KJ法は、川喜田二郎が考案したアイデア整理法で、カードに書かれたアイデアをグループ化し、視覚的に情報を整理して新たな洞察や解決策を導き出す手法です。
本記事ではこの簡単なやり方やメリット・デメリット、具体例などについて解説します。
KJ法とは
KJ法は、ブレインストーミングなどで出た大量のアイデアを整理・収束させるために用いる手法であり、具体的にはカード状の紙(付箋など)に1つ1つのアイディアを書き、カードをカテゴリに分け図解し、整理していくものです。
この手法は、文化人類学者である川喜田二郎さんが、フィールドワークで得た膨大なデータをまとめるために考案したもので、新しいアイディアの発想やチームでの問題解決など、多様な視点を持つ人々が協力して取り組む場面で効果があります。
KJ法は、情報の整理や新しい視点の発見を促進し、効率的な意思決定をサポートするための強力なツールです。
KJ法の特徴
このKJ法の主な特徴としては…
- 問題の整理と解決策の選択
- 複雑な情報の分類と関連付け
- 視覚的な情報整理
- グループで行うことが多い
- 少数意見の活用
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
問題の整理と解決策の選択
KJ法は、問題の整理と解決策の選択まで行うことができる手法であり、ブレインストーミングの結果を効率的にまとめるために活用されます。
具体的には、アイデアやデータをカードに書き出し、それを分類・整理して、最終的には解決策の選定に至るまでのプロセスを含みます。
この方法により、複雑な問題を構造的に理解し、具体的かつ実行可能な解決策を導き出すことができます。
複雑な情報の分類と関連付け
KJ法は、複雑な情報やデータを分類し、関連付けることによって、問題の本質を明らかにし、新しい視点や解決策を導き出すことを目的としています。
この手法により、表面化していない関連性やパターンを発見することができ、問題の核心に迫ることが可能です。
結果として、従来の方法では見過ごされがちな重要な要素を見つけ出し、より効果的な解決策を提案するための基盤を築くことができます。
視覚的な情報整理
KJ法は、データや意見を視覚的に整理して分析するプロセスが特徴で、カード状の紙(付箋など)に1つ1つの情報を記し、それを並べ変えたりグルーピング(グループ化)したりすることで情報を整理していきます。
この視覚的な整理法により、情報が一目で把握しやすくなり、全体の構造や関係性が明確に理解できます。
視覚化された情報は、グループ内でのコミュニケーションを円滑にし、意見の共有や共通認識の形成を助けます。
グループで行うことが多い
KJ法は、グループで行うことが多く、その中で各参加者の意見や視点を取り入れることができます。
グループでの実施により、異なるバックグラウンドや専門知識を持つメンバーが集まり、多様な視点から問題を検討することが可能です。
このコラボレーションの過程は、創造的なアイデアや斬新な解決策を生み出す源となり、個人では思いつかないようなユニークな視点を取り入れることができます。
少数意見の活用
KJ法では、提案時に共感者の少なかった少数意見についても、その他の意見と同様に1枚のカードとして取り扱います。
これにより、少数意見が大きな影響を持つことがあり、最終的な解決策に重要な貢献をすることが可能です。
少数意見を尊重することで、従来のアプローチでは見落とされがちな革新的なアイデアや洞察を取り入れることができ、より包括的で効果的な解決策を導き出す基盤を築くことができます。
KJ法の方法・やりかた
ではこのKJ法はどのような手順で行うのでしょうか?
ここでは方法として…
- カード(付箋)に記入する
- カード(付箋)を整理する
- 図解する
- 文章にまとめる
…というステップで解説します。
カード(付箋)に記入する
まずは、解決したい問題やテーマについてブレインストーミングを行い、出てきたアイデアをカード(付箋など)に書き込んでいきます。
このステップでは、アイデアは1つずつカードに書き、具体的かつわかりやすく記入することが重要です。
このようにして、アイデアの全体像を把握しやすくし、次のステップでの整理や分析をスムーズに行う基盤を作ります。
カード(付箋)を整理する
次に、ブレインストーミングで出てきたアイデアをカードに書き込んだ後、それらをカテゴリごとにグループ化します。
このステップでは、意味や文脈が近い感じのものを重ねていくことで、アイデアの関連性を明確にし、全体の構造を視覚化します。
この過程で、新たな関連性やパターンが見えてくることがあり、問題解決のための洞察を深めることができます。
図解する
次に、全体の位置関係を見直し、模造紙やホワイトボード上でのグループの位置関係を整理します。
このステップでは、意味が近いものを近くに、遠いものを遠くへと並び替えることで、情報の流れや関係性をより直感的に理解できるようにします。
図解することで、情報の全体像を把握しやすくなり、新たなアイデアや問題の核心を見つける手助けとなります。
文章にまとめる
最後に、相関性が図示された全体の関係性を文章化します。
このステップでは、視覚的に整理された情報を言語化することで、新たな着想やアイデアを得ることができます。
また、文章化することで、他のメンバーとの共有が容易になり、チーム全体での合意形成や次のステップへの移行がスムーズになります。
このようにして、KJ法を通じて得られた情報やアイデアを実際の問題解決に活用する準備が整います。
KJ法の具体例
では実際にこのKJ法を利用して、リハビリテーションにおける活用例を考えてみます。
今回のステップとしては…
- リハビリテーションの目標や課題を明確にする
- 課題に対するアイディアをブレインストーミングで出す
- アイディアをカードに書き、グループ化する
- 行動計画を立てる
