MEPA-Ⅱ Revisedは、重症児・重度重複障害児のためのムーブメント教育・療法アセスメントで、個別の支援計画立案に役立つツールです。
本記事ではこの目的や特徴、方法などについて解説します。
MEPA-ⅡRとは?
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR)、すなわち「Movement Education and Therapy Program Assessment-II Revised(ムーブメント教育・療法プログラムアセスメントⅡ 改訂版)」は、特に重症児や重度重複障がい児(者)向けに開発された評価および支援プログラムです。
このプログラムは、個人が持つすべての感覚を活用して行う「ムーブメント活動」に焦点を当てています。
これらの活動は、表情が乏しく反応が少ない重度の障がいを持つ子どもや成人にも笑顔をもたらし、手足や体の動きの幅を広げ、人とのコミュニケーション能力を向上させることが世界的に知られています。
目的
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR) の目的は、重症児や重度重複障害児(者)の支援を通じて、彼らの生活の質を向上させることに焦点を当てています。
ここでは主な目的として…
- 個々の感覚を活用するムーブメント活動の提供
- 身体的な動きとコミュニケーション能力の向上
- 日常生活の質(QOL)の向上
- 特別支援教育への貢献
…について解説します。
個々の感覚を活用するムーブメント活動の提供
MEPA-ⅡRは、視覚、聴覚、触覚など人が持つすべての感覚を活用するムーブメント活動を通じて、重症児や重度重複障害児(者)に笑顔をもたらし、彼らの感覚的経験を豊かにします。
これらの活動は、表情が乏しく、反応が少なかった障害のある子どもや成人でも、活動を楽しむことができるようになり、生活の質の向上に直接的な影響を与えます。
感覚を刺激することで、新たな学習機会を提供し、自己表現の手段を拡大することが目的です。
このアプローチは、参加者の身体的、感情的、社会的発達を促進するための基礎となります。
身体的な動きとコミュニケーション能力の向上
MEPA-ⅡRは、参加者の手足や体の動きの幅を広げることを目指しています。
身体活動を通じて、参加者は新たな姿勢や移動方法を学び、より自立した生活を送るための基礎を築きます。
また、これらの活動は、非言語的なコミュニケーションの手段を提供し、参加者が他者との関わりを深める機会を得ることができます。
ムーブメントを通じて、参加者は自己表現の新たな方法を見つけ、社会的な相互作用の中で自己を表現する能力を高めることができます。
日常生活の質(QOL)の向上
MEPA-ⅡRの活動は、単に身体的な能力やコミュニケーションスキルを向上させるだけでなく、参加者の日常生活の質(QOL)の向上にも寄与します。
このプログラムは、参加者が自己効力感を高め、社会における自分の役割を見つけることを助けます。
また、楽しいと感じる活動を通じて、幸福感や満足感を提供し、ストレスの軽減や心の健康を促進します。
生活の質の向上は、身体的な健康だけでなく、精神的な健康にも重要であり、MEPA-ⅡRはこれを総合的にサポートすることを目指しています。
特別支援教育への貢献
MEPA-ⅡRは、特別支援教育に携わる教育者やセラピストにとって、重症児や重度重複障害児(者)の支援において有効なツールとなります。
このプログラムは、個々のニーズに応じた教育や療育プログラムの計画と実施に役立つ具体的な評価項目とガイドラインを提供します。
教育者やセラピストは、MEPA-ⅡRを通じて得られる情報を活用し、より効果的な個別支援計画を立てることができます。
これにより、障害児(者)一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、彼らが社会の中でより良く機能するための支援を提供することができます。
特徴
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR)は、重症児や重度重複障害児(者)のためのムーブメント教育および療法プログラムアセスメントであり、次のような特徴を持っています。
