QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)は、うつ病の重症度を評価するための16項目の自己記入式評価尺度です。
各項目の点数を合計し、うつ病の重症度を判定します。
本記事ではこの特徴や点数、評価方法や信頼性などについて解説します。
QIDS-Jとは
QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)は、うつ病の重症度を評価するための16項目の自己記入式の評価尺度です。
この尺度は、睡眠、食欲、精神運動状態、その他の項目を評価し、各項目の得点を合計して0から27点の範囲で重症度を判定します。
得点に基づき、正常(0-5点)、軽度(6-10点)、中等度(11-15点)、重度(16-20点)、きわめて重度(21-27点)の5段階に分類され、6点以上の場合には医療機関への相談が推奨されます。


QIDS-Jの特徴
QIDS-Jの特徴として、ここでは…
- 16項目の自己記入式評価
- 重症度の判定
- 診断基準との対応
- 広範な症状のカバー
- スクリーニングと経過観察に有用
…について解説します。
16項目の自己記入式評価
QIDS-Jは、うつ病の重症度を評価するための自己記入式評価尺度であり、16項目で構成されています。
この尺度は、患者が自身の症状を直接評価し、各項目について自己報告する形式を取っています。
これにより、医療従事者は患者の主観的な感覚や症状の深刻度を理解しやすくなります。
自己記入式であるため、患者は医療機関での対面診療時だけでなく、自宅でも評価を行うことができます。
また、自己記入式のため、時間やコストの効率性が高く、迅速な評価が可能です。
重症度の判定
QIDS-Jは、各項目の得点を合計してうつ病の重症度を判定します。
得点範囲は0から27点までで、得点に基づいて重症度を5段階に分類します。
具体的には、0-5点が正常、6-10点が軽度、11-15点が中等度、16-20点が重度、21-27点がきわめて重度とされています。
この明確な基準により、患者自身や医療従事者が症状の重さを簡単に把握できます。
さらに、得点の変化を追うことで、治療の効果や症状の進行状況を評価することができます。
診断基準との対応
QIDS-Jは、アメリカ精神医学会の診断基準DSM-IVの大うつ病性障害の診断基準に対応しています。
これにより、診断の一貫性が保たれ、国際的に標準化された基準に基づいた評価が可能となります。
DSM-IVに準拠しているため、QIDS-Jの結果は他の診断ツールや臨床評価とも整合性を持たせやすくなります。
また、この対応により、診断の信頼性と妥当性が高まります。
結果として、医療従事者はQIDS-Jを用いて正確かつ信頼性の高い診断を行うことができます。
広範な症状のカバー
QIDS-Jは、睡眠、食欲、精神運動状態など、うつ病のさまざまな症状を評価するよう設計されています。
具体的には、睡眠に関する項目(第1-4項目)、食欲/体重に関する項目(第6-9項目)、精神運動状態に関する2項目(第15、16項目)を含んでいます。
このように、多様な症状をカバーすることで、うつ病の全体像をより正確に捉えることができます。
また、特定の症状が他の症状にどのように影響を与えているかを把握するのにも役立ちます。
これにより、より総合的で個別化された治療計画を立てることができます。
スクリーニングと経過観察に有用
QIDS-Jは、うつ病のスクリーニングツールとしても経過観察ツールとしても非常に有用です。
初回診察時にQIDS-Jを用いることで、患者がうつ病の可能性があるかどうかを迅速に判断することができます。
また、治療中の患者に対して定期的にQIDS-Jを実施することで、症状の変化や治療効果を継続的にモニタリングすることができます。
これにより、治療の進行状況を把握し、必要に応じて治療方針を調整することが可能です。
さらに、患者自身も自身の症状の変化を自覚しやすくなり、治療への意欲を高める効果があります。


QIDS-Jの各項目
QIDS-Jの各項目は以下の通りです。
- 寝つき:寝つくのにかかる時間を評価します。
- 夜間の睡眠:夜間に目が覚める頻度とその持続時間を評価します。
- 早く目が覚めすぎる:起きなければならない時間より早く目が覚める頻度を評価します。
- 眠りすぎる:1日のうちに眠っている時間を評価します。
- 悲しい気持ち:悲しいと感じる時間の割合を評価します。
- 食欲低下:食欲が減ったと感じる程度を評価します。
- 食欲増進:食欲が増えたと感じる程度を評価します。
- 体重減少:最近2週間で体重が減った程度を評価します。
- 体重増加:最近2週間で体重が増えた程度を評価します。
- 集中力/決断:集中力や決断力が低下したと感じる程度を評価します。
- 自分についての見方:自己評価が低下したと感じる程度を評価します。
- 死や自殺についての考え:死や自殺について考える頻度を評価します。
- 一般的な興味:一般的な興味が減少したと感じる程度を評価します。
- エネルギーのレベル:エネルギーレベルが低下したと感じる程度を評価します。
- 動きが遅くなった気がする:思考や行動の速度が遅くなったと感じる程度を評価します。
- 落ち着かない:落ち着かない感じがする程度を評価します。