…にわけて考えてみます。
リハビリテーションの目標や課題を明確にする
まず、リハビリテーションの目標や課題を明確にします。
具体的には、患者さんが日常生活で困っていることや、改善したいことなどが課題となります。
例えば、患者さんが自身で食事を摂ることが困難であったり、歩行の安定性が低いなど、具体的な問題点を洗い出します。
この段階で課題を明確にすることで、次のステップで出されるアイディアがより焦点を絞ったものとなり、効果的なリハビリテーション計画の基盤を作ることができます。
課題に対するアイディアをブレインストーミングで出す
次に、その課題に対するアイディアをブレインストーミングで出します。
リハビリテーションの専門家だけでなく、患者さんやその家族など、関係者全員が参加することが望ましいです。
多様な視点からアイディアを出すことで、より包括的で患者に適した解決策を見つけやすくなります。
例えば、患者のニーズに基づいた具体的なリハビリ手法や、家庭でのサポート体制など、多岐にわたるアイディアを集めることが重要です。
アイディアをカードに書き、グループ化する
出てきたアイディアをカード(付箋など)に書き、それらを関連性やテーマに基づいてグループ化します。
このプロセスを通じて、アイディアの整理とパターンの発見が可能になります。
関連性の高いアイディアをまとめることで、共通するテーマや問題点が浮かび上がり、より効果的な解決策を導き出す手助けとなります。
例えば、食事補助のアイディアをまとめることで、特定の訓練方法や補助具の導入など、具体的なアプローチが明確になります。
行動計画を立てる
最後に、各グループから最も実現可能で効果的と思われるアイディアを選び出し、具体的な行動計画を立てます。
これにより、リハビリテーションの目標達成に向けた具体的なステップが明確になります。
例えば、歩行の安定性向上に向けた訓練プログラムや、食事補助のための器具使用方法など、具体的な行動計画を策定し実行します。
このようにして、整理されたアイディアを実際のリハビリテーションに適用することで、患者の生活の質を向上させる具体的な成果を目指します。
KJ法のメリット
では、このKJ法を行うメリットについてですが…
- アイデアを可視化できる
- 論理的に情報整理ができる
- 少数意見を活用することができる
…などがあげられます。
それぞれ簡単にですが解説します。
アイデアを可視化できる
KJ法では、頭の中にあるアイデアを整理し、目に見える形で言語化することができます。
このプロセスにより、抽象的な考えやアイデアを具体的に表現できるため、メンバー間で情報を共有しやすくなります。
さらに、視覚的に表現されたアイデアは、各メンバーの中で明確なイメージを形成しやすくなり、共同作業を円滑に進める基盤となります。
論理的に情報整理ができる
KJ法は、手順そのものが論理的視点にもとづいて考案されているため、情報を体系的かつ論理的に整理することができます。
この手法により、複雑な情報やデータの関連性を明確にし、全体像を把握することが容易になります。
論理的な情報整理は、問題解決の過程で重要な洞察を得る手助けとなり、効果的な意思決定をサポートします。
少数意見を活用することができる
KJ法では、提案時に共感者の少なかった少数意見についても、その他の意見と同様に1枚のカードとして取り扱います。
これにより、少数意見が埋もれずに取り上げられ、その内容が全体の議論に大きな影響を与えることがあります。
少数意見を尊重することで、従来の方法では見過ごされがちな革新的なアイデアや洞察を引き出し、問題解決において新たな視点を提供することが可能となります。
KJ法のデメリット
では逆にKJ法のデメリットをあげるとしたらどのようなものがあげられるでしょうか?
ここでは…
- 時間と労力の要求
- グループ内の意見の不一致
- 情報が全くない状況では役に立たない
- アイデアが参加者に依存する
- カテゴリー分けで創造性が失われる可能性がある
…について解説します。
時間と労力の要求
効果的なKJ法の実施は、時間と労力を要し、準備と分析に多くの時間が必要です。
この手法を適切に行うためには、十分な時間を確保し、参加者全員が積極的に関与することが求められます。
そのため、日常業務が忙しい状況では、KJ法を実施するためのリソースを確保することが難しい場合があります。
グループ内の意見の不一致
KJ法は多様な意見を取り入れることが前提となるため、参加者間で意見が分かれることがあります。
特に、多くのメンバーが参加する場合、全員の意見を尊重しつつ合意形成を行うのは困難です。
このプロセスに時間がかかり、議論が停滞することもあるため、効果的なファシリテーションが重要となります。
情報が全くない状況では役に立たない
KJ法は、情報が豊富にある状態を前提として分類するための方法です。
したがって、情報が全くない状況では、この手法を用いることが難しく、有効な結果を得ることはできません。
情報収集の段階で十分なデータが得られない場合、KJ法の利点を活かすことができず、問題解決に至らないことがあります。
アイデアが参加者に依存する
KJ法の手法が、各自のアイデアの域を出ることができないため、それ以上の創造性を発揮することが難しいという点があります。
参加者の経験や知識が限られている場合、出てくるアイデアも限定され、革新的な解決策が生まれにくいことがあります。
したがって、参加者の選定がKJ法の効果に大きく影響を与えます。
カテゴリー分けで創造性が失われる可能性がある
KJ法では、アイデアをカテゴリーに分ける過程で、創造性が失われる可能性があります。
分類の過程で、アイデアが固定化され、新たな視点や発想が抑制されることがあるためです。
特に、既存の枠組みにとらわれずに自由な発想が求められる場面では、KJ法のカテゴリ分けが逆に障害となる場合があります。