母指対立筋は親指の特有な動き「対立」を実現する筋肉です。
これにより、親指と他の指先が触れ合い、細かな物をつかむことが可能になります。
本記事では母指対立筋について解説します。
母指対立筋の起始・停止
起始 | 大菱形骨結節・屈筋支帯 |
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停止 | 第1中手骨橈側 |
母指対立筋の起始は、手首の部分にある数個の骨の一つ、大菱形骨(trapezium bone)の前面と外側面です。
この骨は手首の側面に位置し、他の小骨とともに手の可動性を支えています。
この筋肉は、僧帽骨の表面から筋繊維が始まり、親指の動きをコントロールするための力を提供します。
また、母指対立筋の停止は、親指の第一中手骨(metacarpal bone of the thumb)の外側縁(橈側)にあります。
この部分は親指の基部近くで、筋肉が第一中手骨の前面と外側面に沿って挿入することで、親指が手の平面から動かせるようになります。
母指対立筋の神経支配
神経支配 | 正中神経反回枝(C8、T1) |
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母指対立筋は、主に正中神経の反回枝によって支配されています。
この神経は、正中神経の一部で、C8およびT1の神経根からの影響を受けます。
また、稀に尺骨神経の深部末梢枝によっても支配されることがあります。
ここでいう「母指球枝(thenar branch)」は、手のひらの筋肉、特に親指の球部(親指の基部付近の膨らんだ部分)に動きを提供する重要な神経です。
この神経は、手の操作や物を掴む動作において親指の精密な動きを制御するため、極めて重要です。
正中神経の根元であるC8(第8頸椎神経)とT1(第1胸椎神経)は、腕や手に信号を送る上で中心的な役割を担っています。
これらの神経根からの信号が適切に伝わることによって、母指対立筋は正しく機能し、親指の対立運動が可能となります。
母指対立筋の血液供給
血液供給 | 橈骨動脈の浅掌枝 |
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母指対立筋の主な血液供給は、橈骨動脈(radial artery)から発生する浅掌枝(superficial palmar branch)によってなされます。
これに加えて…
- 母指主動脈
- 示指橈側動脈
- 深掌動脈弓
…からも追加的な血供があります。
母指主動脈(Princeps pollicis artery)
母指主動脈は親指専用の主要な動脈で、橈骨動脈から分岐し、親指の球部と母指対立筋に血液を供給します。
この動脈は親指の動作や健康にとって非常に重要です。
示指橈側動脈(Radialis indicis artery)
この動脈も橈骨動脈から発生し、示指(人差し指)の側面に沿って走り、その供給範囲が人差し指とその周辺の組織に及びます。
母指対立筋に対しても部分的に血液を供給することがあります。
深掌動脈弓(Deep palmar arch)
深掌動脈弓は手の掌の深い部分に位置する動脈の弓で、橈骨動脈と尺骨動脈が合流して形成されます。
この動脈弓から分岐する多数の小動脈が手の各筋肉、特に手の深部の筋肉に血液を供給します。
母指対立筋もこれらの動脈から追加の血流を受け取ることがあります。
母指対立筋の主な働き
機能 | 親指の対立、CM関節の屈曲 |
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「母指対立筋」の名前が示す通り、この筋肉の主な機能は親指の対立運動を生み出すことです。
対立とは、親指が行う比較的複雑な動きで、第一手根中手骨関節(CM関節)での屈曲、内転、および内旋の組み合わせです。
この動きの目的は、親指の先端を同じ手の他の指の先端に接触させる能力を持つことです。
これにより、手の効率的で正確な動きが可能になり、例えば丸い物体を掴む動作や鉛筆を細かく握る動作などが行えます。