深指屈筋は前腕の筋肉で、第2から第5指の末節骨への強力な屈曲を担当し、握力の確保に重要な役割を果たします。
本記事ではこの深指屈筋について解説します。
深指屈筋の起始・停止
起始 | 尺骨前面の近位半分、骨間膜 |
---|---|
停止 | 第2~5指の末節骨底 |
深指屈筋は、人間の前腕にある重要な筋肉で、特に指の屈曲、つまり曲げる動作を行うのに不可欠です。
ここでは解剖学的な構造として…
- 起始
- 経路と停止
- 機能と停止の配置
…という視点でそれぞれ解説します。
起始
深指屈筋は以下の4つの部位から始まります。
- 尺骨の前面の上4分の3:尺骨は前腕の二つの主要な骨のうちの一つで、この広範な面からの起始が筋肉の強大な力を支えます。
- 骨間膜の隣接部分:骨間膜は骨と骨の間に存在する膜で、筋肉に追加の固定点を提供します。
- 尺骨の鉤状突起:尺骨の小さな突出部で、筋肉の起点として機能します。
- 尺骨手根屈筋の腱膜:これは他の筋肉の腱に由来する起始点で、筋肉間の連携を助けます。
経路と停止
深指屈筋は、前腕の遠位3分の1のレベルで広い腱になり、以下の経路をたどります。
- 腱は前腕の方形回内筋の表面を横切ります。方形回内筋は前腕の小さな筋肉で、腕の回内動作を助けるものです。
- 次に、屈筋支帯(手首の筋肉や腱を保護するための強固な結合組織の帯)の下を通過します。
- 手に入ると、腱は4つのスリップ(細長い部分)に分かれ、第2から第5指の末節骨の基部の掌表面に停止します。
機能と停止の配置
深指屈筋の筋線維は、筋肉の内側部分が第4指と第5指に挿入され、外側部分が第2指と第3指に挿入されるように配置されています。
この配置により、各指の独立した屈曲が可能となり、手の細かい運動やグリップの力が向上します。


深指屈筋の神経支配
神経支配 | 第2~3指: 正中神経 (内側骨間神経) 第4~5指: 尺骨神経 (C8、T1) |
---|
深指屈筋は前腕の筋肉で、指の屈曲を担当しており、特に神経支配の面で興味深い特性を持っています。
この筋肉は…
- 正中神経
- 尺骨神経
…といった二重の神経支配を受けていて、筋肉の部位によって異なる神経がそれぞれの指の動きをコントロールしています。
以下にそれぞれ解説します。
正中神経
正中神経もまたC8とT1の神経根に由来しており、前腕と手の多くの筋肉を支配します。
深指屈筋の外側部分は、正中神経の一部である前骨間枝によって支配されており、第2番目(人差し指)と第3番目(中指)の動きをコントロールします。
尺骨神経
尺骨神経は、脊髄のC8とT1の神経根から出ており、手と腕の感覚や運動を司る重要な神経の一つです。
この神経は、深指屈筋の内側部分を支配し、特に第4番目(薬指)と第5番目(小指)の筋肉を動かす責任を持っています。


深指屈筋の血液供給
血液供給 | 尺骨動脈、総骨間動脈、尺骨側副動脈、尺側反回動脈、前骨間動脈、正中動脈 |
---|
深指屈筋に対する血液供給は、複数の主要な動脈からの枝によって提供されます。
主なものとして…
- 下尺骨側副動脈
- 尺側反回動脈
- 尺骨動脈
- 総骨間動脈
- 前骨間動脈
- 正中動脈の枝
…があげられます。
それぞれ解説します。
下尺骨側副動脈 (Inferior ulnar collateral artery)
この動脈は、尺骨の近くで深指屈筋の起始部に血液を供給します。
主に筋肉の上部に血液を供給し、十分な酸素と栄養を提供して筋肉の健康を支えます。
尺側反回動脈 (Ulnar recurrent artery)
尺骨反回動脈もまた、深指屈筋の起始部に対して血液を供給する役割を持ち、尺骨の近辺でこの筋肉に寄与します。
尺骨動脈 (Ulnar artery)
尺骨動脈は前腕の主要な血管の一つで、深指屈筋を含む多くの筋肉に血液を供給します。
特に筋腹の上部を通過し、筋肉全体への血液供給に重要です。
総骨間動脈 (Common interosseous artery)
総骨間動脈は尺骨動脈から分岐し、骨間膜と骨の間の領域に血液を供給します。
この動脈は、深指屈筋などの筋肉の健康に不可欠な血流を提供します。
前骨間動脈 (Anterior interosseous artery)
前骨間動脈は、総骨間動脈から分岐し、特に深指屈筋の筋腹の部分に血液を供給します。
正中動脈の枝 (Branches of the median artery)
正中動脈は、特に深指屈筋の残りの部分へ血流を提供し、筋肉全体の機能と健康に寄与します。


深指屈筋の主な働き
深指屈筋は主に…
- 第2~第5指の屈曲
- 手関節の掌屈の補助
…として作用します。
それぞれ解説します。
第2~第5指の屈曲
深指屈筋は末節骨を手の方向に引っ張ることで、中手指節関節(MP関節)と指節間関節(PIPおよびDIP関節)で指を屈曲させます。
これにより、指の曲げ動作が可能になり、物をつかむといった日常的な動作を支援します。
手関節の掌屈の補助
深指屈筋は手関節の屈筋でもあり、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋、長母指屈筋と同じく手関節の掌屈を補助します。

