エラーレスラーニングとは?【 失敗を繰り返さずに行動化する方法です】

用語

失敗ってだれでもしたくありませんよね。
でもいろいろチャレンジし試行錯誤して「失敗から学ぶ」という意見もわかります。
どちらも正しいですが…これ、対象を間違えると逆効果なんです。

物事を教える方法の一つに“エラーレスラーニング”という方法があります。
リハビリの現場だけでなく、教育現場や企業の研修、新人指導などにも用いられるテクニックです。
端的に言っちゃえば「失敗しないように教える」ってことになります。

そこで今回はこの「エラーレスラーニング」について解説します。

エラーレスラーニングとは?

そもそも、エラーレスラーニングとは、

対象者に間違いや誤りを多くさせずに行動を習得させること

…を言います。

このエラーレスラーニングは行動の前後を分析することでその行動の目的を明らかにし、前後の環境を操作して問題行動を解消する分析方法である応用行動分析学という学問の基本的なスタンスでもあります。
ちなみにエラーレスラーニングと同義語として、“無誤学習”や“誤りなし学習”があります。

エラーレスラーニングの原則

エラーレスラーニングの原則…とも言われることは次のとおりになります。

  • なくしたい行動は起こさせない
  • 出来ている一歩前のステップから支援を始める
  • 指導する環境を注意深く整えること

以下に詳しく解説します。

なくしたい行動は起こさせない

エラーレスラーニングの原則の一つとしては、「なくしたい行動は起こさせない」ということです。
つまり、その行動においてできる限り失敗やミスをさせないような指導、教え方をするということになります。

出来ている一歩前のステップから支援を始める

ミスや失敗をさせないとは言っても、1から10まで全てを指導する側が行ってしまうということではありません。
あくまでも対象者が「できている一歩前のステップから支援を始める」ということが原則になります。

指導する環境を注意深く整えること

エラーレスラーニングには、対象者がミスや失敗をしにくい段階まで準備や環境設定をする必要があります。
これに関しては「どの程度まで指導する側が整えればよいのか?」という疑問が生まれますが、あくまでも対象者の「できるorできない」の瀬戸際…という表現になってしまいます。

この程度の調整によってその行動の課題の難易度を変えることもできますので、対象者の能力や判断力、またその課題に対しての分析が必要になります。

対象

このエラーレスラーニングの対象についてですが、リハビリテーションや就労支援の現場では…

  • 発達障害
  • 認知症
  • 高次脳機能障害
  • うつ病
  • 前頭葉機能障害

…といった疾患や障害を抱えている方が主な対象になります。

ただ、上述したようにエラーレスラーニングは何もリハビリテーションや就労支援に限った手法ではありません。
教育現場や企業の研修といった様々な場面で用いられます。

例えば…

  • 自尊心が低い
  • 成功体験が少ない
  • 応用的な行動が困難
  • 記憶力が低下している

…こんな対象者があげられます。

学生でも社会人でも、こういう傾向、性格の方って多いかと思います。
そう考えると、エラーレスラーニングは非常に対象範囲が広いことがわかります。

エラーレスラーニングの方法

では、実際にエラーレスラーニングを行うにはどのような方法を用いるのでしょうか?
結論から言ってしまえばな、次の2つの型があります。

  • 手助けフェーディング型
  • スモールステップ型

以下に詳しく解説します。

手助けフェーディング型

エラーレスラーニングの“手助けフェーディング型”は、最初に十分なヒントを与えた上で成功体験を積ませ、少しずつそのヒントを減らしていく手法です。
「フェーディング」とは“(徐々に)減らしていく”という意味になります。

例えば…

課題:ジャンパーのジッパーをあげる

  • 初めは手を添えて一緒にジッパーをあげる
  • 2回目はジッパーをあげる見本を見せる
  • 3回目は指差しやジェスチャーなどを加えて説明する
  • 4回目は口頭のみで指示、説明する
  • 最終的に自分ひとりで行わせるようにする
  • …というイメージです。

    つまり、フェーディングの大まかなステップとしては、

    1. 手助けをする
    2. 見本を見せる
    3. ジェスチャーのみ行う
    4. 言語指示のみ行う

    …となります。

    また、重要なのは各ステップで達成できたら必ず“褒める”といった“強化”を行うことです。

    スモールステップ型

    エラーレスラーニングのもう一つの手法である“スモールステップ型”は、最初は対象者が達成可能な課題を設定し、徐々にその難易度をあげていくという手法になります。

    例えば、

    課題:ジグソーパズル(100ピース)

  • 初めは最後の3ピースのみはめさせる
  • 2回目は最後の10ピースのみはめさせる
  • 3回目は20ピースのみ
  • 4回目は40ピース
  • 最終的に初めから一人で行わせるようにする
  • …こういったイメージになります。

    あくまでわかりやすく“ジグソーパズル”で例えましたが、「徐々に難易度を上げていく」という原則が重要かと思います。
    もちろん、スモールステップ型でも同様に、各段階で達成できたら褒めるなどの“強化”を行います。
    また、スモールステップ型は“ベイビーステップ型”とも呼ばれる場合があります。

    まとめ

    今回は、間違いや誤りを多くせずに学習を習得していく「エラーレスラーニング」についての解説しました。

    ミスをしないように、小さなステップを積み重ねていく…というイメージの方法ですね。
    でも、このエラーレスラーニングに対しては、必ずと言っていいほど…

    「失敗するのも経験ではないの?」

    …という意見が付きまとうんです。

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