医療情報取得加算は、患者の診療情報や薬剤情報を取得し、診療に活用することを評価する制度で、医療の質向上と効率化を目指します。
本記事ではこの目的、算定加算、取得基準などについて解説します。
医療情報取得加算とは
医療情報取得加算は、2024年の診療報酬改定により新設された評価で、医療機関が初診時や再診時に患者の診療情報や薬剤情報を取得し、それを診療に活用する体制を評価します。
この加算は、医療機関がオンライン資格確認システムを導入し、マイナンバーカード等を利用して患者の診療情報を取得することを前提としています。
具体的な点数設定として、初診時には「医療情報取得加算1」が3点、「医療情報取得加算2」が1点、再診時には「医療情報取得加算3」が2点、「医療情報取得加算4」が1点とされています。
この加算を受けるためには、電子情報処理組織を使用した診療情報請求を行い、オンライン資格確認を行う体制を整える必要があります。
また、患者に対し、受診歴、薬剤情報、特定検診情報など必要な診療情報を取得・活用して診療を行うことを明示することが求められます。
これらの変更は、医療情報の取得と活用をより重視し、医療の質向上と効率化を目指す「医療DX」の推進を図るものです。
医療情報取得加算の目的
「医療情報取得加算」の主な目的としては…
- 診療情報・薬剤情報の取得・活用の評価
- 医療の質向上
- 医療の効率化
- 医療DXの推進
…があげられます。
それぞれ解説します。
診療情報・薬剤情報の取得・活用の評価
医療情報取得加算の主な目的の一つは、診療情報や薬剤情報の取得・活用に対する評価を行うことです。
これには、オンライン資格確認等システムを導入することが前提となっています。
オンライン資格確認システムを利用することで、医療機関は患者の診療情報や薬剤情報を迅速かつ正確に取得することができます。
これにより、診療の質が向上し、医療の効率化が進むことが期待されます。
また、患者の情報を電子的に管理することで、診療記録の一貫性が保たれ、異なる医療機関間での情報共有も容易になります。
これにより、患者が複数の医療機関を利用する際にも、一貫した治療が提供されることが期待されます。
医療の質向上
医療情報取得加算の導入により、患者の情報を十分に取得することが新たな算定要件となりました。
これにより、医療の質向上を目指すことができます。
患者の診療情報や薬剤情報を詳細に把握することで、医療機関はより正確な診断と治療を行うことが可能となります。
また、過去の診療歴や薬剤情報を基に、より適切な治療方針を立てることができます。
これにより、患者に対する医療サービスの質が向上し、満足度も高まります。
さらに、医療の質向上は、医療事故の防止や治療の成功率向上にも寄与するため、医療全体の安全性と効果を高めることが期待されます。
医療の効率化
医療情報取得加算のもう一つの重要な目的は、医療の効率化を図ることです。
診療情報や薬剤情報を迅速かつ正確に取得し、診療に活用することで、診療プロセスの効率化が進みます。
これにより、医療機関の運営コストの削減や、医療スタッフの業務負担の軽減が期待されます。
例えば、患者の診療情報を電子的に管理することで、手作業による記録管理の手間を省き、ミスを減らすことができます。
また、診療情報の電子化により、情報の検索や共有が容易になり、診療のスピードと精度が向上します。
これにより、医療機関はより効率的に患者にサービスを提供することができ、患者の待ち時間の短縮や満足度の向上につながります。
医療DXの推進
医療情報取得加算は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を図るための重要な取り組みでもあります。
医療DXとは、デジタル技術を活用して医療サービスの質と効率を向上させることを目的としています。
医療情報の取得と活用を通じて、医療機関は診療プロセスのデジタル化を進めることができます。
これにより、診療情報の一元管理や、データ分析による診療の最適化が可能となります。
また、医療DXは、遠隔診療やAIによる診断支援など、新しい医療サービスの導入を促進します。
これにより、医療サービスの提供範囲が広がり、より多くの患者に対して質の高い医療を提供することが可能となります。
医療情報取得加算の算定点数
医療情報取得加算の具体的な算定点数についてですが…
- 医療情報取得加算1
- 医療情報取得加算2
- 医療情報取得加算3
- 医療情報取得加算4
…によって異なります。
それぞれ解説します。
医療情報取得加算1
「医療情報取得加算1」は、初診時に限り算定される加算で、月に1回に限り3点が所定点数に加算されます。
