日常生活用具給付制度と補装具支給制度の違い【行政の補助制度についてです】

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福祉用具や補装具が必要な場合、どうしてもネックになってくるのが「コスト」の問題です。
クライアントへのコストの負担を軽減するため、積極的に行政の補助制度を使いたくても、どれがどの対象なのかがさっぱり…なんてことありませんか?

今回は複雑な日常生活用具給付制度と補装具給付制度の違いについて解説します。

日常生活用具給付制度について

日常生活用具の定義とは?

「日常生活用具」についての定義ですが、厚生労働省によって次のように定められています。

日常生活用具の要件として次の3項目を全て満たすもの。
安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの
日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、社会参加を促進すると認められるもの
用具の製作、改良又は開発に当たって障害に関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般に普及していないもの

日常生活用具の用途及び形状として次の項目にあたるもの
介護・訓練支援用具
特殊寝台、特殊マットその他の障害者等の身体介護を支援する用具並びに障害児が訓練に用いるいす等のうち、障害者等及び介助者が容易に使用できるものであって、実用性のあるもの

自立生活支援用具
入浴補助用具、聴覚障害者用屋内信号装置その他の障害者等の入浴、食事、移動等の自立生活を支援する用具のうち、障害者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるもの

在宅療養等支援用具
電気式たん吸引器、盲人用体温計その他の障害者等の在宅療養等を支援する用具のうち、障害者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるもの

情報・意思疎通支援用具
点字器、人工喉頭その他の障害者等の情報収集、情報伝達、意思疎通等を支援する用具のうち、障害者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるもの

排泄管理支援用具
ストーマ装具その他の障害者等の排泄管理を支援する用具及び衛生用品のうち、障害者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるもの

居宅生活動作補助用具
障害者等の居宅生活動作等を円滑にする用具であって、設置に小規模な住宅改修を伴うもの
参考:厚生労働省

日常生活用具の参考例

6つのカテゴリーに分けられる“日常生活用具”ですが、具体的な例としては以下の通りになります。

種目 対象者
介護・訓練
支援用具
特殊寝台 下肢又は体幹機能障害
特殊マット
特殊尿器
入浴担架
体位変換器
移動用リフト
訓練いす(児のみ)
訓練用ベッド(児のみ)
自立生活
支援用具
入浴補助用具 下肢又は体幹機能障害
便器
頭部保護帽 平衡機能又は下肢もしくは体幹機能障害
T字状・棒状のつえ
歩行支援用具→移動・移乗支援用具(名称変更)
特殊便器 上肢障害
火災警報機 障害種別に関わらず火災発生の感知・避難が困難
自動消火器
電磁調理器 視覚障害
歩行時間延長信号機用小型送信機
聴覚障害者用屋内信号装置 聴覚障害
在宅療養等
支援用具
透析液加温器 腎臓機能障害等
ネブライザー(吸入器) 呼吸器機能障害等
電気式たん吸引器 呼吸器機能障害等
酸素ボンベ運搬車 在宅酸素療法者
盲人用体温計 (音声式) 視覚障害
盲人用体重計
情報・意思
疎通支援
用具
携帯用会話補助装置 音声言語機能障害
情報・通信支援用具※ 上肢機能障害又は視覚障害
点字ディスプレイ 盲ろう、視覚障害
点字器 視覚障害
点字タイプライター
視覚障害者用ポータブルレコーダー
視覚障害者用活字文書読上げ装置
視覚障害者用拡大読書器
盲人用時計
聴覚障害者用通信装置 聴覚障害
聴覚障害者用情報受信装置
人工喉頭 喉頭摘出者
福祉電話(貸与) 聴覚障害又は外出困難
ファックス(貸与) 聴覚又は音声機能若しくは言語機能障害で、電話では意思疎通困難
視覚障害者用ワードプロセッサー(共同利用) 視覚障害
点字図書
排泄管理
支援用具
ストーマ装具(ストーマ用品、洗腸用具)
紙おむつ等(紙おむつ、サラシ・ガーゼ等衛生用品)
収尿器
ストーマ造設者
高度の排便機能障害者、脳原性運動機能障害かつ意思表示困難者
高度の排尿機能障害者
居宅生活動作
補助用具
住宅改修費 下肢、体幹機能障害又は乳幼児期非進行性脳病変

