サービスの提供

計画に基づき、訪問リハビリテーションや地域活動への参加支援など、具体的なサービスを提供します。
対象者が日常生活動作を改善できるよう、家庭や地域でのリハビリテーションを実施します。
また、就労支援を行い、障害者が自立した生活を送れるよう職業訓練や雇用機会を提供します。
さらに、障害者を介護する家族に対しても、相談支援や一時的な介護の代替サービスを提供することで、負担軽減を図ります。
これらのサービスは、対象者の生活の質を向上させることを目的としています。

モニタリングと評価

支援の実施後は、定期的にその効果を評価し、計画を見直します。
モニタリングには、対象者の状態や目標達成状況を確認するための定量的・定性的な方法が用いられます。
また、対象者や家族の意見を反映しながら、支援の内容を改善していくことが重要です。
これにより、支援が常に適切で効果的であることを確保します。
モニタリングと評価は、CBRの持続可能性を高めるための不可欠なステップです。

地域社会との連携

CBRの成功には、地域社会との連携が不可欠です。
障害者に対する理解を深めるための啓発活動を行い、地域住民の協力を得ることが重要です。
また、地域の資源を最大限に活用し、地域全体で障害者を支える体制を構築します。
例えば、地域行事への参加や地元企業との協力などを通じて、障害者の社会参加を促進します。
地域社会との連携は、インクルーシブな社会を実現するための基盤となります。

研究と開発

最後に、CBRの実施においては、研究と開発が重要な役割を果たします。
最新の研究成果に基づいたエビデンスベースの支援を提供し、サービスの質を向上させます。
また、地域のニーズに応じた新しいサービスを開発することで、CBRの範囲を拡大します。
研究活動を通じて得られたデータや知見は、今後の支援計画や政策立案に役立てられます。
研究と開発は、CBRを継続的に進化させるためのエンジンとして機能します。

CBRの実施は、ニーズの把握、目標設定、支援計画の作成、サービス提供、モニタリングと評価、地域社会との連携、研究と開発という段階を通じて行われるんだ!
これらのプロセスを通じて、対象者の自立支援や地域全体のインクルーシブな社会づくりを目指すんですね!

CBRの主要コンポーネント

CBRは、障害のある人が地域社会で自立した生活を送れるよう支援する取り組みです。
その中で、特に以下の重要な5つの主要コンポーネントが挙げられます。

  • 健康
  • 教育
  • 生計
  • 社会
  • エンパワーメント

それぞれ解説します。

健康

CBRの健康コンポーネントは、障害のある人々が最高水準の健康状態を獲得することを目指します。
身体的健康の維持と回復を重視し、リハビリテーションや健康教育、慢性疾患の管理を通じて支援を行います。
また、精神的健康を維持するために、心理カウンセリングや精神科医療へのアクセス、ストレス管理プログラムを提供します。
さらに、性的健康や生殖に関する健康も重要視され、必要な情報やサービスへのアクセスを保障します。

保健部門との協力を通じて、障害者が医療サービスや支援機器を利用できるインクルーシブな保健環境を整備します。

教育

教育コンポーネントは、障害のある人々が教育を受け、生涯にわたる学習の機会を得られるよう支援します。
基礎教育や職業訓練を提供し、就労に必要なスキルの習得を目指します。
また、興味や関心に応じた学習を支援する生涯学習や、地域社会での活動を通じたインフォーマルな学習の機会を作ります。
幼児教育から高等教育までの教育機会を広げ、ノンフォーマル教育を含めた包括的な学びを提供します。

教育部門と連携し、インクルーシブ教育の実践を進めることで、障害者が可能性を最大限に発揮し、社会に積極的に参加できる環境を整備します。

生計

生計コンポーネントは、障害のある人々の経済的自立と貧困削減を目指します。
就労支援を通じて、対象者の特性や能力に合った仕事を見つけ、雇用機会を提供します。
また、起業を希望する人々に対して、資金調達やビジネススキルの提供を含む起業支援を行います。
収入の安定化を図るために、職業訓練や労働市場へのアクセスをサポートします。

