低血圧とは、血圧が通常よりも低い状態を指し、めまいや立ちくらみ、倦怠感などの症状を引き起こすことがあります。
生活習慣の改善や医師の指導による対策が重要です。
本記事では低血圧の定義や原因、症状や改善方法について解説します。
低血圧とは?
低血圧とは、血圧が通常の範囲よりも低い状態を指します。
血圧は、心臓が血液を送り出す際に血管にかかる圧力のことであり、一般的に収縮期血圧が100 mmHg未満、または拡張期血圧が60 mmHg未満の状態が低血圧とされます。
低血圧は、めまいや立ちくらみ、疲労感といった症状を引き起こすことがあり、特に急激な体位変換時にこれらの症状が出やすくなります。
一般的には、低血圧自体が重大な健康リスクとはならないことが多いものの、特に高齢者や持病のある人では、日常生活に影響を与える可能性があります。
低血圧の改善には、十分な水分補給や塩分摂取の調整、適度な運動が推奨されることが多く、生活習慣の見直しが症状軽減に役立つことがあります。
低血圧の原因
低血圧の原因は様々ですが、ここでは…
- 脱水症状
- 心臓の問題
- 内分泌の異常
- 血液量の減少
- 長時間の立位
- 薬の副作用
- 遺伝的要因
…について解説します。
脱水症状
脱水症状は、低血圧の主な原因の一つです。
体内の水分が不足すると血液量が減少し、結果として血圧が下がります。
特に、夏場や運動中に水分を十分に補給しないと、体内の水分が急速に失われ、低血圧の症状が出やすくなります。
脱水に伴う低血圧は、めまいや意識障害を引き起こすこともあり、迅速な対応が必要です。
予防には、定期的な水分補給が効果的です。
心臓の問題
心臓の機能が低下すると、血液を全身に十分に送り出せなくなり、血圧が低下します。
例えば、心拍数が極端に低下する「徐脈」や、心筋梗塞などの心臓の異常が原因で血圧が安定しなくなることがあります。
これらの心臓の問題により、血流が低下し、結果的に低血圧を引き起こす可能性があります。
心臓に関連する低血圧は、専門的な治療が必要な場合が多いため、早期の医療相談が重要です。
内分泌の異常
甲状腺機能低下症やアドレナリン不足といった内分泌系の異常は、低血圧の一因となることがあります。
甲状腺ホルモンは新陳代謝を調整する役割を持ち、その機能が低下すると血圧も低くなる傾向があります。
また、副腎から分泌されるアドレナリンが不足すると、血管が十分に収縮せず、血圧が下がります。
これらの内分泌異常が疑われる場合は、血液検査などによる診断が行われます。
血液量の減少
怪我や手術による大量の出血が起こると、体内の血液量が急激に減少し、低血圧の状態に陥ることがあります。
このような血液量の減少は、ショック状態を引き起こすことがあり、生命の危機に直結することもあります。
早急に輸血や点滴などの処置が必要です。特に外傷や大規模な手術後は、低血圧の症状に対する注意が求められます。
長時間の立位
長時間立ち続けると、重力の影響で血液が下半身に溜まりやすくなり、心臓への血液の戻りが遅くなります。
その結果、脳への血流が減少し、低血圧の症状が現れることがあります。
これは「起立性低血圧」とも呼ばれ、急に立ち上がったり、長時間立っている状況でよく見られます。
予防には、適度な休息や、立位中の軽い運動が効果的です。
低血圧の種類
低血圧は主に以下の4つの種類に分類されます
- 本態性低血圧(一次性低血圧)
- 症候性低血圧(二次性低血圧)
- 起立性低血圧
- 食事性低血圧(食後低血圧)
本態性低血圧(一次性低血圧)
本態性低血圧は、特定の原因がなく、遺伝や体質によって引き起こされる低血圧のことを指します。
このタイプの低血圧は、他の病気や薬の影響を伴わず、日常的に血圧が低い状態が続くのが特徴です。
一般的に、このタイプの低血圧は、若年層や女性に多く見られ、めまいや倦怠感といった症状を引き起こすことがありますが、特に危険な状態とはされていません。
体質によるものであるため、生活習慣を見直したり、バランスの取れた食事や適度な運動が症状の軽減に役立ちます。