- 総合的な感覚活用
- 個別化された支援プログラム
- コミュニケーション能力の強化
- 生活の質(QOL)の向上への貢献
- 特別支援教育への応用可能性
以下にそれぞれ解説します。
総合的な感覚活用
MEPA-ⅡRは、人間が持つ全ての感覚(視覚、聴覚、触覚、前庭感覚、固有感覚など)を活用することを特徴としています。
これらの感覚を刺激するムーブメント活動を通じて、参加者の感覚統合能力を高め、身体的な動きやコミュニケーション能力の向上を図ります。
この総合的な感覚活用により、参加者は周囲の環境に対する認識を深め、より豊かな体験を得ることができます。
また、感覚的な刺激は脳の発達にも良い影響を与え、学習や記憶のプロセスをサポートします。
個別化された支援プログラム
MEPA-ⅡRは、参加者一人ひとりの能力、ニーズ、興味に応じた個別化された支援プログラムの提供を可能にします。
このアセスメントツールは、姿勢、移動、操作、コミュニケーションなど、多岐にわたる領域をカバーしており、細かい評定項目を通じて、参加者の現在の発達水準や能力を正確に把握することができます。
この情報を基に、最も効果的な支援プログラムを計画し、実施することができるため、一人ひとりの成長と発達を最大限に促進することが可能です。
コミュニケーション能力の強化
MEPA-IIRでは、コミュニケーション能力の向上にも重点を置いています。
自己内部要求、自己外界要求、自他循環要求など、様々なコミュニケーションの側面が評価され、それに基づいた支援が提供されます。
このアプローチにより、参加者は自分の思いやニーズをより効果的に表現する方法を学ぶことができ、社会的な相互作用や関係構築のスキルが向上します。
また、非言語的なコミュニケーション手段も強化され、全体的なコミュニケーション能力の発達をサポートします。
生活の質(QOL)の向上への貢献
MEPA-ⅡRの目的は、単に身体的や認知的なスキルを向上させることだけではなく、参加者の日常生活の質(QOL)を向上させることにもあります。
このプログラムを通じて、参加者は新たな自信と自己効力感を得ることができ、社会参加の機会が増えるとともに、ストレスの軽減や全体的な幸福感の向上につながります。
生活の質の向上は、身体的な健康だけでなく、精神的な健康や社会的な満足度にも影響を与えるため、MEPA-ⅡRは参加者の総合的な福祉をサポートします。
特別支援教育への応用可能性
MEPA-ⅡRは、特別支援教育に携わる教育者やセラピストにとって貴重なリソースを提供します。
このプログラムを用いることで、教育者やセラピストは障害児(者)の詳細なニーズを理解し、個々に合わせた教育計画や療育プログラムを効果的に立案・実施することができます。
また、MEPA-ⅡRは、障害児(者)の能力と可能性を最大限に引き出し、彼らがより充実した生活を送るための支援を提供することを目指しています。
このように、MEPA-ⅡRは特別支援教育の現場での実践において、実用的かつ有効なツールとなっています。
評定する領域
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR)では、重症児や重度重複障害児(者)の能力とニーズを網羅的に評定するため…
- 姿勢領域
- 移動領域
- 操作領域
- コミュニケーション
…の主要な領域にわたって評価を行います。
それぞれ解説します。
姿勢領域
ヘッドコントロール: 頭の持ち上げやコントロール能力。
初歩の座位と安定座位: 座る姿勢の取り方とその安定性。
四つ這い位、膝立ち位、立位: 四つ這いや膝立ち、立っているときのバランスとコントロール。
移動領域
自発的な身体と手足の動き: 体や手足の自然な動き。
寝返り: 初歩的な寝返りから完全な寝返りまでの能力。
這いずりと四つ這い移動: 床を這いずる動作や四つ這いでの移動。
支持歩行と一人歩き: 支援を受けながらの歩行から独立した歩行まで。
操作領域
手指の握りと探索: 物を掴む動作や周囲の探索。
持ち替え、振る、両手に持つ: 物を片手から他方への持ち替えや、物を振る動作。
積木重ね、投げる、つまみと取り出し: 積み木を重ねる、物を投げる、小さい物をつまむ動作。
