園芸は、身体・精神の健康を促進し、認知症ケアやストレス軽減に有効な療法的活動です。
本記事では園芸活動の特性や種類、リハビリ効果について解説します。
園芸とは?
園芸って定義としてはなんだろな?って思ったのでまず調べてみました。
- 園芸とは、農業の一つの部門
- 田園or温室などで植物を栽培すること
- 果樹、野菜、草花類を育てる技術と造園技術の総称
まとめるとこんな感じのようです。
土をいじって、花や野菜を育ててだけでなく、それらの技術も含めて“園芸”ってところがポイントかと。
園芸の特性
園芸活動の特性は多岐に渡りますが、ここでは…
- 身体活動の促進
- 精神的健康への貢献
- 自然とのつながり
- 教育的価値
- 社会性の向上
…について解説します。
身体活動の促進
園芸活動は、掘る、植える、水やり、剪定といった動作を伴います。
これらの活動は、全身を使う運動になり得るため、定期的に行うことで体力の維持や向上に役立ちます。
特に、筋肉の強化、関節の柔軟性の向上、心臓血管系の健康維持など、身体の多くの面において肯定的な影響を与えます。
また、屋外での活動は日光にさらされる機会を増やし、ビタミンDの生成を促進することで骨の健康を支える効果も期待できます。
精神的健康への貢献
園芸はストレスの軽減、不安感の低減、幸福感の向上に有効であることが多くの研究で示されています。
植物を育てる行為は、注意を現在の瞬間に集中させることで心の落ち着きをもたらし、マインドフルネスの実践と同様の効果があると考えられます。
また、植物が成長し、花や実をつける過程を目の当たりにすることで得られる達成感や喜びは、自己効力感を高め、生活に対する肯定的な見方を促します。
自然とのつながり
園芸活動を通じて、人は自然と直接触れ合う機会を得ます。
これは都市化やデジタル化が進む現代社会において、特に重要な意味を持ちます。
自然との接触は、人間が本来持っている自然への親和性(バイオフィリア)を満たし、精神的な安らぎや平穏をもたらします。
また、四季の変化や生命のサイクルを身近に感じることができ、自然環境に対する理解や尊敬の念を深めることにもつながります。
教育的価値
園芸は、植物学、土壌学、生態学など、自然科学の知識を実践的に学ぶ絶好の機会を提供します。
特に子どもたちにとって、種をまき、植物が成長する過程を観察することは、生命についての理解を深める貴重な体験となります。
また、環境保護の重要性や持続可能な生活の実践についても、自然との直接的な関わりを通じて学ぶことができます。
社会性の向上
園芸は個人の趣味としてだけでなく、コミュニティガーデンや公共の緑化プロジェクトなど、集団で行う活動としても人気があります。
共通の目的に向かって作業することは、コミュニケーション能力の向上、チームワークの促進、さらには地域社会への参加意識を高める効果があります。
また、世代間の交流の場としても機能し、社会的孤立感の軽減に寄与することが期待されます。
作業療法と園芸の歴史
作業療法の起源を遡ると、紀元前600年頃のギリシャにおける医学の父、アスクレピオスを始め、紀元前400年前後のヒポクラテス。
紀元130年から210年にかけて活躍したガレンといった古代医学の重鎮たちが、心身の健康を取り戻す手段として、スポーツ、遊び、乗馬、労働、音楽と共に農耕作業を推奨していたことが記録されています。
これらの活動は、当時から人々の心身の調和を促進する治療方法として認識されており、現代の作業療法の理念に通じる考え方が既に存在していたことを示しています。
園芸の種類について
園芸と一言で言っても、実に様々な種類があります。
主に文化としての鑑賞園芸と、産業としての生産園芸の2つに大別されます。
- 鑑賞園芸
- 生産園芸
それぞれ解説します。
鑑賞園芸
