小指伸筋は、手の複雑な動きを可能にする筋肉であり、主に小指の伸展を担当します。
この筋肉は独自の機能と重要性を持ち、日常生活や細かい作業に不可欠です。
本記事ではこの小指伸筋について解説します。
小指伸筋の起始・停止
起始 | 上腕骨の外側上顆(総伸筋腱) |
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停止 | 第5指指背腱膜 |
小指伸筋(extensor digiti minimi)の解剖学的構造についてここでは…
- 起始
- 筋肉の経路と分化
- 腱とその経路
- 停止
…について解説します。
起始
小指伸筋は上腕骨の外側上顆から起始します。
この筋肉は共通伸筋腱を介して他のいくつかの前腕の伸筋とつながっています。
特に、指伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋と共有します。
筋肉の上部は他の指伸筋の線維と融合していて、区別が難しい場合があります。
筋肉の経路と分化
前腕のほぼ中央で、小指伸筋の線維は他の指伸筋から明確に分離し、独立した筋肉として認識されます。
これは指伸筋の内側に位置します。
腱とその経路
前腕の下半分で、筋肉は腱に変化し、伸筋支帯の深部を通って続きます。
この腱は下橈尺関節の後側を横切り、手首の第5伸筋区画を形成します。
手の背側に入ると、腱は2つのスリップ(分岐)に分かれ、5番目の指(小指)へと向かいます。
停止
腱は最終的に小指の伸筋拡張部に停止します。
伸筋拡張部は指の背面にある腱膜シートで、指の伸びを助ける重要な構造です。
側方スリップは指伸筋のいくつかの腱線維と融合しますが、最終的には小指の伸筋拡張部に結びつきます。
小指伸筋の神経支配
神経支配 | 後骨間神経(C7、C8) |
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小指伸筋(extensor digiti minimi)の神経支配について説明します。
この筋肉は橈骨神経の深部枝である後骨間神経によって神経支配されています。
ここでの「深部枝」とは、神経が更に細かく分岐して特定の筋肉に向かう枝を指します。
後骨間神経は、主にC7およびC8の神経根から成り立っています。
ここではもう少し詳しく…
- 橈骨神経の起源と分岐
- 後骨間神経の役割
- 臨床的意義
…について解説します。
橈骨神経の起源と分岐
橈骨神経は、腕神経叢(brachial plexus)の一部であり、腕神経叢は首の側面から出て上肢に向かう一群の神経です。
腕神経叢自体は、頸椎(C5からT1までの椎骨)の前根から成り立っており、これらが結合していくつかの主要な枝を形成します。
橈骨神経は腕神経叢の後索(posterior cord)から発生し、主に肩や腕、前腕の筋肉へ信号を送ります。
後骨間神経の役割
橈骨神経は前腕の筋肉に向かう途中で、深部枝として後骨間神経が分岐します。
この後骨間神経は前腕の筋肉、特に伸筋群の一部を神経支配します。
小指伸筋はその中の一つで、この神経の支配によって小指を伸ばす動きを制御します。
臨床的意義
橈骨神経またはその枝の障害は、特定の筋肉群の機能障害を引き起こす可能性があります。
例えば、橈骨神経障害は、手首や指の伸展力の低下(ドロップ手など)につながることがあります。
特に小指伸筋が影響を受けると、小指の伸展に困難をきたす可能性があります。
小指伸筋の血液供給
血液供給 | 橈骨動脈、尺骨動脈 |
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小指伸筋(extensor digiti minimi)への血液供給は…
- 橈骨動脈
- 尺骨動脈
…からの2つの主要な経路を通じて行われます。
それぞれ解説します。
橈骨動脈経由
橈骨動脈は、腕の動脈の一つで、橈骨(前腕の一方の骨)の側を通って下降します。
前腕に入ると、複数の枝に分かれ、前腕の筋肉への血液供給を行います。
橈側反回動脈は、橈骨動脈の主要な枝の一つで、特に前腕の筋肉へ血液を供給します。
この動脈は、前腕の上部近くから分岐し、筋肉やその他の組織へと血液を送ります。
尺骨動脈
尺骨動脈は、前腕のもう一方の骨である尺骨の側を通って下降する主要な動脈です。
この動脈も前腕に入ると、筋肉やその他の組織へ血液を供給するために枝分かれします。
前後骨間動脈は、尺骨動脈からの重要な枝で、特に前腕の骨間(橈骨と尺骨の間)に位置する筋肉へ血液を供給します。
これには前骨間動脈と後骨間動脈の2つの部分があり、それぞれが前腕の前面と後面の筋肉群に分かれて血液を供給します。
小指伸筋の主な働き
機能 | 小指の伸展、外転 |
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小指伸筋は主に第5指の伸展、第5指の外転に作用します。
ここではもう少し踏み込んで…
- 小指の伸展
- 伸筋膨張部への挿入
- 尺側手根伸筋との連動
- 独立した動作の重要性
…という文脈から解説します。
小指の伸展
小指伸筋は、小指の中手指節関節(metacarpophalangeal joint、MCP)の伸展を主に行います。
この関節は手のひらと第一指節をつなぐ関節で、小指を手の平面から持ち上げる動作を可能にします。
伸筋膨張部への挿入
この筋肉の腱は手の背面にある伸筋膨張部(extensor expansion)に挿入されます。
伸筋膨張部は指の背面にある腱膜シートで、指の伸展をサポートする構造です。
小指伸筋の腱はこの部分に結びつくことで、小指の関節すべて、特に近位指節関節(proximal interphalangeal joint、PIP)と遠位指節関節(distal interphalangeal joint、DIP)の伸展を助けます。
尺側手根伸筋との連動
小指伸筋は尺側手根伸筋(extensor carpi ulnaris)と連動することで、手首の動きにも寄与します。
尺側手根伸筋は手首の尺側(小指側)の伸展と尺側への偏位(ulnar deviation)を助ける筋肉です。
小指伸筋がこれと協調することで、より広範な手の動きと力強い伸展を実現します。
独立した動作の重要性
小指伸筋は小指に特化しているため、第2~4指の伸筋(common extensor digitorum)とは独立して動作します。
一般的な指伸筋は第2から第4指に挿入し、これらの指を同時に伸ばしますが、小指は独立して動かすことができるため、より細かい手の動作が可能になります。
これは、特に精密な作業や楽器の演奏など、小指の独立したコントロールが求められる場面で重要です。