医療的な治療は必要ない場合が多いですが、症状が日常生活に支障をきたす場合は、医師に相談することが推奨されます。
症候性低血圧(二次性低血圧)
症候性低血圧は、他の病気や薬の副作用によって引き起こされる低血圧です。
例えば、心臓病、ホルモンのバランスの異常、糖尿病、あるいは利尿薬や降圧剤の使用が原因となることがあります。
このタイプの低血圧は、基礎疾患の治療が必要であり、放置すると症状が悪化する可能性があります。
症候性低血圧の管理には、まず原因となる疾患の特定と治療が優先され、その後、血圧を安定させるための対策が取られます。
特定の薬を服用している場合は、医師と相談し、適切な調整が必要です。
起立性低血圧
起立性低血圧は、急に立ち上がったときや長時間立っているときに血圧が急激に低下する状態を指します。
特に高齢者や自律神経が不安定な人に多く見られ、立ちくらみやめまい、意識を失うこともあります。
このタイプの低血圧は、体の血流調整がうまく行われず、心臓に戻る血液が少なくなることで脳への血流が減少し、症状が現れます。
予防策として、急に立ち上がらないようにしたり、長時間立っている場合は適度に体を動かすことが勧められます。
症状が頻繁に現れる場合は、医師の診察を受けることが推奨されます。
食事性低血圧(食後低血圧)
食事性低血圧は、食後に血圧が一時的に低下する状態です。
特に高齢者や高血圧の患者に多く見られ、食事によって胃腸に血液が集中し、他の部位への血流が減少することで血圧が下がります。
この現象は特に炭水化物を多く含む食事を摂取した後に発生しやすく、めまいや疲労感を引き起こすことがあります。
食事性低血圧の予防には、一度に多量の食事を摂らず、少量ずつ頻回に摂取することや、食後に急激な動作を避けることが効果的です。
低血圧の症状
低血圧になると、様々な症状が現れることがあります。
これらの症状は、人によって感じ方や強さが異なります。
代表的なものとして…
- めまい、ふらつき
- 立ちくらみ
- 頭痛
- 倦怠感
- 冷え性
- 視力低下
- 集中力の低下
- 動悸
- 息切れ
- 吐き気
めまい、ふらつき
低血圧の典型的な症状の一つがめまいやふらつきです。
特に立ち上がったときや急に体を動かした際に、血液が十分に脳に行き渡らず、ふわっとした感覚や不安定感を感じることがあります。
これは血圧が低い状態で起きやすく、体の血流調整がうまくいかないためです。
軽度の場合は安静にすることで症状が和らぎますが、頻繁に起こる場合は医師の診察を受けることが望ましいです。
慢性的なめまいは、日常生活にも影響を及ぼすため、注意が必要です。
立ちくらみ
急に立ち上がった際に、視界がぼやけたり、意識が遠のくような感覚が生じるのは、起立性低血圧の症状です。
これは、立ち上がった時に血圧が急激に下がり、脳への血流が一時的に不足することで発生します。
特に長時間座った後や横になっていた状態から急に動いたときに起こりやすく、高齢者や自律神経に問題のある人に多く見られます。
予防策として、急に動かず、ゆっくりと体位を変えることが推奨されます。
立ちくらみが頻繁に起こる場合は、生活習慣の改善や医師の助言が必要です。
頭痛
低血圧による頭痛は、特に後頭部やこめかみのあたりに痛みが生じることが多いです。
これは、血流が不安定になり、脳への酸素供給が不足することで引き起こされることがあります。
頭痛は持続的なものではなく、体調や血圧の変動によって突発的に現れることが特徴です。
痛みが軽度の場合は、こまめな休息や水分補給で緩和できることが多いですが、重度の場合は薬や医療的な対処が必要になることがあります。
特に、頭痛が日常生活に支障をきたす場合は、医師の診断を受けることが重要です。
倦怠感
低血圧の影響で血液循環が悪くなると、全身に酸素や栄養が十分に行き渡らず、倦怠感や疲労感が強く現れます。
この倦怠感は、ただの疲れではなく、休んでも解消されない持続的なだるさを感じることがあります。