これらの取り組みを通じて、障害者の生活の質の向上と経済的な安定を実現します。

社会

社会コンポーネントは、障害者の社会参加を促進し、インクルージョンを実現することを目指します。
地域のイベントや活動への参加支援を行い、障害者が地域社会とつながりを持てるようにします。
また、友人や家族との関係構築を支援し、対人関係の改善を図ります。
余暇活動を通じて生活の楽しみを提供し、権利擁護活動を通じて障害者の権利を守ります。

これらの活動により、地域社会の意識向上と障壁の除去を進め、障害者の社会的つながりを強化します。

エンパワーメント

エンパワーメントコンポーネントは、障害者が自己決定権を持ち、自らの生活に主体的に関わることを支援します。
対象者が意思決定に参加し、自分の意見を表明できるよう能力を高めます。
また、リーダーシップを育成し、地域社会や障害者団体などで影響力を発揮できるよう支援します。
アドボカシー活動を通じて、障害者の権利を主張し、コミュニティ内での意識向上を図ります。

エンパワーメントは、CBR全体を支える重要な要素であり、障害者が自立した生活を送るための基盤となります。

CBRは、健康、教育、生計、社会、エンパワーメントの5つのコンポーネントを通じて、障害のある人々の生活の質を向上させる包括的な取り組みなんだ!
これらの分野での支援を通じて、障害者の自立と社会参加を促進し、インクルーシブな社会を実現するんですね!

CBRの原則

CBRの原則は、障害者権利条約の原則に基づいており、以下のものがあげられます。

  • 固有の尊厳と個人の自律の尊重
  • 非差別
  • 社会への完全かつ効果的な参加と包摂
  • 障害者の差異の尊重と人間の多様性の一部としての受容
  • 機会の平等
  • アクセシビリティ
  • 男女の平等
  • 障害のある子どもの能力の発達とアイデンティティ保持の権利の尊重
  • 当事者活動
  • 持続可能性

それぞれ解説します。

固有の尊厳と個人の自律の尊重

CBRは、障害のある人々の尊厳と自己決定権を最優先に尊重します。
これは、障害者が自らの生活や意思決定に主体的に関わることを可能にする環境を作ることを意味します。
例えば、医療や教育、日常生活の選択肢について、障害者自身が選択し、意見を述べる権利を保障します。
この原則は、障害者が社会の中で平等な市民として認められる基盤となります。
すべての支援活動は、障害者の意志を尊重し、その声に耳を傾ける姿勢を基本とします。

非差別

CBRの原則には、障害を理由とするいかなる形態の差別も認めないという考えが含まれます。
障害者が社会の中で平等に扱われることを保証するために、法的・社会的な仕組みを整えることが必要です。
また、地域社会での教育や啓発活動を通じて、差別をなくし、障害者への理解を深める取り組みが求められます。
非差別の実現は、障害者が社会参加し、自らの可能性を発揮するための基本的な条件となります。
この原則は、すべての人が平等であるという普遍的な価値観に基づいています。

社会への完全かつ効果的な参加と包摂

CBRは、障害者が社会のあらゆる側面に完全に参加し、包摂されることを目指します。
これには、地域イベント、教育、雇用、文化活動などへの積極的な参加が含まれます。
障害者が孤立せず、地域社会の一員として受け入れられる環境を作ることが重要です。
また、地域住民の意識を高め、障害者との共存を促進する取り組みも不可欠です。
社会への包摂は、障害者が自己実現を達成し、生活の質を向上させる鍵となります。

障害者の差異の尊重と人間の多様性の一部としての受容

CBRでは、障害を個人の特性の一つとして尊重し、人間の多様性の一部として受け入れる姿勢が重要です。
障害者が持つ能力や特性を尊重し、社会全体でその価値を認める文化を育むことを目指します。
また、障害者のニーズや目標に応じた個別化された支援を提供することが求められます。
多様性の尊重は、すべての人がその人らしく生きることを支える社会の基盤となります。
この原則は、障害者と非障害者が相互に学び合い、共に成長できる環境を作るための重要な指針です。