鑑賞園芸は、美しさや楽しさを追求する園芸の形態で、植物を育てること自体に喜びを見出し、その過程や成果を楽しむことを目的としています。
この種類の園芸では、花、観葉植物、盆栽、苔玉、庭園など、多様な植物や造園手法が用いられます。
鑑賞園芸の魅力は、植物の美しさや生命力を直接感じ取ることができる点にあり、季節の変化に応じた植物の成長や花の開花を観察することで、自然のリズムやサイクルを身近に体験することができます。
また、自分だけの庭をデザインしたり、室内に緑を取り入れることで、生活空間を豊かに彩ることも可能です。
精神的な癒しやリラクゼーション効果も高く、個人の趣味としてだけでなく、コミュニティ活動や教育の場としても活用されています。
生産園芸
生産園芸は、食用、薬用、装飾用などの目的で植物を栽培し、商品として市場に供給することを主眼に置いた園芸です。
野菜、果物、花、ハーブなどがこのカテゴリーに含まれます。
生産園芸は、食料生産や商業活動の一環として重要な役割を果たし、農業科学、土壌学、植物育種学などの専門知識を活用して、効率的かつ経済的に高品質の植物を生産することに焦点を当てています。
この種類の園芸では、持続可能な農業技術や環境に優しい栽培方法が注目されており、オーガニック農法や水耕栽培などの新しい栽培技術も積極的に取り入れられています。
市場の需要に応じた生産を目指す生産園芸は、食文化や経済活動に大きな影響を与え、地域社会や国の産業としての位置づけも高いです。
園芸によって期待できる治療的・療法的効果
園芸活動は、多面的な治療的・療法的効果をもたらすことが知られています。
ここでは、その主な効果として…
- 身体機能の改善
- 精神的ウェルビーイングの向上
- 認知機能の維持・促進
- 社会的スキルの向上
- 感覚刺激による認知症ケア
- ストレス軽減とリラクゼーション
…について解説します。
身体機能の改善
園芸活動は、適度な身体活動を伴うため、筋力の維持や向上、関節の可動域の拡大、手指の細かな動作能力の向上など、身体機能の改善に寄与します。
また、屋外での活動はビタミンDの生成を促し、骨密度の維持にも役立ちます。
定期的な園芸作業は心臓病や糖尿病などの生活習慣病の予防にも効果的です。
精神的ウェルビーイングの向上
植物を育てる過程では、達成感、自己効力感、満足感を得ることができます。
これらの感情は、自尊心の向上に繋がり、うつ症状の軽減や一般的な精神的ウェルビーイングの向上に寄与します。
また、美しい花や緑豊かな環境は直接的に心を癒し、ポジティブな感情を引き出すことが知られています。
認知機能の維持・促進
園芸活動は、計画立案、問題解決、注意力、記憶力といった認知機能の使用を要求します。
これらの認知プロセスの活性化により、認知機能の維持や促進が期待できます。
特に高齢者においては、日常的な園芸活動が認知症の予防や進行の遅延に効果的であるとの研究結果もあります。
社会的スキルの向上
園芸クラブやコミュニティガーデンなど、集団での園芸活動は、コミュニケーション能力の向上、協調性の養成、社会参加の機会を提供します。
これらの社会的交流は、孤立感の軽減や社会的支援ネットワークの構築に貢献し、精神健康の向上を促します。
感覚刺激による認知症ケア
園芸活動は視覚、嗅覚、触覚など、多くの感覚を刺激します。
これらの感覚刺激は、認知症患者の記憶の喚起や情緒の安定に効果があります。
また、植物の色や質感、香りは患者の興味を引き出し、ポジティブな感情を促進することが期待できます。
ストレス軽減とリラクゼーション
自然環境や植物との接触は、ストレスホルモンのレベルを下げることが科学的に証明されています。
園芸活動は、このような自然治癒力を活用したストレス軽減の効果をもたらし、心身のリラクゼーションに寄与します。
このリラックス効果は、高血圧の管理や睡眠の質の向上にも役立ちます。