日常的に低血圧に悩む人は、朝起きたときから疲労を感じたり、やる気が出ないといった精神的な症状も伴うことがあります。
適度な運動やバランスの取れた食事、そして生活リズムを整えることが倦怠感の軽減に効果的です。
冷え性
低血圧により血流が滞ることで、手足が冷えやすくなる冷え性の症状が現れることがあります。
特に冬場や気温の低い環境では、末端部分の血液循環が悪くなり、手足がなかなか温まらないという問題が起こります。
冷え性は体温が低いだけでなく、体の免疫力を低下させ、他の健康問題を引き起こすこともあります。
日常生活の中で、適度な運動やマッサージを行い、血流を促進することで、冷え性の症状を改善できることがあります。
視力低下
低血圧の影響で一時的に視力が低下することがあります。
特に、急に立ち上がった際や長時間立ち続けた後に、視界がぼやけたり、物が二重に見えることがあります。
これは、脳や目への血流が一時的に不足し、視覚に影響を与えるためです。
通常、血圧が安定すれば視力も回復しますが、頻繁に視力低下が起こる場合は、他の疾患が隠れている可能性もあるため、早めの受診が必要です。
適切な体位の変更や、こまめな休息で視力低下を防ぐことができます。
集中力の低下
低血圧の状態が続くと、脳への血流が不足し、集中力が低下することがあります。
特に、長時間の作業や会議中にぼーっとしてしまったり、考えがまとまらないといった症状が現れることがあります。
集中力の低下は、仕事や学業のパフォーマンスに悪影響を与えることが多く、日常生活にも支障をきたします。
適度な休息を取り、水分補給をしっかりと行うことで、集中力を維持する助けになります。
必要に応じて、生活リズムの見直しも重要です。
動悸
低血圧の影響で心臓の働きが過剰になることがあり、その結果、動悸を感じることがあります。
これは、血圧が低い状態で心臓が血液を全身に送ろうとして、心拍数が上がるためです。
動悸は一時的に感じることが多く、座って休むことで緩和されることが一般的です。
ただし、動悸が頻繁に起こる場合や、息苦しさを伴う場合は、心臓や血管に関連する別の病気が隠れている可能性もありますので、医師の診断を受けることが推奨されます。
息切れ
低血圧によって、酸素が十分に体内に供給されないため、少し動いただけで息切れを感じることがあります。
これは、体が酸素不足を補おうとして、呼吸を速めるために起こります。
息切れが頻繁に起こる場合、体力が低下しているだけでなく、日常的な活動が制限されることがあり、生活の質に影響を及ぼします。
息切れを予防するためには、激しい運動を避け、ゆっくりとしたペースで活動を行うことが大切です。
吐き気
低血圧によって、消化器官への血流が不足することで、吐き気や気分の悪さを感じることがあります。
特に、食後や疲労がたまっている時に吐き気が現れることが多く、体調の変化に敏感な人は注意が必要です。
吐き気が続く場合、低血圧に加えて他の健康問題がある可能性もあるため、医師の診断を受けることが推奨されます。
症状を和らげるためには、食事の量を減らしたり、ゆっくりと食べることが有効です。
低血圧の基準数値
低血圧の基準数値については、高血圧のように厳密に定められたものはありませんが、一般的に収縮期血圧が100mmHg未満の場合に低血圧とされることが多いです。
これはあくまで目安であり、実際には個人の体質や生活状況、年齢などによって低血圧の影響は異なります。
例えば、普段から低めの血圧でも症状がなく健康的な生活を送っている人もいる一方で、わずかに血圧が下がるだけで体調不良を感じる人もいます。
WHO(世界保健機関)では、収縮期血圧が100mmHg以下、拡張期血圧が60mmHg以下を低血圧の基準として定義していますが、この数値もまた一般的なガイドラインであり、個々の患者の状態に応じた診断と治療が重要です。
低血圧の改善方法・治し方
低血圧の改善には、生活習慣の見直しや、場合によっては医師の診断のもと治療薬を用いるなどの方法があります。