機会の平等

CBRは、教育、雇用、医療、社会サービスなどへの平等なアクセスを確保することを目指します。
障害者が他の人々と同等の機会を得られるよう、法的支援やインフラ整備が必要です。
地域レベルでの支援を通じて、障害者がその可能性を最大限発揮できる環境を整えることが求められます。
また、バリアフリーの推進や啓発活動を通じて、機会の平等を実現するための社会的な基盤を強化します。
機会の平等は、障害者が社会に積極的に参加し、自立した生活を送るための基本条件です。

アクセシビリティ

CBRは、物理的環境、情報、コミュニケーションへのアクセスを保証することを重視します。
具体的には、バリアフリーの建築設計や公共交通機関の利用、情報技術へのアクセスが含まれます。
アクセシビリティの向上により、障害者が社会活動に参加しやすくなることを目指します。
地域住民や専門家が協力して、物理的・社会的な障壁を取り除く取り組みが求められます。
この原則は、障害者が日常生活で直面する課題を軽減し、自立を促進するための鍵となります。

男女の平等

CBRは、障害のある男性と女性が平等な権利と機会を持つことを保証します。
特に、障害のある女性が直面する二重の不平等に対処するための具体的な取り組みが求められます。
また、ジェンダーに基づく差別をなくすための教育や啓発活動が重要です。
この原則を実現することで、障害者全体がより包括的な社会の中で平等に生きることが可能になります。
男女の平等は、CBRが目指すインクルーシブな社会の柱となる概念です。

障害のある子どもの能力の発達とアイデンティティ保持の権利の尊重

CBRは、障害のある子どもがその潜在能力を最大限に発揮できるよう支援します。
教育や療育プログラムを通じて、子どもの成長を促進し、自立への道をサポートします。
また、個性やアイデンティティを尊重し、その子どもらしさを大切にする環境を整えます。
障害のある子どもの権利を保障し、健全な発達を支えることが目標です。
この原則は、障害児が将来社会で活躍できる基盤を築くための重要な視点を提供します。

当事者活動

CBRは、障害者自身が主体的に活動し、意思決定に参加することを促進します。
障害者団体や自助グループへの参加を支援し、地域社会でリーダーシップを発揮できる環境を整えます。
また、当事者の声を政策や支援プログラムに反映させることが重要です。
当事者活動は、障害者が自らの権利を主張し、自立を実現するための原動力となります。
この原則は、障害者が社会変革の主体となることを可能にする重要な枠組みです。

持続可能性

CBRは、長期的に継続可能で効果的なプログラムの実施を重視します。
地域社会の資源を活用し、持続可能な支援体制を構築することが求められます。
また、地域住民や関係者の協力を得ながら、CBRの目標を達成するための仕組みを作ります。
持続可能性は、障害者が将来にわたって支援を受け続けられることを保証するための基盤です。
この原則は、CBRプログラムが一時的なものではなく、長期的に地域社会に根付くことを目指します。

CBRは、これらの10原則に基づいて実施されるんだ!
これらの原則を通じて、障害のある人々が自らの権利を主張し、インクルーシブな社会の中で自立した生活を送ることを目指すんですね!

CBRの具体的な取り組み事例

CBRの具体的な取り組み事例として、日本国内のいくつかの注目すべき事例を紹介します。
ここでは…

  • 特定非営利活動法人 いけま福祉支援センター(沖縄県宮古島市)
  • 社会福祉法人 一麦会 麦の郷(和歌山県和歌山市)
  • 一般社団法人 草の根ささえあいプロジェクト(愛知県名古屋市)
  • 社会福祉法人 こころん(福島県西白河郡泉崎村)
  • 社会福祉法人 JHC板橋会 クラブハウス サン・マリーナ(東京都板橋区)
  • チャイルドデイケア ほわわ(社会福祉法人 むそう)(東京都世田谷区)
  • のわみ相談所(愛知県一宮市)

…について解説します。

特定非営利活動法人 いけま福祉支援センター(沖縄県宮古島市)

