GTD(Getting Things Done)は、デビッド・アレン氏が提唱したタスク管理手法で、頭の中にあるタスクを整理し、効率的に物事を進めることを目的としています。
本記事ではこの5つのステップやメリット、デメリット、具体例について解説します。
GTDとは
GTD(Getting Things Done)とは、アメリカの生産性コンサルタントであるデビッド・アレン氏が提唱したタスク管理手法です。
この方法は、頭の中にある全てのタスクやアイデアを外に出し、リストにまとめることで、思考を整理し効率的に物事を進めることを目指しています。
GTDは「仕事を成し遂げる」という意味であり、日々の業務やプロジェクトの管理に役立つだけでなく、ストレスを軽減し、集中力を高める効果があります。
具体的には、タスクを収集・整理・処理・レビュー・実行の5つのステップで管理し、実際の行動に移すことで、仕事の生産性を大幅に向上させることができます。
GTDのステップ
GTDの基本的な進め方は、以下の5つのステップで構成されています。
- 収集
- 処理
- 整理
- レビュー
- 実行
それぞれ解説します。
収集
GTDの最初のステップである「収集」では、頭の中にあるすべてのタスクやアイデアをリストアップします。
これは「やりたいこと」や「やらなければならないこと」など、思考の中に散らばっているすべての項目を外部化する作業です。
メール、メモ、TODOリストなど、あらゆる情報源から集めて一箇所に集約し、脳を解放することで、次のステップに進むための土台を作ります。
処理
「処理」のステップでは、リストアップされたタスクを分類し、優先順位をつけます。
具体的には、各タスクに対して「これは何か?」「今すぐできることか?」と自問し、2分以内で完了できるものは即座に処理します。
行動が必要なタスクは覚書に残し、複雑なものは単純なアクションに分解してリスト化し、後日行うものは期日を決めてTODOリストに追加、自分でできないものは早めに依頼して返事待ちリストに入れるといったルールに従って進めます。
整理
「整理」の段階では、収集と処理で作成したリストを、使い慣れたツール(手帳やTODOアプリなど)に組み入れていきます。
ここでは、リストを視覚的に整理し、後から参照しやすい状態に整えることが重要です。
整理されたリストは、日々の業務の進行を助け、優先順位に基づいて行動を起こすための道標として機能します。
レビュー
「レビュー」のステップでは、自分が置かれている状況や現在の余力を把握し、今何ができるかを定期的に確認します。
このプロセスは、進行中のタスクやプロジェクトを見直し、必要に応じて計画を調整するために不可欠です。
レビューを通じて、目標に向けた進捗状況を確認し、次に何をすべきかを明確にすることで、タスクの実行に対する自信を高めます。
実行
最後のステップである「実行」では、優先順位の高いタスクから順に行動に移します。
ここで重要なのは、他のステップでしっかりと準備を整えているため、迷うことなくタスクを進めることができる点です。
実行段階では、集中力を持ってタスクに取り組み、効率的に結果を出すことが求められます。
GTDのメリット
GTDは、タスク管理のテクニックとして広く知られていますが、単なるタスク管理にとどまらず、より生産的でストレスの少ない生活を送るための有効な手段です。
GTDを実践することで得られるメリットとしては…
- 頭の中がクリアになり、ストレス軽減
- 生産性の向上
- 目標達成への貢献
- 柔軟な対応
- 心の平穏
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
頭の中がクリアになり、ストレス軽減
GTDの最も大きなメリットの一つは、頭の中にあるすべてのタスクやアイデアを外部化し、可視化することで、情報過多から解放される点です。
これにより、頭の中が整理され、思考がクリアになります。
ストレスの一因となる未処理のタスクが減り、何をすべきかが明確になるため、精神的な負担が軽減されます。
その結果、一つのタスクに集中しやすくなり、作業効率も向上します。
GTDを実践することで、心の余裕を持ちながら、計画的に行動できるようになります。
生産性の向上
GTDのプロセスを通じて、タスクの重要度や緊急度を客観的に判断し、明確な優先順位付けが可能になります。
これにより、最も重要なタスクから着手できるようになり、結果として生産性が大幅に向上します。
また、すべてのタスクをリストアップして可視化することで、重要なタスクを見落とすことがなくなり、タスクの漏れを防止できます。
さらに、タスクを細分化して短時間で完了できるタスクから処理することで、時間を有効に活用でき、より効率的に仕事を進めることができます。
目標達成への貢献
GTDは、大型の目標を具体的な行動計画に落とし込むのに非常に有効です。
目標を小さなタスクに分解し、それを着実に実行することで、目標達成への道筋が明確になります。
また、タスクを一つずつ完了することで小さな達成感を積み重ねることができ、それがモチベーションの維持につながります。
このプロセスは、マルチタスクを排除し、フロー状態に入りやすくする効果もあります。
