高齢者の主観的QOL評価方法の一つである”PGCモラールスケール”。
本記事ではこの検査の対象や目的、方法について解説します。
PGCモラールスケールとは?
PGCモラールスケール(Philadelphia Geriatric Center Morale Scale)は、高齢者の主観的QOL評価法の一つで、生きがいの尺度を点数化した質問紙法です。
この尺度は、心理的動揺、孤独感・不満足感、老いに対する態度を測定し、主観的QOLの評価を目的としています。
Lawtonによって開発され、前田らによって改訂された高齢者の主観的な幸福感を評価する尺度になります。
PGCモラールスケールの目的
PGCモラールスケールは、主観的な生活の質(QOL)を測定する目的のために開発されました。
この場合のQOLは…
- 心身の健康
- 人間関係
- 仕事
- 教育環境
- 余暇の過ごし方
- 住環境
…など、多岐にわたる観点から総合的に評価されます。
PGCモラールスケールの質問項目
PGCモラールスケールの項目は以下の通りになります。
- 1.今の生活に満足していますか?
- 2.あなたは現在、去年と同じくらい元気だと思っていますか?
- 3.この1年くらい、小さなことを気にするようになったと思いますか?
- 4.年をとって前より役に立たなくなったと思いますか?
- 5.心配だったり、気になったりして眠れないことがありますか?
- 6.生きていても仕方がないと思うことがありますか?
- 7.若い時に比べて、今の方が幸せだと思いますか?
- 8.悲しいことがたくさんあると感じますか?
- 9.あなたは自分の人生は年をとるに従って、だんだん悪くなっていくと感じますか?
- 10.物事をいつも深刻に受け止める方ですか?
- 11.心配事があると、すぐにおろおろする方ですか?
PGCモラールスケールによる評価方法
PGCモラールスケールは、各項目について2件法で回答を求め、合計得点を算出します。
得点範囲は11項目の改訂版では0〜11点になります。
PGCモラールスケールの3つの因子
このスケールは…
- 心理的安定
- 老いに対する満足感
- 有用感
…の3つの因子から構成されています。
以下にそれぞれ解説します。
心理的安定(3、5、10、11)
PGCモラールスケールにおける「心理的安定」は、個人の感情の安定性とストレスや変化に対する耐性を測定する因子です。
この領域は、個人が日々の生活の中で経験する様々な状況に対してどのように感じ、反応するかを評価します。
例えば、不確実性や逆境に直面した際の感情的な反応や、ストレス状況での対処能力などが含まれます。
この因子は、個人の全体的な精神的健康と幸福感を理解するために重要な要素となります。
老いに対する満足感(2、4、7、9)
「老いに対する満足感」は、特に高齢者の間で見られる、年齢とともに訪れる変化への対応や満足度を測る因子です。
この領域は、自己の年齢、人生経験、及び老いへの態度に関連する感情や考えを探ります。
例えば、自己の身体的変化、社会的役割の変化、及び時間の流れに対する認識に焦点を当てます。
この因子は、高齢者の生活の質や自己受容度を評価する上で重要な役割を果たします。
有用感(6、8)
PGCモラールスケールにおける「有用感」は、個人が社会や周囲の人々に対して有益であると感じる度合いを評価する因子です。
この領域では、自己の存在が他人にとって価値があると感じるか、自己が社会的、感情的にどの程度貢献しているかが問われます。
例えば、家族やコミュニティ内での役割、仕事や趣味を通じた貢献感、及び他人への影響の自覚などが含まれます。
この因子は、個人の自尊心や社会的なつながりの感覚を理解するのに役立ちます。
PGCモラールスケールのカットオフ
PGCモラールスケールのカットオフ値については、一般的には設定されていません。
PGCモラールスケールの信頼性
PGCモラールスケールの信頼性については、研究によって異なりますが、一般的には高いとされています。
PGCモラールスケールに関する疑問
ここではPGCモラールスケールに関するよくある疑問について解説します。
そもそもモラールとは?
「モラール」は元々、戦場や職場などでの兵員や従業員の士気を表す言葉でした。
この概念は、集団のメンバーが信頼し、自身の役割に自信を持ち、共通の目標に対する熱意や忠誠心を持つ心理的な状態を指します。
つまり科学的な概念として、一定の状況下で働く人々の内面的な態度を指します。
なお、「モラール」は「モラル」とは異なり、後者は道徳的な概念を指します。
PGCモラールスケールは17項目?11項目?
PGCモラールスケールは、開発当初は22項目からなる尺度でしたが、17項目版に改定されました。
近年は高齢者にとってより負担が少ない11項目版である改訂PGCモラールスケールが普及しています。
PGCモラールスケールの2件法とは?
PGCモラールスケールの解説に”2件法で答える”と記載があります。
端的に言えば、「はい」または「いいえ」で回答することになります。
モラールの高い方へ1点、そうでない方に0点を与えることになります。