いけま福祉支援センターは、過疎化が進む宮古島市池間島で、高齢者向け地域密着型介護サービスを展開しています。
島内の高齢者が持つ伝統的な知恵や技術を活かし、地域活性化に繋がる取り組みを行っています。
また、高齢者自身が主体的に関わるプログラムを導入し、生活の質の向上と地域コミュニティの強化を目指しています。
地域住民が協力し合いながら、高齢化社会の課題に対応する持続可能なモデルを構築しています。
この取り組みは、過疎地における介護サービスの新しい形として注目されています。

社会福祉法人 一麦会 麦の郷(和歌山県和歌山市)

一麦会は、和歌山市において制度を効果的に活用し、福祉の一大拠点を構築しました。
障害者の生活支援や就労支援を包括的に行うことで、多様なニーズに応えています。
特に、福祉サービスと地域社会を結びつける取り組みが特徴的です。
また、利用者一人ひとりに寄り添った個別支援を徹底し、利用者の自立を促進しています。
地域全体で支える福祉のモデルとして、多くの人々に影響を与えています。

一般社団法人 草の根ささえあいプロジェクト(愛知県名古屋市)

草の根ささえあいプロジェクトは、都市部で拠点を持たないネットワークとアウトリーチを活用した支援を行っています。
特に、既存の福祉サービスから漏れている人々に焦点を当てた支援が特徴です。
様々な支援団体を結びつけるネットワークを構築し、孤立した人々の生活を支えています。
地域社会の中での支援が難しい場合でも、フレキシブルな対応を可能にする仕組みを整えています。
この取り組みは、福祉の新しい形として注目を集めています。

社会福祉法人 こころん(福島県西白河郡泉崎村)

こころんは、農業を通じて精神障害のある人々に生活、就労、相談支援を提供しています。
農業活動を支援の中心に据え、利用者が自信と達成感を得られる環境を作っています。
また、ビジネスの視点を取り入れ、持続可能な支援体制を構築している点が特徴です。
地域と連携し、農業を通じた障害者支援の新しいモデルを提示しています。
この取り組みは、精神障害者の社会復帰を目指す実践例として評価されています。

社会福祉法人 JHC板橋会 クラブハウス サン・マリーナ(東京都板橋区)

クラブハウス サン・マリーナは、クラブハウス運動の理念に基づき、利用者と支援者が同等な立場で情報を共有しています。
利用者が主体的に活動できる環境を整え、自己決定権を尊重する取り組みを行っています。
また、日常生活や就労に関する支援を通じて、利用者の社会参加を促進しています。
利用者とスタッフの共同作業を通じて、支援の質を高め、コミュニティの一体感を強化しています。
この取り組みは、利用者のエンパワーメントを重視した支援モデルとして注目されています。

チャイルドデイケア ほわわ(社会福祉法人 むそう)(東京都世田谷区)

チャイルドデイケア ほわわは、医療的ケアを必要とする0歳から6歳の子どもたちを対象に、地域生活支援を提供しています。
医療・看護・福祉が連携し、子どもとその家族が安心して生活できる環境を整えています。
特に、医療的ケアが必要な子どもへの包括的な支援を実現している点が特徴です。
また、子どもたちが成長し、社会で活躍できるよう長期的な視点でサポートを行っています。
地域社会との連携を強化し、インクルーシブな教育環境の実現を目指しています。

のわみ相談所(愛知県一宮市)

のわみ相談所は、ホームレスを含む様々な人々を対象に支援活動を行っています。
当事者が主体的に学べる学習会を開催し、生活保護に頼らない自立を目指す取り組みを行っています。
地域の支援団体やボランティアと連携し、多角的な支援を提供しています。
また、当事者の声を重視し、個々のニーズに応じた柔軟な対応を行っています。
この取り組みは、社会的弱者が自立した生活を送れるよう支援する先進的なモデルです。

これらの事例は、CBRの原則に基づき、地域の特性や課題に応じた独自のアプローチで、障害者や高齢者、孤立した人々のエンパワメントと社会包摂を同時に進める「ツイントラックアプローチ」を実践しているんだ!
これにより、地域社会全体の発展を目指すCBID(コミュニティーベースドインクルーシブデベロップメント)の実例として評価されているんですね!