以下に、具体的な改善方法として…
- 水分補給
- 塩分摂取の見直し
- 小さい食事を頻繁に
- 適度な運動
- 圧迫ストッキングの使用
- 緩やかな体位変換
- カフェイン摂取
- 医師の相談
…について解説します。
水分補給
低血圧の改善には、十分な水分補給が不可欠です。
体内の水分が不足すると血液量が減少し、血圧が低下するため、定期的に水分を補給することで血圧を安定させることができます。
特に運動後や気温の高い日には、脱水症状を防ぐために多めに水分を摂取することが推奨されます。
また、スポーツドリンクなどで電解質を補うことも効果的です。
日常的に適切な水分補給を心がけることで、低血圧による症状の予防につながります。
塩分摂取の見直し
塩分は体内の水分バランスを調整し、血圧を維持するために重要な要素です。
低血圧の人は、適度に塩分を増やすことで血圧を上げることができます。
ただし、過剰な塩分摂取は高血圧や他の健康問題を引き起こす可能性があるため、医師と相談しながら摂取量を調整することが重要です。
塩分の増加は、特に低血圧によるめまいや倦怠感を緩和するのに役立つことがあります。
小さい食事を頻繁に
食後低血圧を防ぐためには、少量の食事を頻繁に摂ることが効果的です。
食事を一度に大量に摂ると、消化のために血液が胃腸に集中し、他の部位への血流が減少して血圧が低下することがあります。
これを防ぐために、少量の食事を数回に分けて摂取することで、食後の血圧低下を緩和できます。
食事内容にも注意し、バランスの良い栄養を摂ることが重要です。
適度な運動
適度な運動は、血流を促進し、血圧を安定させるのに役立ちます。
ウォーキングや軽い有酸素運動は、低血圧の改善に効果的です。
運動によって全身の血流が良くなり、特に慢性的な低血圧を予防する助けになります。
また、筋力を維持することが血液循環を良好に保つための重要な要素です。
無理のない範囲で、日常的に適度な運動を取り入れることが推奨されます。
圧迫ストッキングの使用
特に起立性低血圧の改善には、圧迫ストッキングが有効です。
圧迫ストッキングを着用することで、足に溜まる血液を上半身に戻す助けとなり、血圧の低下を防ぐことができます。
長時間立っている場合や、座った姿勢から急に立ち上がる際に役立ちます。
日常的に使用することで、立ちくらみやめまいなどの低血圧症状を緩和できます。
適切なサイズと圧迫力のものを選ぶことが重要です。
緩やかな体位変換
低血圧の人は、急に立ち上がるとめまいや立ちくらみを引き起こすことがあります。
そのため、緩やかに体位を変えることが重要です。
座っている状態や寝ている状態から立ち上がるときは、まずゆっくりと座り、その後ゆっくりと立ち上がることで、急激な血圧低下を防ぐことができます。
特に朝起きたときや長時間同じ姿勢でいた後には、この方法を意識すると効果的です。
習慣的に体位変換をゆっくり行うことで、低血圧による不快な症状を和らげることが可能です。
カフェイン摂取
カフェインは、血圧を一時的に上げる効果があるため、低血圧の改善に役立つことがあります。
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインを適度に摂取することで、血圧の低下による倦怠感やめまいを緩和することができます。
ただし、カフェインの摂取量には注意が必要で、過剰に摂取すると心拍数の増加や不眠などの副作用が出ることがあります。
低血圧改善のためには、適切なタイミングと量でカフェインを摂取することが大切です。
医師の相談
低血圧の症状が続いたり、日常生活に影響を与える場合は、医師に相談することが重要です。
特に、食事や生活習慣の改善だけでは症状が緩和されない場合、医師の診断に基づき、必要に応じて薬を処方してもらうことがあります。
医師は低血圧の原因や体質に合わせた治療法を提案し、適切な管理を行うことができます。
また、特定の疾患が原因となっている場合、その治療が必要です。