この加算を受けるためには、医療機関が厚生労働大臣が定める施設基準を満たしている必要があります。
施設基準を満たす医療機関は、患者から十分な情報を取得し、その情報をもとに初診を行うことが求められます。
これは、医療機関が患者の診療に必要な情報を詳細に収集し、質の高い診療を提供することを評価するものです。
また、初診時に患者の情報をしっかりと把握することで、適切な診療方針を立てることができ、患者の健康管理に大きく貢献します。
医療情報取得加算2
「医療情報取得加算2」も初診時に限り算定される加算で、月に1回に限り1点が所定点数に加算されます。
この加算は、電子資格確認により患者の診療情報を取得した場合、または他の医療機関から患者の診療情報の提供を受けた場合に適用されます。
電子資格確認システムを利用することで、医療機関は患者の過去の診療履歴や薬剤情報を迅速かつ正確に取得することができます。
これにより、医療機関は初診時においても、より詳細な情報に基づいた診療を提供することが可能となります。
この方法は、診療の質を向上させるだけでなく、診療プロセスの効率化にも寄与します。
医療情報取得加算3
「医療情報取得加算3」は、再診時に限り算定される加算で、3ヶ月に1回に限り2点が所定点数に加算されます。
この加算を受けるためには、医療機関が厚生労働大臣が定める施設基準を満たしている必要があります。
施設基準を満たす医療機関は、再診時に患者から十分な情報を取得し、その情報をもとに診療を行うことが求められます。
これは、初診時と同様に、医療機関が患者の診療に必要な情報を詳細に収集し、質の高い診療を提供することを評価するものです。
また、再診時においても患者の情報をしっかりと把握することで、継続的な診療の質を維持し、患者の健康管理に大きく貢献します。
医療情報取得加算4
「医療情報取得加算4」も再診時に限り算定される加算で、3ヶ月に1回に限り1点が所定点数に加算されます。
この加算は、電子資格確認により患者の診療情報を取得した場合、または他の医療機関から患者の診療情報の提供を受けた場合に適用されます。
電子資格確認システムを利用することで、医療機関は再診時においても、患者の過去の診療履歴や薬剤情報を迅速かつ正確に取得することができます。
これにより、医療機関は再診時にも、より詳細な情報に基づいた診療を提供することが可能となります。
この方法は、診療の質を向上させるだけでなく、診療プロセスの効率化にも寄与します。
医療情報取得加算3と4の違いについて
「医療情報取得加算3」と「医療情報取得加算4」の主な違いについてここでは…
- 情報取得の方法
- 算定可能な点数
…の文脈でそれぞれ解説します。
情報取得の方法
「医療情報取得加算3」と「医療情報取得加算4」の主な違いは、情報取得の方法にあります。
「医療情報取得加算3」は、健康保険証による資格確認を行った場合、またはマイナンバーカードを利用して資格確認を行ったが、診療情報の取得に同意しない場合に算定されます。
これは、患者がマイナンバーカードを持っていても個人情報の提供に同意しないケースを想定しています。
一方、「医療情報取得加算4」は、マイナンバーカードを利用して資格確認を行い、診療情報の取得に同意した場合、または他の医療機関から診療情報提供を受けた場合に算定されます。
これにより、医療機関は患者からの詳細な診療情報を得て、診療に反映させることができます。
このように、情報取得の同意が診療情報の詳細度と信頼性に直接影響するため、加算の基準が異なるのです。
医療情報取得加算の算定要件
医療情報取得加算の算定要件についてですが…
初診時の算定要件
再診時の算定要件
それぞれ解説します。
初診時の算定要件
医療情報取得加算の初診時の算定要件として、まず、厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して、十分な情報を取得した上で初診を行うことが求められます。
この場合、「医療情報取得加算1」として、月に1回限り3点を所定点数に加算することができます。
次に、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認により患者の診療情報を取得した場合、または他の保険医療機関から患者の診療情報の提供を受けた場合には、「医療情報取得加算2」として、月に1回限り1点を所定点数に加算することが可能です。
これらの加算は、医療機関が患者の診療情報を効果的に活用し、質の高い診療を提供することを促進する目的があります。
これにより、患者の健康状態や治療歴をより正確に把握し、適切な診療方針を立てることが可能となります。
再診時の算定要件
