NPUAP(National Pressure Ulcer Advisory Panel)による褥瘡の分類は、褥瘡の重症度を明確に判別するために広く使用されています。
本記事ではNPUAP分類について解説します。
NPUAP分類
NPUAP分類は、NPUAP(米国褥瘡諮問委員会:National Pressure Ulcer Advisory Panel)が提唱する褥瘡の深達度(深さ)による分類です。
この分類は…
- ステージⅠ(消退しない発赤)
- ステージⅡ(部分欠損)
- ステージⅢ(全層皮膚欠損)
- ステージⅣ(全層組織欠損)
…の4段階に分類されます。
以下にそれぞれ解説します。
ステージⅠ
ステージⅠは、褥瘡の最も初期の段階で、皮膚の消退しない発赤が特徴です。この段階では、皮膚は完全に閉じており、内部の組織損傷はないものの、圧迫による血流の悪化が起こっています。ステージⅠの褥瘡は、適切なケアと予防措置により改善することが可能です。予防には、定期的な体位変換、良好な栄養状態の維持、皮膚の清潔と乾燥の保持などが含まれます。
ステージⅡ
ステージⅡの褥瘡は、部分的な皮膚の欠損を伴います。この段階では、皮膚の表面が損傷を受け、浅い潰瘍や水疱が形成されることがあります。ステージⅡの治療には、患部の清潔保持、適切な創傷ケア、および感染予防が重要です。治療の成功は、早期発見と適切な介入に依存します。また、栄養状態の改善や圧力分散策の実施も重要です。
ステージⅢ
ステージⅢの褥瘡は、全層の皮膚欠損が特徴で、皮下脂肪まで達しますが、筋肉、腱、骨は露出しません。この段階では、深刻な組織損傷が発生し、治療はより複雑になります。ステージⅢの褥瘡には、感染のリスクが高く、適切な創傷管理、感染防止、栄養状態の改善が治療の鍵となります。時には専門的な医療介入が必要となることもあります。
ステージⅣ
ステージⅣの褥瘡は最も重度で、全層の組織欠損が発生し、筋肉、骨、または支持構造物が露出または直接見える場合があります。この深度の褥瘡は非常に深刻で、複雑な医療ケアが必要です。治療には専門的な創傷管理、感染予防、栄養状態の管理、そして場合によっては外科的介入が含まれます。ステージⅣの褥瘡は治癒が難しく、長期的な治療とケアが必要です。
皮膚の状態程度 | |
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DTI疑い | 圧力および/またはせん断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱。 |
ステージⅠ | 傷害が表皮にとどまっている状態。局所の発赤(紅斑)、表皮剥離(びらん)である。 |
ステージⅡ | 傷害が真皮に及び、真皮までの皮膚欠損(=皮膚潰瘍)が生じている状態。水疱が形成されることもあり、壊死組織の付着や細菌感染が生じやすい。 |
ステージⅢ | 皮下組織に達する欠損が生じている状態。 |
ステージⅣ | 筋肉や骨まで損傷された状態。骨が壊死して腐骨(ふこつ)となったり、骨髄炎や敗血症を併発することもある。 |
U | 深さ判定が不能な場合。 |
DTIとは?
DTI(deep tissue injury:深部組織損傷)とは、外観からの推測は困難なものの、内部で圧力による負荷および虚血による代謝障害から組織壊死が起こっている状態…になります。
臨床では、1週間程度で表皮が破たんし潰瘍を生じるとされています。
どの位の時間で褥瘡になる?
基本的にですが、その部位への圧迫の力が一定時間(40mmHg×2時間程度)加わることで、皮下組織や筋組織に虚血が生じて壊死に陥るとされています。