Place-then-trainモデルは、まず就職し、その後職場で必要なスキルを習得する就労支援アプローチです。
早期の社会復帰や実践的な学びを重視し、個別サポートを行う点が特徴です。
本記事ではこのモデルの特徴やメリット、デメリットなどについて解説します。
place-then-trainモデルとは?
Place-then-trainモデルは、就労支援において、まず就職し、その後職場で必要なスキルを習得するというアプローチです。
このモデルは、従来の訓練後に就職するtrain-then-placeモデルに対する新しい考え方として注目されています。
特徴的なのは、訓練を経ずに実際の職場で働きながらスキルを習得するため、実践的な環境での学びが重視される点です。
ちなみに、反対の意味である「保護的環境でトレーニングをして準備性を身につけてから就職する就労支援のモデル」は“train-then-placeモデル:早く現場に出て仕事に慣れる”になります。
place-then-trainモデルの特徴
place-then-trainモデルは、従来の訓練してから就職するモデルとは異なり、まずは仕事に就いてから、その職場で必要なスキルを習得するというアプローチを取る就労支援モデルです。
このモデルの特徴を以下にリストアップします。
- 迅速な就職
- オン・ザ・ジョブ・トレーニング
- 継続的なサポート
- リカバリーモデル
- 個別対応
…について解説します。
迅速な就職
Place-then-trainモデルの特徴の一つは、迅速に就職を実現する点です。
求職者の好みや長所に基づき、まずはその人に合った職場に就職することで、仕事を通じた成長を促します。
従来の訓練が長期化するモデルとは異なり、早期に実際の仕事に取り組むため、スムーズな社会参加が可能です。
このアプローチにより、特に障害者や長期失業者など、すぐに実社会に戻ることが重要な人々の支援が効果的です。
迅速な就職を通じて、早期に経済的自立や生活の安定を図ることができます。
オン・ザ・ジョブ・トレーニング
Place-then-trainモデルでは、職場での実務を通じてスキルを習得します。
これは、訓練期間を短縮し、できるだけ早く実際の仕事に就けるようにするための重要な要素です。
オン・ザ・ジョブ・トレーニングでは、理論的な知識だけでなく、実際の職務に直結する実践的なスキルを学ぶことができるため、即戦力としての価値も高まります。
また、職場での実務経験を通じて、自身のスキルや適性を確認しながら成長することができるため、実践的かつ持続的な能力向上が期待されます。
これにより、求職者の自信やモチベーションも高まります。
継続的なサポート
就職後にも継続的なサポートが提供されることが、place-then-trainモデルの強みです。
職場での実務をこなす中で不足しているスキルや知識が明確になり、それに基づいてトレーニングが実施されます。
また、求職者が直面する課題や困難に対して、ジョブコーチや支援スタッフが適切に対応し、問題解決をサポートします。
これにより、仕事に慣れるまでの不安やストレスが軽減され、職場での安定したパフォーマンスを発揮できるようになります。
継続的な支援があることで、長期的な就労の維持にもつながります。
リカバリーモデル
リカバリーモデルとは、就労がリカバリー(回復)の重要な要素であるとする考え方に基づいています。
Place-then-trainモデルは、まず仕事に就くことで社会的役割を取り戻し、自己効力感や達成感を高めることを重視します。
このアプローチは、特に精神障害を抱える人々に対して効果的であり、働くことが精神的な回復を促進する手段として位置づけられています。
また、リカバリーモデルは楽観主義的な視点を取り入れており、個々の可能性を信じ、長期的な成長を支援します。
この考え方が、継続的な就労と社会復帰を成功させるための鍵となっています。
個別対応
個々のニーズに合わせた支援が、place-then-trainモデルのもう一つの大きな特徴です。
求職者の特性や能力に応じて、職場環境の調整やジョブコーチによるサポートが提供されます。
例えば、障害を抱える求職者には、必要に応じて作業手順の簡素化や柔軟な働き方の提案が行われます。
また、個別対応により、求職者が自分のペースでスキルを向上させることができ、無理なく仕事を続けられる環境が整います。
これにより、長期的な就労維持と成長を支える効果的なサポートが実現されます。
Place-then-trainモデルのメリット
place-then-trainモデルは、従来の訓練してから就職するモデルとは異なり、まずは仕事に就いてから、その職場で必要なスキルを習得するというアプローチを取る就労支援モデルです。
このモデルには、多くのメリットがあります。
ここでは…
- 社会復帰へのスムーズな移行:
- モチベーションの向上
- 自己効力感の向上
- 柔軟な対応
- 継続的なサポート
- 個別対応
…について解説します。
社会復帰へのスムーズな移行
Place-then-trainモデルの大きなメリットの一つは、社会復帰がスムーズに進む点です。
訓練施設からの移行に伴うギャップが小さくなり、求職者は実際の職場環境に早期から慣れることができます。
これにより、社会参加への不安やストレスが軽減され、求職者は実務を通じて自分の役割を確認しつつスムーズに働き始めることが可能です。
また、訓練と仕事を切り離すのではなく、同時進行で行うことで、現実的なスキルアップが可能です。
社会との接点を早期に持つことが、社会的孤立感を防ぎ、迅速な社会復帰をサポートします。
モチベーションの向上
実際の仕事を通じて達成感や自信を得ることは、モチベーションの向上に大きく寄与します。