※ 情報・通信支援用具とは、障害者向けのパーソナルコンピュータ周辺機器や、アプリケーションソフトをいう。

引用:厚生労働省

実施主体

日常生活用具給付制度の実施主体は市町村になります。

支給の仕組み

市町村長に申請し、市町村による決定後に受けることができます。

費用の自己負担

障害者自立支援法の施行にって、利用者の1割負担が原則となっています。
*各項目には上限金額があるため、その上限を超えたぶんはすべて利用者の自己負担になってしまいます。

給付には障害者手帳が必要

日常生活用具給付制度を利用するには障害者手帳が必要です。
いくら障害があってもそれを証明するものがないと給付を受けるのが難しくなってしまいます。

補装具支給制度について

補装具の定義とは?

「補装具」についての定義ですが、障害者自立支援法によっては以下のように定められています。

補装具とは、「障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、長期間に渡り継続して使用されるものその他の厚生労働省令で定める基準に該当するものとして、義肢、装具、車いすその他の厚生労働大臣が定めるもの」
引用:障害者自立支援法第5条第19項

身体機能を補完し、又は代替し、かつその身体への適合を図るように製作されたものであること。
身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のために、同一の製品につき長期間に渡り継続して使用されるものであること。
専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。

補装具の参考例

種目 名称 H25
購入基準
耐用
年数
義肢 (注1,2) 354,000 1~5
装具 (注1,2) 84,000 1~3
座位保持装置 (注1) 326,000 3





普通用 グラスファイバー 3,550 2
木材 1,650
軽金属 2,200 5
携帯用 グラスファイバー 4,400 2
木材 3,700
軽金属 3,550 4
身体支持併用 3,800 4

普通義眼 17,000 2
特殊義眼 60,000
コンタクト義眼 60,000

矯正眼鏡 6D未満 17,600 4
6D以上10D未満 20,200
10D以上20D未満 24,000
20D以上 24,000
遮光眼鏡 前掛式 21,500
6D未満 30,000
6D以上10D未満 30,000
10D以上20D未満 30,000
20D以上 30,000
コンタクトレンズ 15,400
弱視眼鏡 掛けめがね式 36,700
焦点調整式 17,900


高度難聴用ポケット型 34,200 5
高度難聴用耳かけ型 43,900
重度難聴用ポケット型 55,800
重度難聴用耳かけ型 67,300
耳あな型(レディ) 87,000
耳あな型(オーダー) 137,000
骨導式ポケット型 70,100
骨導式眼鏡型 120,000


普通型 100,000 6
リクライニング式普通型 120,000
ティルト式普通型 148,000
リクライニング・ティルト式普通型 173,000
手動リフト式普通型 232,000
前方大車輪型 100,000
リクライニング式前方大車輪型 120,000
片手駆動型 117,000
リクライニング式片手駆動型 133,600
レバー駆動型 160,500
手押し型A 82,700
手押し型B 81,000
リクライニング式手押し型 114,000
ティルト式手押し型 128,000
リクライニング・ティルト式手押し型 153,000

種目 名称 H25
購入基準
耐用
年数




普通型(4.5km/h) 314,000 6
普通型(6.0km/h) 329,000
簡易型 切替式 157,500
アシスト式 212,500
リクライニング式普通型 343,500
電動リクライニング式普通型 440,000
電動リフト式普通型 701,400
電動ティルト式普通型 580,000
電動リクライニング・ティルト式普通型 982,000
座位保持いす(児のみ) 24,300 3
起立保持具(児のみ) 27,400 3


六輪型 63,100 5
四輪型(腰掛付) 39,600
四輪型(腰掛なし) 39,600
三輪型 34,000
二輪型 27,000
固定型 22,000
交互型 30,000
頭部保持具(児のみ) 7,100 3
排便補助具(児のみ) 10,000 2