結果として、目標達成がより現実的かつ達成可能なものとなります。
柔軟な対応
GTDは、状況の変化に柔軟に対応できる点でも優れています。
タスクの優先順位や内容を状況に応じて変更することができるため、予期せぬ事態にも迅速に対応可能です。
さらに、頭の中が整理されていることで、新しいアイデアが生まれやすくなり、創造性を発揮しやすくなります。
これは特に、変化が激しいビジネス環境において重要なスキルです。
柔軟な対応ができることで、常に最適な行動を取ることができ、より良い結果を生み出すことが期待されます。
心の平穏
GTDを実践することで、将来に対する不安が軽減され、心の平穏を保つことができます。
やるべきことが明確になるため、タスクを忘れる心配が減り、計画通りに進められるという安心感が生まれます。
また、頭の中が整理されることで、心に余裕が生まれ、より充実した生活を送ることが可能になります。
この余裕は、仕事だけでなく、プライベートな時間にも好影響を与え、全体的な生活の質を向上させる要因となります。
結果的に、心身の健康を保ちながら、目標に向かって確実に歩みを進めることができます。
GTDのデメリット
GTDは非常に有効なタスク管理方法ですが、万能ではありません。
メリットだけでなく、デメリットも理解することで、より効果的にGTDを活用することができます。
ここでは…
- 初期設定に時間がかかる
- 継続的な管理が必要
- タスクの細分化によるオーバーワーク
- 柔軟すぎるがゆえの混乱
- 時間管理との連携が難しい
- ツールへの依存
- 完璧主義への陥りやすさ
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
初期設定に時間がかかる
GTDを導入する際の最大のデメリットは、初期設定に多くの時間と労力を要する点です。
まず、頭の中にあるすべてのタスクやアイデアを洗い出す作業は、非常に時間がかかる上、労力が必要です。
さらに、GTDを効果的に活用するためには、自分に最も適したシステムを構築しなければならず、この過程には試行錯誤が伴います。
特に、どのツールを使用するかや、どのルールを採用するかといった選択肢が多いため、初めてGTDを導入する人にとってはハードルが高く感じられることがあります。
この初期設定が上手くいかないと、システム自体がうまく機能せず、ストレスを増す要因になることもあります。
継続的な管理が必要
GTDを効果的に運用するためには、リストやタスクの継続的な管理が不可欠です。
特に、定期的にリストを見直し、更新することが求められます。
この作業を怠ると、リストが古くなり、実際にやるべきことが見えづらくなることがあります。
また、タスクの優先度や分類を適宜見直す作業も必要であり、これも継続的な管理を必要とします。
これらの作業が負担となり、システムの運用が滞ると、GTD自体がかえって非効率なものとなり、元の目的である生産性向上が達成されにくくなります。
タスクの細分化によるオーバーワーク
GTDでは、タスクを細分化することで具体的な行動計画を立てやすくなりますが、これがデメリットになることもあります。
タスクを細かく分割しすぎると、管理すべきタスクの数が増えすぎてしまい、逆にオーバーワークの原因となります。
結果として、処理すべきタスクが膨大になり、全体の進行を把握しづらくなる可能性があります。
また、小さなタスクに区切ることで作業が頻繁に中断され、集中力が途切れることもあります。
こうした状況が続くと、GTDが本来の目的である効率化とは逆効果を生むことになりかねません。
柔軟すぎるがゆえの混乱
GTDの柔軟性の高さは多くの人にとって魅力的ですが、これがデメリットとなる場合もあります。
自由度が高すぎるために、自分に合ったルールやテクニックを見つけることが難しく、かえって混乱することがあります。
GTDにはさまざまなルールやテクニックが存在し、どれを採用すべきか迷うことが多いため、初心者には混乱の原因となることがあります。
これが原因で、システムを効果的に運用できず、かえってストレスを増す結果となる可能性もあります。
柔軟すぎるがゆえに、確固たる運用方法を見つけることが難しく感じる人もいるかもしれません。
時間管理との連携が難しい
GTDはタスク管理に優れた手法ですが、時間管理の側面においては課題が残ります。
具体的には、GTD自体が「いつ」タスクを実行するかという時間の管理にはあまり触れていません。
そのため、スケジュール管理が必要な場合には、GTDだけでは不十分であり、他の時間管理手法と組み合わせる必要があります。
これにより、GTDと時間管理のバランスを取るのが難しくなり、効果的なスケジューリングが求められることがデメリットとなります。
高度なタスク管理を求める人にとっては、この点がGTDの制約として感じられることがあります。
ツールへの依存
GTDを実践するためには、リストやタスクを管理するためのツールが欠かせませんが、これがデメリットとなる場合もあります。
自分に合ったツールを選ぶのには時間がかかり、また、一度ツールに依存し始めると、それがないと何もできない状態に陥る危険性があります。
特に、デジタルツールを使用している場合、そのツールが利用できなくなった際にシステムが崩壊するリスクが伴います。