医療情報取得加算の再診時の算定要件についても、初診時と同様に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関を受診した患者に対して、十分な情報を取得した上で再診を行うことが求められます。
この場合、「医療情報取得加算3」として、3ヶ月に1回限り2点を所定点数に加算することができます。
さらに、健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認により患者の診療情報を取得した場合、または他の保険医療機関から患者の診療情報の提供を受けた場合には、「医療情報取得加算4」として、3ヶ月に1回限り1点を所定点数に加算することが可能です。
これらの加算は、再診時においても患者の診療情報を適切に活用し、継続的かつ効果的な治療を提供することを目的としています。
これにより、患者の治療経過を正確に追跡し、必要に応じて治療計画の見直しを行うことができます。
医療情報取得加算の施設基準について
「医療情報取得加算」の施設基準としては…
- 電子情報処理組織を使用した診療情報請求
- オンライン資格確認体制の整備
- オンライン資格確認体制の公示
- 診療情報の取得と活用の公示
…があげられます。
それぞれ解説します。
電子情報処理組織を使用した診療情報請求
医療情報取得加算の施設基準として、まず医療機関が電子情報処理組織を使用して診療情報請求を行うことが求められます。
これは、従来の紙ベースの請求方式から電子的な手段への移行を意味し、請求業務の効率化と正確性の向上を目的としています。
電子情報処理組織の導入により、診療情報の管理が容易になり、迅速かつ正確な請求処理が可能となります。
また、電子的な手段を用いることで、情報の伝達が迅速に行われ、診療の質を向上させるための基盤が整います。
さらに、診療情報の電子化は、患者の情報を一元管理することができ、複数の医療機関間での情報共有も容易になります。
オンライン資格確認体制の整備
次に、医療機関がオンライン資格確認を行う体制を有していることが重要です。
オンライン資格確認とは、患者の資格情報をオンラインでリアルタイムに確認する仕組みであり、これにより患者の保険情報や特定検診情報などを迅速に取得できます。
この体制の整備により、医療機関は診療時に必要な情報を即座に確認することができ、患者に対する診療の質を高めることができます。
オンライン資格確認は、診療の効率化にも寄与し、待ち時間の短縮やトラブルの防止に役立ちます。
また、正確な資格確認により、誤った請求や未払いのリスクを減らすことができます。
オンライン資格確認体制の公示
施設基準の一つとして、医療機関はオンライン資格確認を行う体制を有していることを、見やすい場所及びウェブサイト等に掲示する必要があります。
これは、患者が医療機関を利用する際に、適切な情報提供を受けられるようにするための措置です。
掲示により、患者は自身の情報が適切に管理され、診療に活用されることを理解し、安心して診療を受けることができます。
また、透明性のある運営を行うことで、医療機関の信頼性が向上し、患者との信頼関係の構築にも寄与します。
このような情報の公開は、患者の知る権利を尊重し、医療サービスの質向上を目指すために不可欠です。
診療情報の取得と活用の公示
さらに、医療機関は患者に対し、受診歴、薬剤情報、特定検診情報など必要な診療情報を取得・活用して診療を行うことを公示する必要があります。
これは、医療機関が患者の情報を適切に管理し、診療に反映する姿勢を示すものです。
公示することで、患者は自身の情報が診療にどのように利用されるかを理解し、納得して医療サービスを受けることができます。
これにより、患者は安心感を持って診療を受けることができ、医療機関とのコミュニケーションが円滑になります。
また、患者の情報を活用することで、より質の高い、個別化された診療が提供されることが期待されます。
算定可能な点数
「医療情報取得加算3」と「医療情報取得加算4」のもう一つの大きな違いは、算定可能な点数にあります。
「医療情報取得加算3」は、3ヶ月に1回に限り2点を所定点数に加算することができます。
これは、基本的な資格確認手続きに対して行われる評価です。
一方、「医療情報取得加算4」は、3ヶ月に1回に限り1点を所定点数に加算することができます。
これは、患者が診療情報の取得に同意した場合の評価であり、より詳細な情報が医療機関に提供されることを前提としています。
この違いは、情報取得の方法とその信頼性、詳細度に基づいて異なる評価が行われることを反映しています。
より多くの情報を提供することに同意した患者からの情報は、医療機関にとっても有益であり、これが点数の差に表れています。