木材 A 普通 3,300 2
B 伸縮 3,300
軽金属 A 普通 4,000 4
B 伸縮 4,500
カナディアン・クラッチ 8,000
ロフストランド・クラッチ 8,000
多点杖 6,600
プラットフォーム杖 24,000
意重
思度
伝障
達害
装者
置用
文字等走査入力方式 5
  簡易なもの 143,000
簡易な環境制御機能が付加されたもの 450,000
高度な環境制御機能が付加されたもの 450,000
通信機能が付加されたもの 450,000
生体現象方式 450,000

(注1)義肢・装具・座位保持装置の基準額については、平成23年度交付実績(購入金額)1件当たり平均単価を記載。(千円未満は四捨五入。平成23年度社会福祉行政業務報告より。)

(注2)義肢・装具の耐用年数について、18歳未満の児童の場合は、成長に合わせて4ヶ月~1年6ヶ月の使用年数となっている。

引用:厚生労働省

実施主体

補装具支給制度の実施主体は市町村になります。

支給の仕組み

市町村長に申請し、身体障害者更生相談所等の判断または意見に基づく市町村の決定により補装具費の支給を受けることができます。

費用の自己負担

原則は1割負担です。
ただ世帯の所得に応じて次のような負担上限月額を設定しています。

生活保護 生活保護世帯に属する者 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般 市町村民税課税世帯 37,200円


*ただし、障害者本人または世帯員のいずれかが一定所得以上の場合(本人又は世帯員のうち市町村民税所得割の最多納税者の納税額が46万円以上の場合)には補装具費の支給対象外とする。
参考:厚生労働省

補足説明

日常生活給付制度も補装具制度も厚労省が提示している分類表をみても、いまひとつその線引きが理解しにくいかと思います。
現場では「この機器はどっちの制度が使えるんだっけ?」なんて迷ってしまう時が多くあります。
複雑だったり、勘違いしやすい項目や対象については備忘録代わりに以下にまとめておきます。

重度障害者意思伝達装置は補装具に分類

2006年(平成18年)10月から「伝の心」「ANAVI-10」といった重度障害者意思伝達装置は日常生活用具から補装具に移行されました。
その結果、補装具支給制度を受けるには市町村への申請だけではなく、車いすの申請時と同じように障害者更生相談所における判定が必要となりました。
実はこの判定を受けるためには、補装具を使用する本人が(入院中であっても)障害者更生相談所へ行かなくてはならないし、経験上1~2時間は判定の手続きに時間がかかります。
重度障害者意思伝達装置が必要なケースは、ほとんどの場合移動が困難、耐久性も低いような状態にあります。

これはそのクライアントにとってはかなりの負担になります(泣)

代替キーボードは日常生活用具に分類

厚生労働省の“日常生活用具参考例”の資料には、情報・意思疎通支援用具のカテゴリーに「情報・通信支援用具」が含まれています。
この情報・通信支援用具は障害者向けのパーソナルコンピュータ周辺機器や、アプリケーションソフトを指していますから、上肢機能障害の方にとって有益な代替キーボードは日常生活用具として扱われる、と解釈してよいのかと思います。

ファックス、テレビ電話、福祉電話は日常生活用具に分類

始めのうちは聴覚に障害がある方にとっての有益な連絡手段ということでファックスは日常生活用具として扱われ、貸与の対象でした。
その後テレビ電話の機能が発展してきて、要望も増えたことからも徐々にテレビ電話も日常生活用具の対象として扱われるようになったようです。
また、ファックスやテレビ電話だけでなく、NTTがレンタルしている福祉電話も対象となっています。

日常生活用具給付制度の給付と貸与の違いって?

ちなみに日常生活用具給付制度には「給付」と「貸与」があります。
実は、厚生労働省の“日常生活用具参考例”の資料をみるとこの「貸与」の対象は「福祉電話」と「ファックス」のみとなっているので注意が必要です。

まとめ

今回は日常生活用具給付制度と補装具給付制度の違いについて解説しました。
障害を持つ人にとって福祉用具や補装具は日常生活を送りやすくするうえでも必要不可欠なものです。
手に入れるためにも高額なものも多いので自己負担を軽減するためにも行政の制度を利用する必要があります。

「制度のことは分からないからMSWやケアマネに丸投げ」するのではなく、一緒に検討できる程度の知識と興味は持っておく必要があると言えます。

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