災害リハビリテーションは、災害時に被災者が心身の健康を回復し、自立した生活を取り戻すための専門的支援活動です。
これにより、生活不活発や災害関連死を防ぎ、地域の復興を支えます。
本記事ではこの理学療法士や作業療法士における災害リハビリテーションについて解説します。
災害リハビリテーションとは
災害リハビリテーションとは、地震や台風などの災害時に、被災者の生活不活発や災害関連死を防ぐため、リハビリテーション専門職が組織的に支援を行う活動です。
特に高齢者や障害のある方など、要配慮者が安心して自立生活を再建できるよう、身体機能や生活能力の低下を予防するリハビリテーション支援を提供します。
活動内容には、避難所での生活環境の評価や整備、リハビリテーショントリアージ、健康支援が含まれ、多職種が連携して支援を行います。
災害リハビリテーションの目的
災害リハビリテーション（災害リハ）の目的は、大きく分けて以下の3つに集約されます。
- 被災者の早期自立生活の回復
- 災害関連死の予防
- 地域社会の復興
それぞれ解説します。
被災者の早期自立生活の回復
災害リハビリテーションの目的の一つは、被災者が早期に自立した生活を取り戻すことです。
災害によって生活環境が一変し、日常生活動作が困難になることがありますが、リハビリテーション専門職は、食事や着替え、移動などの日常生活動作の能力を回復させる支援を行います。
この支援により、被災者はできるだけ早く日常生活に戻ることができ、自立した生活を送ることが可能になります。
また、地域社会への再参加を促進し、被災者が孤立しないようサポートすることも重要な役割です。
これにより、精神的な健康も回復し、被災者が新たな生活を築くための基盤が整えられます。
災害関連死の予防
災害リハビリテーションは、災害関連死の予防を重要な目標としています。
被災後、身体機能の低下や合併症のリスクが高まるため、運動指導や適切な環境整備を通じて身体機能を維持・向上させることが求められます。
特に、高齢者や要配慮者においては、転倒や骨折といった事故のリスクが増加するため、安全な環境づくりや福祉用具の提供が欠かせません。
これにより、事故の発生を防ぎ、被災者が安全に生活できる環境が確保されます。
結果として、災害関連死を減少させることが可能となり、被災者の命を守る大切な役割を果たします。
地域社会の復興
災害リハビリテーションのもう一つの重要な目的は、地域社会の復興支援です。
災害発生時には、地域全体が被害を受け、リハビリテーションが必要な人々も増加します。
そのため、迅速かつ効果的なリハビリテーションを提供できるよう、地域のリハビリテーションシステムを構築することが必要です。
このシステムの整備により、被災地でのリハビリテーションが円滑に進み、被災者が早期に回復する助けとなります。
また、地域住民同士の交流を促進し、コミュニティの再生を支援することで、地域全体の復興に寄与します。
地域社会が再生されることで、住民が安心して生活を再建できる環境が整います。
災害リハビリテーションで行われる活動
災害リハビリテーションでは、被災者の身体的・精神的な回復を早め、自立した生活を取り戻せるよう、様々な支援が行われます。
具体的には、以下の様な活動が実施されます。
- 身体機能の回復と維持
- 心理面の支援
- 環境整備
- 地域社会への復帰支援
それぞれ解説します。
身体機能の回復と維持
災害リハビリテーションでは、被災者の身体機能を回復・維持することが重要です。
避難所内で行える簡単な運動やストレッチを指導し、筋力低下や関節拘縮を防ぐ運動指導が行われます。
また、杖や歩行器などの補助具を使った歩行訓練により、移動能力の回復を目指します。
日常生活動作（ADL）の訓練も実施され、食事、着替え、入浴などの基本的な生活活動を支援し、自立した生活への復帰を助けます。
さらに、リハビリテーショントリアージを通じて、被災者の身体機能や生活能力を評価し、支援の優先度を決定することが行われます。
心理面の支援
災害による心理的な負担を軽減するための支援も、災害リハビリテーションの重要な活動です。
ストレスや不安、心的外傷後ストレス障害（PTSD）などに対して、専門的なカウンセリングが提供されます。
また、グループワークを通じて、他の被災者と交流し共感を得る場を設け、心理的なサポートを強化します。
リラックス法や呼吸法などのストレスマネジメント技法を指導し、心の安定を図る取り組みも行われます。
これにより、被災者の心理的な健康を支え、日常生活に戻る力を養います。
環境整備
被災者が避難所で安心して過ごせるよう、環境整備も災害リハビリテーションの一環として行われます。
車いす使用者や高齢者が安全に移動できるよう、避難所のバリアフリー化が進められます。
さらに、必要な福祉用具の提供や、運動やADL訓練を行える機能訓練スペースの設置など、リハビリテーションに適した環境づくりが行われます。
簡易ベッドや手すりの設置など、避難所環境の整備も含まれ、被災者の安全と快適さを確保することを目指します。
これにより、被災者のリハビリテーション活動が効果的に行える環境が整います。
地域社会への復帰支援
災害リハビリテーションは、被災者の地域社会への復帰を支援する役割も担っています。
地域の医療機関や福祉施設と連携し、必要なサービスを提供することで、被災者が適切な支援を受けられる体制を整えます。
また、ボランティア活動を促進し、被災者が地域社会に参加する機会を増やす取り組みも行われます。
自宅に戻った後も、バリアフリー化などの住環境改善を支援し、生活の質を向上させます。
セルフケア支援として、食事、清潔、排泄、移動などの基本的な日常生活動作をサポートし、被災者が自立した生活を再開できるよう支援します。