病気や状態の変化によって、体温が変動する理由とはどのようなものなのでしょうか?
本記事では…
- 体温の変動機構
- 体温の上昇機序
- 体温の低下機序
…について解説します。
なぜ体温は変動するのか?(体温の変動機構)
そもそもなぜ体温は変動するのでしょうか?
体温は、その動物の周囲の温度とその動物の体内で作られる熱エネルギーによって変化することが知られています。
人間の場合、体温は、脳からの指令で褐色脂肪細胞が熱を生み出し、さらに寒さが強くなると、脳の中の別のルートをたどり運動神経を介して「ふるえろ」という指令が骨格筋に届きます。
その指令に基づき、骨格筋はブルブルふるえて、熱を生み出すという仕組みです。
脳の部位からみた体温調整
体温は、体温調節中枢である視床下部と下垂体が主導する自律神経系によって調節されます。
体温調節中枢は、温度受容体を通じて内部の温度情報や環境の温度情報を受け取り、体温を適切な範囲に保つために産熱と放熱を調整します。
体温の上昇機序
体温が上昇する原因として…
- 感染症
- 炎症反応
- 過度の運動
- 熱中症
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
感染症
感染症を引き起こす細菌やウイルスは、免疫系の反応として炎症を引き起こします。
この炎症反応によって体温が上昇します。
感染症による体温上昇は、体内での病原体の増殖を防ぐための防御反応として重要な役割を果たします。
炎症反応
けがや組織の損傷、アレルギー反応などによって引き起こされる炎症も体温の上昇をもたらします。
炎症は免疫系の反応であり、損傷した組織の修復や異物の排除を促進します。
この過程で体温が上昇し、炎症部位に免疫細胞や栄養素を集めることが可能になります。
過度の運動
激しい運動や過労によって体温が上昇することがあります。
運動時に筋肉はエネルギーを消費し、その代謝によって熱が発生します。
運動中に産生された熱は体温調節中枢に伝えられ、体温上昇のシグナルとなります。
熱中症
高温多湿の環境下で過ごすことや、長時間の日光浴などによって体温調節機能が乱れ、体温が上昇し熱中症を引き起こすことがあります。
熱中症は体内の熱の放散が十分に行われず、体温が上昇し過ぎる状態です。
これらの要因によって、体温調節中枢が刺激を受けてセットポイントが上昇し、体温調節が変化します。
体温調節中枢は、体内の温度変化を感知し、産熱と放熱のバランスを調整します。
感染症や炎症反応では、病原体や損傷組織から発生する化学的刺激が体温調節中枢に作用し、体温の上昇を引き起こします。
これによって体温調節中枢の調節レベルが上昇し、体内の熱の放散が減少し、体熱の産生が増加して体温が上昇します。
体温の低下機序
また、体温が低下する原因としては…
- 寒冷環境への暴露
- 内分泌異常
- 低血糖
- ショック
- 神経障害
…などがあげられます。
これらについてもそれぞれ解説します。
寒冷環境への暴露
長時間にわたって寒冷な環境にさらされると、体温調節機能が限界を超えてしまい、体温が低下します。
これは寒冷環境において体内の熱の放散が増加し、体熱の産生が不足するためです。
寒冷環境下では身体が体温を維持するためにエネルギーを消費し、体温が低下することで代謝や身体機能が低下する可能性があります。
内分泌異常
内分泌系の障害やホルモンの異常な分泌によって体温が低下することがあります。
例えば、甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの不足により代謝が低下し、体温が下がることがあります。
低血糖
血液中の血糖値が低下すると体温も低下することがあります。
血糖はエネルギー源として重要であり、低血糖状態では代謝が低下し、体温が下がることがあります。
ショック
ショック状態では体内の循環血液量が低下し、組織への酸素供給が不十分になります。
この状態では体温調節がうまく機能せず、体温が低下することがあります。
神経障害
一部の神経障害や脳損傷によって体温調節中枢の機能が障害されると、体温が低下することがあります。
例えば、脳卒中や脊髄損傷などが原因となります。
これらの要因によって、体温調節中枢が刺激を受けて産熱が減少し、放熱が増加することで体温が低下します。
寒冷環境下では体内の熱の放散が増加し、体熱の産生が不足するために低体温状態が生じます。
また、麻酔薬などが体内に入ることで交感神経系が遮断され、体温調節中枢が抑制されることも低体温の原因となることがあります。