高次脳機能障害の臨床で間違えやすい”身体失認”と”病態失認”。
本記事ではこの2つの違いについて解説します。
身体失認とは
まず身体失認(somatoparaphrenia)についてですが…
- 定義と特徴
- 原因と関与する脳領域
- 症状
…について簡単に解説します。
定義と特徴
身体失認(Somatoparaphrenia)とは、脳の損傷や疾患により生じる症状で、患者が自分の身体の一部または全体を正しく認識できないか、誤った認識を持つ状態です。
片側身体失認(hemiasomatognosia)と両側身体失認(bilateral asomatognosia)に分類されます。
原因と関与する脳領域
通常、身体失認は右半球の損傷によって引き起こされます。
右半球は左半身の身体意識を支えるため、右半球の損傷によって左半身の身体失認が生じることがあります。
症状
頻繁に見られる症状としては次の通りになります。
- 半身無視: 患者は左右の半身のうち一方を無視することがあり、その半身の存在を認識できない
- 身体の他者化: 自分の身体の一部を他人のものだと認識することがある
- 否認: 麻痺や感覚障害があるにもかかわらず、それを否認することがある
病態失認とは
また病態失認(Bodily-Integrity Neglect)についても…
- 定義と特徴
- 原因と関与する脳領域
- 症状
…について簡単に解説します。
定義と特徴
病態失認(Bodily-Integrity Neglect)は脳の障害によって引き起こされる症状で、自分自身や自分の身体の一部を認識できない状態です。
患者は麻痺や視覚障害を否認し、自分の身体の一部が存在しないと思い込んだり、他人の身体の一部と勘違いしたりすることがあります。
原因と関与する脳領域
病態失認は、脳の特定の領域の損傷や機能不全によって引き起こされます。
一般的には、右脳半球の損傷が関与していることが多いとされます。
症状
症状については以下の通りになります。
- 片側の麻痺や視覚障害の否認: 患者は片側の麻痺や視覚障害があるにもかかわらず、その症状を否認することがある
- 自己身体の否認: 自分の身体の一部が存在しないと思い込むことがある
- 他者身体の勘違い: 他人の身体の一部と勘違いすることがある
身体失認と病態失認との違い
では本題の身体失認と病態失認の違いはどのような点になるのでしょうか?
上記のそれぞれの特徴からまとめてしまえば…
身体失認は自己の身体に対する認知障害
病態失認は障害の存在に対する認識の欠如、または存在する障害への病識の欠如
…になるかと思います。
身体失認はあくまで病態失認のなかの一つの症状…ってイメージかな?
身体失認は自分の身体のイメージに特化した認知障害なんでしょうね!