CBRとCBIDの違い

2010年に発表されたCBRガイドラインでは、CBRの目的がCBID(Community-based Inclusive Development)であるとされました。
このCBRとCBIDとの違いについて、ここでは…

  • 対象の範囲
  • アプローチの焦点
  • 権利ベースの強調
  • コミュニティ全体の変革
  • 横断的アプローチ

…について解説します。

対象の範囲

CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)は、主に障害のある人々とその家族を対象として支援を提供するアプローチでした。
一方、CBID(地域に根ざしたインクルーシブ開発)は、障害のある人々だけでなく、性別、年齢、民族、性的指向などの違いを持つすべての人々を対象にしています。
CBIDは、障害に限らず、社会の中で脆弱な立場に置かれがちなすべての人々を包摂することを目指しています。
そのため、CBIDは、障害の有無に関わらず、全ての人が社会に参加し、その能力を発揮できる環境を整えることを重視します。

この移行は、支援の範囲が個別のリハビリテーションから社会全体のインクルージョンへと広がったことを示しています。

アプローチの焦点

CBRは、障害のある個人の身体的・社会的な機能を回復し、生活の質を向上させることを主な目標としていました。
対照的に、CBIDは、個人の支援に加え、社会全体を包括的で包摂的なものに変革することを目指しています。
具体的には、社会的なバリアの解消や、すべての人が平等に機会を享受できる環境の構築が重点となります。
CBIDでは、社会全体が障害者を支援するだけでなく、障害者自身が社会を変革する主体となることが求められます。

このシフトにより、障害者の自立だけでなく、全ての人々が共生できる社会の実現が目標となります。

権利ベースの強調

CBRは、リハビリテーションと機会均等化を重視していましたが、権利の明確な強調は必ずしも中心的ではありませんでした。
一方、CBIDは、2006年に採択された障害者権利条約の影響を受け、権利ベースのアプローチを明確にしています。
これは、障害者が持つ基本的人権を尊重し、差別のない社会の実現を目指すものです。
CBIDは、障害者の尊厳、平等、自己決定権を保障し、権利を主張できる社会を作ることを重要視します。

この変化は、障害者を支援の対象ではなく、権利を持つ主体として位置づける視点の転換を意味します。

コミュニティ全体の変革

CBRは、主に障害者とその家族の生活改善に焦点を当てていましたが、CBIDはコミュニティ全体の変革を目指します。
具体的には、地域社会が障害者を含むすべての人々にとってインクルーシブな環境となるよう、意識改革や制度改善を進めます。
CBIDは、地域社会全体が障害者を受け入れ、共に成長できる仕組みを作ることを強調しています。
また、CBIDは、物理的なバリアフリーだけでなく、情報やコミュニケーションのバリアフリーにも取り組みます。

このアプローチは、地域全体が変わることで、障害者の生活の質が向上するだけでなく、すべての人が暮らしやすい社会を目指します。

横断的アプローチ

CBRは、リハビリテーションを中心に据え、保健や福祉といった特定の分野での支援を行っていました。
一方、CBIDは、保健、教育、生計、社会、エンパワメントなど、複数の分野にまたがる包括的なアプローチを採用しています。
この横断的なアプローチにより、個人の多面的なニーズに対応し、持続可能な支援を実現します。
例えば、障害者の健康管理だけでなく、教育の機会や経済的自立、社会参加を包括的に支援する仕組みを構築します。

この変化は、障害者支援が単一の分野に留まらず、社会全体を巻き込んだ包括的な取り組みへと進化したことを示しています。

CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)は、障害者のリハビリや生活向上を目的としていましたが、CBID(地域に根ざしたインクルーシブ開発)は、社会全体を包括的で包摂的なものに変革することを目指すんだ!
CBIDは、権利ベースのアプローチや横断的な支援を重視し、すべての人が平等に社会参加できる持続可能な社会の実現を目標としているんですね!

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