コミュニケーション
自己内部要求と自己外界要求: 自分の内部からの要求(感情や欲求)と外界への要求の表現。
自他循環要求、自発的循環要求: 自分と他者との間でのコミュニケーションの循環、自発的に開始されるコミュニケーション。
社会的循環要求: 社会的な状況やグループ内でのコミュニケーション。
適用範囲
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR)は、幅広い適応範囲を持つ評価および支援プログラムです。
このプログラムは、生まれたばかりの乳幼児から成人に至るまで、さまざまな年齢の人々に適用可能であり、特に重症児や重度重複障害児(者)の支援に焦点を当てています。
MEPA-ⅡRの適応範囲ですが…
- 年齢範囲
- 対象となる障害の種類
- 応用範囲
…という文脈でそれぞれ解説します。
年齢範囲
MEPA-ⅡRは、0歳(生後すぐ)から成人までという広範な年齢層に適用できます。
この広い適応範囲は、発達の初期段階から成人期にかけてのさまざまなニーズと能力に対応するためのものです。
年齢に応じて評価項目や支援プログラムを調整することで、各個人の発達段階に合わせた適切な介入が可能になります。
対象となる障害の種類
MEPA-ⅡRは、特に重症児や重度重複障害児(者)のために設計されています。
これには、身体的障害、知的障害、学習障害、感覚障害(視覚障害や聴覚障害)など、さまざまな種類の障害が含まれます。
応用範囲
MEPA-ⅡRは、特別支援教育、リハビリテーション、医療、ケア施設など、さまざまな分野で応用が可能です。
教育者、セラピスト、医療従事者、ケアスタッフなどがこのプログラムを用いて、障害を持つ個人に対してより適切な支援を行うことができます。
また、家庭でのケアや介入にも役立つ情報やリソースを提供します。
所要時間
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR) の所要時間は約5分です。
この時間は、アセスメントを実施する上での目安とされており、個々の評価項目を通じて参加者の能力やニーズを把握するために必要な時間を指します。
方法
MEPA-Ⅱ Revised (MEPA-ⅡR)は、重症児や重度重複障害児(者)のためのムーブメント教育および療法プログラムアセスメントです。
このアセスメントは、個々の発達状況やニーズを詳細に評価し、適切な支援計画を立てるためのものです。
ここではMEPA-ⅡRを実施する際のプロセスとして…
- 準備
- フェイスシートの作成
- 評定項目の実施
- 評定と記録
- 支援計画の作成
- 実施とモニタリング
- レビューと評価
…のステップについてそれぞれ解説します。
準備
まずMEPA-ⅡRを受けるべき対象者を特定します。
このプログラムは、重症児や重度重複障害児(者)に特に有効です。
そのうえで安全で快適な評価環境を準備し、必要な評価ツールや資料を整えます。
フェイスシートの作成
対象者の基本的な情報(年齢、性別、既知の障害や条件など)をフェイスシートに記録します。
評定項目の実施
姿勢・移動・操作(150項目)、およびコミュニケーション(50項目)の分野を含む200項目の詳細な評定項目を行います。
各項目は、対象者の能力に応じて適切な方法で評価します。
観察、直接的な介入、または特定のタスクの実施を通じて評価を行うことがあります。
評定と記録
各評定項目に基づいて、対象者のパフォーマンスを評定します。
MEPA-ⅡRの指示に従い、観察されたスキルや能力を記録します。
また評定結果を詳細に記録し、対象者の能力やニーズの概要をまとめます。
支援計画の作成
評定結果を基に、対象者のニーズに合わせた個別の支援計画を作成します。
この計画には、目標設定、推奨される活動や介入、フォローアップのスケジュールが含まれます。
実施とモニタリング
立案された支援計画に従って介入を開始します。
定期的に対象者の進捗をモニタリングし、必要に応じて支援計画を調整します。
レビューと評価
定期的にMEPA-ⅡRを再評価し、介入の効果を確認します。
対象者の成長や変化に応じて、目標や活動を更新します。