place-then-trainモデルでは、職務に直接関わることで成果を実感しやすく、自己成長を促す環境が整っています。
この実践的なアプローチは、仕事への意欲を持続させるだけでなく、長期的なキャリア形成に向けたモチベーション維持にもつながります。
また、仕事に対するフィードバックをすぐに得ることができるため、自分の進歩を確認しながら取り組むことが可能です。
これにより、やりがいを感じやすく、積極的な姿勢を保ちながら働くことが期待されます。
自己効力感の向上
Place-then-trainモデルでは、早期に就職し、実際の職場で成功体験を積むことで自己効力感が高まります。
実際の仕事で成果を上げることで、自分ができることを実感でき、その結果、自信を持つようになります。
この自己効力感の向上は、さらなる挑戦への意欲を引き出し、職場でのスキルアップやキャリアの発展に繋がります。
また、仕事で成功を体験することで、自らの成長を実感し、それがさらに前向きな行動に結びつくという好循環が生まれます。
自己効力感が高まることで、長期的な就労維持も期待できます。
柔軟な対応
Place-then-trainモデルは、変化の激しい社会に対応するための柔軟性を持っています。
職場での状況に応じて、その場で必要なスキルを習得できるため、時代や業界の変化に素早く適応することが可能です。
また、職場ごとに異なるニーズに合わせた対応ができるため、より実践的で効果的なトレーニングが行えます。
このアプローチは、従来の訓練で固定されたスキルに縛られず、常に新しい能力を開発する余地があるため、長期的な職場での成長にもつながります。
こうした柔軟な対応力は、将来のキャリアアップにも大いに役立ちます。
継続的なサポート
就職後にも継続的なサポートが提供されることは、place-then-trainモデルの大きな強みです。
職場に適応するまでのサポートが充実しているため、就職直後の不安やストレスが軽減され、スムーズな職場定着が期待されます。
また、働きながら必要なスキルを学ぶプロセスにおいて、支援者からのフィードバックやアドバイスを受けられるため、効率的な成長が可能です。
この継続的なサポートにより、職場での課題を適時解決でき、就労の安定性が高まります。
長期的に仕事を続けるための基盤作りに貢献します。
個別対応
個別対応が可能な点もplace-then-trainモデルの重要なメリットです。
各個人のニーズや特性に応じて、ジョブコーチや支援者が柔軟に対応するため、求職者は自分に最適なサポートを受けられます。
例えば、職場での作業に慣れるまでのサポートや、困難な業務に対する工夫など、個別の状況に合わせた支援が行われます。
これにより、無理なくスキルを習得し、自信を持って仕事を続けることができます。
個別対応の柔軟さが、より効果的な就労支援を可能にし、求職者の職場定着率を高める要因となります。
Place-then-trainモデルのデメリット
place-then-trainモデルは、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
以下に、place-then-trainモデルのデメリットとして…
- 企業側の負担
- 個人の負担
- 支援者の負担
- 評価の難しさ
…について解説します。
企業側の負担
Place-then-trainモデルにおいて、企業は新入社員の初期研修に追加のコストをかける必要があります。
新人が実務を通してスキルを習得する間、生産性が一時的に低下することも避けられません。
また、新入社員を指導するために、既存の従業員が指導に時間を割かなければならず、業務負担が増加する可能性があります。
このため、企業側にとっては、新人育成の負担が大きくなるリスクがあるのです。
これらの負担を軽減するためには、研修体制やサポート体制の整備が求められます。
個人の負担
新しい職場にすぐに適応できない場合、個人にとって精神的なストレスが大きくなる可能性があります。
特に、職場での人間関係や業務内容に不適応を感じる場合、ストレスが蓄積し、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすことも考えられます。
また、短期的なスキル向上に集中しがちなため、長期的なキャリアパスを描くのが難しくなることも課題です。
特に、専門性を高めるための訓練が不足する場合、将来のキャリア形成に不安を感じるかもしれません。
このため、個人の負担軽減のために、メンタルサポートやキャリア相談が重要になります。
支援者の負担
Place-then-trainモデルでは、個別に対応する必要があるため、支援者の負担も大きくなります。
各個人の特性に応じたサポートを提供するために、支援者は十分な時間とリソースを割かなければならず、そのために他の業務に支障が出る可能性があります。
また、職場との密な連携が必要であり、連絡や調整に時間がかかることも支援者にとって負担となる要因です。
こうした負担が蓄積すると、支援者自身のストレスや業務効率の低下につながるリスクもあります。
適切な支援体制を確立することが、支援者の負担軽減のカギとなります。
評価の難しさ
Place-then-trainモデルの効果を測定することは、従来の方法と比べて複雑です。
職場での学習効果や成長度合いを、明確に定量化することが難しく、どのように評価するかが課題となります。
また、成功事例と失敗事例を比較して要因を分析することも容易ではありません。
何が成功の要因であり、どこに改善の余地があるのかを把握するためには、より詳細なデータ収集と分析が求められます。
この評価の難しさを克服するためには、定期的なフィードバックや長期的な追跡調査が有効となるでしょう。