QIDS-Jの方法
このQIDS-Jの使用方法ですが、ここでは…
- 準備
- 自己記入
- 項目の点数化
- 合計点の計算
- 重症度の評価
…というステップ別で解説します。
準備
QIDS-Jを実施する前に、患者には評価尺度の目的と方法について簡単に説明します。
患者が質問項目の意図を理解しやすくするために、医療従事者がサポートを提供することが重要です。
また、質問に対する回答は個人的な感覚や経験に基づくため、患者がリラックスした状態で回答できる環境を整える必要があります。
評価用紙やデジタルフォームが準備されていることを確認し、患者が質問に答える際に必要な時間(通常10~15分程度)を確保します。
最後に、患者に対して、正直かつ正確に回答することの重要性を強調します。
自己記入
患者はQIDS-Jの16項目に対して、過去2週間の自身の状態を振り返りながら回答します。
各項目には複数の選択肢があり、最も当てはまるものを選ぶ形式です。
質問項目は睡眠、食欲、体重変化、精神運動状態、集中力、気分、自殺念慮など、うつ病の主要な症状に関するものです。
自己記入式のため、患者は自分のペースで回答でき、プライバシーが保たれやすいという利点があります。
また、このプロセスにおいて患者が自己観察を深め、自身の症状を再認識する機会ともなります。
項目の点数化
各質問項目には0から3のスコアが割り当てられており、患者が選んだ選択肢に応じて点数が決まります。
項目ごとに最も点数が高いものを1つだけ選んで点数化します。
例えば、睡眠に関する4つの質問の中で、最も高い点数のものを採用します。
点数化のプロセスは、各症状の重さを適切に反映させるために重要です。
また、点数をつける際には、医療従事者が患者の回答を正確に解釈し、適切なスコアを割り当てることが求められます。
このステップが正確であることが、全体の評価の信頼性を高めます。
合計点の計算
各項目のスコアを合計して、QIDS-Jの総得点を算出します。
合計点は0から27点の範囲で、すべての項目のスコアを足し合わせた結果です。
この合計点が、患者のうつ病の重症度を評価するための基本データとなります。
医療従事者は、合計点を計算した後、その点数がどの重症度カテゴリーに該当するかを判断します。
この過程において、計算ミスがないように注意深く確認することが重要です。
また、計算結果を患者に伝える際には、点数の意味や次のステップについても明確に説明します。
重症度の評価
合計点に基づき、うつ病の重症度を5つのカテゴリー(正常、軽度、中等度、重度、きわめて重度)に分類します。
具体的には、0-5点が正常、6-10点が軽度、11-15点が中等度、16-20点が重度、21-27点がきわめて重度とされます。
これにより、患者の現在のうつ症状の深刻さが明確になります。医療従事者は、この評価結果を基に、適切な治療計画を立てることができます。
また、重症度の評価は、治療の効果をモニタリングし、必要に応じて治療方針を調整するための指標としても役立ちます。
評価結果は、患者とのコミュニケーションを深め、治療に対する理解と協力を得るための重要な情報となります。


QIDS-Jのカットオフ値
QIDS-Jのカットオフ値は以下の通りです。
- 0 – 5点:正常
- 6 – 10点:軽度のうつ病
- 11 – 15点:中等度のうつ病
- 16 – 20点:重度のうつ病
- 21 – 27点:きわめて重度のうつ病


QIDS-Jの信頼性
QIDS-Jの信頼性についてはいくつかの研究によって支持されています。
ここでは…
- 内的整合性
- 再テスト信頼性
- 妥当性
- 臨床的有用性
- 国際的な使用
…について解説します。
内的整合性
QIDS-Jは、各項目間の一貫性が高いことが示されており、クロンバックのα係数が高い値を示すことが多いです。
これは、質問項目が同じ概念(うつ症状)を測定していることを示しており、評価結果が一貫していることを意味します。
再テスト信頼性
QIDS-Jは、時間をおいて再度実施した際にも安定した結果を示すことが報告されています。
再テスト信頼性が高いことは、同じ患者が異なる時期に評価を受けても、症状の変化を反映した一貫した結果が得られることを意味します。
妥当性
QIDS-Jの評価結果は、他のうつ病評価尺度(例:HAM-DやBDI)と高い相関を示しており、これによりQIDS-Jの構成概念妥当性が確認されています。
つまり、QIDS-Jは他の信頼性のある評価尺度と同様に、うつ病の重症度を適切に測定することができます。
臨床的有用性
QIDS-Jは、臨床現場での使用においても有用であることが証明されています。
簡便かつ迅速に実施できるため、診察時の時間的負担を軽減しつつ、正確な症状評価を提供します。
患者自身が記入する形式であるため、患者の主観的な症状把握も容易です。
国際的な使用
QIDS-Jは、日本だけでなく多くの国々で使用されており、その信頼性と妥当性は国際的にも認められています。
多言語での翻訳版が作成されており、各国の臨床現場で利用されています。


QIDS-Jの評価用紙(pdf)
QIDS-Jの評価用紙(PDF)は、以下のリンクからダウンロードできます。
このリンクから、QIDS-Jの詳細な質問項目と評価方法が記載されたPDFを入手することができます。
評価用紙を印刷して、自己評価や医療機関での診断に使用することが可能です。