このようなツール依存は、かえって効率を損なう要因となり得ます。
完璧主義への陥りやすさ
GTDは、すべてのタスクを徹底的に管理することを目指すため、完璧主義に陥りやすい傾向があります。
全てのタスクを完璧にこなそうとするあまり、無意識のうちにストレスを抱えてしまうことがあり、これがシステムの運用に悪影響を及ぼすことがあります。
また、完璧を追求するあまり、タスクが完了するまでの時間が長くなり、結果として効率が下がることもあります。
こうした完璧主義への傾倒は、GTDの本来の目的である効率的なタスク管理を阻害する要因となり得るため、注意が必要です。
GTDの具体例
GTD(Getting Things Done)は、タスク管理の枠を超え、生活全般の生産性向上に役立つ手法として知られています。
リハビリテーションという、目標達成が特に重要視される分野においても、GTDの考え方は非常に有効です。
収集
リハビリテーションにおけるGTDの「収集」ステップでは、患者の状態や進行中のリハビリ計画、治療目標、日々の業務、研究プロジェクトなど、頭の中にあるすべてのタスクや情報をリストアップします。
例えば、患者の評価結果、家族とのコミュニケーション内容、新たに提案された治療方法などを含め、整理していきます。
この段階でのポイントは、リハビリに関わるすべての要素を外部化し、可視化することで、見落としを防ぎ、全体像を把握しやすくすることです。
こうすることで、リハビリの進行状況や計画に関する情報が一箇所にまとまり、次のステップでの効率的な処理が可能になります。
収集された情報は、今後の治療計画や優先順位の決定に役立つ基盤となります。
処理
「処理」のステップでは、収集されたリハビリ関連の情報を分析し、分類・優先順位付けを行います。
具体的には、患者ごとのリハビリ計画を見直し、緊急性の高いタスク(例:急な状態変化に対応する)や、短時間で対応できるもの(例:簡単な指示や説明)を最優先で処理します。
また、長期的な治療目標に向けたタスクや、今すぐ行う必要がないもの(例:次回のカンファレンスで共有する資料作成)をリストにまとめて後回しにします。
このステップでは、すぐに対応すべきか、後回しにしても良いかを的確に判断し、リハビリ業務全体の効率を高めることが求められます。
処理が適切に行われることで、患者に対するケアの質が維持され、業務のスムーズな進行が可能になります。
整理
「整理」の段階では、処理されたタスクや情報を、使い慣れたツール(例:患者カルテ、リハビリプランニングソフト、紙の手帳など)に整理して組み入れていきます。
例えば、各患者ごとの進行状況や治療計画を視覚的に整理し、担当者や関係者がすぐに参照できるようにすることが重要です。
また、タスクの期限や優先順位を明確にし、いつ、誰が、どのタスクを実行するかが一目でわかるように管理します。
整理されたリストや情報は、日々の業務の進行をサポートし、チーム全体の共通理解を促進します。
この段階での適切な整理により、リハビリテーションの計画が効率よく進行し、患者のケアが途切れることなく提供されます。
レビュー
「レビュー」のステップでは、定期的に収集・処理・整理されたリハビリ関連の情報を見直し、現状を評価します。
例えば、毎週または毎月のカンファレンスやミーティングの際に、患者の治療進行状況を確認し、必要に応じて計画を修正することが含まれます。
これにより、治療の効果を確認し、新たな課題が発生した場合には迅速に対応できます。
また、タスクの進行状況を評価し、優先順位を再調整することで、リハビリ業務全体が常に最新の状態で進行するようにします。
このレビューによって、リハビリテーションの質を高め、患者の目標達成に向けた最適なケアが提供されます。
実行
最後のステップである「実行」では、整理され、レビューされたリハビリ計画に基づいて、優先順位の高いタスクから実行に移します。
具体的には、患者への治療やリハビリテーションプログラムの実施、家族との面談、他の医療スタッフとの連携など、リストに従って行動を起こします。
この段階では、計画通りにタスクを実行し、結果をフィードバックすることが重要です。
実行がスムーズに進むことで、患者の状態改善に直結し、リハビリテーションの効果が最大化されます。
適切な実行により、患者の目標達成に向けた一貫したケアが提供され、リハビリチーム全体の生産性も向上します。
関連文献
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- ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編――仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法
- GTDを習慣化してシンプルなタスク管理を実現する!: 文章を書き、考える人のためのOmniFocus活用術 情報整理大全
そろそろ本腰入れなければ。。。
GTD×MECE×意思決定支援ってツール化できないのかなって考えています。|1TOC @1toc_ot #note https://t.co/Ngf0j7jyGQ
— 1TOC (@1toc_ot) August 20, 2024