脳卒中などによって生じる障害によって運転免許の拒否や取り消しになる場合があります。
でも、自動車運転支援や運転リハビリを行っていても、具体的な症状でどのような場合にひっかかるのかについては曖昧だったりします。
そこで今回は運転免許の拒否や取り消しになる症状について解説します。
運転免許の拒否、取り消しになる症状について
結論から言えば、運転免許の拒否や取り消しになるものは次の症状に当てはまる場合になります。
1.意識障害,見当識障害,記憶障害,判断障害,注意障害等で,主治医が『安全な運転に必要な能力を欠いている』『6ヶ月以内に回復の見込みがない』と診断した場合
2.以下の身体障害者
- 目が見えない方
- 体幹の機能に障害があって,腰をかけていることができない方
- 四肢の全部を失ったもの又は四肢の用を全廃した方
- 上記のほか,自動車等の安全な運転に必要な認知又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる方(条件を付し,又は変更することにより,その能力が回復することが明らかなものを除く)
以下にそれぞれ解説します。
1. 意識障害,見当識障害,記憶障害,判断障害,注意障害等~
この症状は主に脳卒中などによる中枢性疾患からくる高次脳機能障害でみられる症状になります。
しかし高次脳機能障害である各症状と自動車運転の関係については確定した医学的知見はありませんが、日本身障運転者機構では、この高次脳機能障害の症状は以下のような影響を与えると考えているようです。
- 運転中に行うべき多様な安全確認ができない。特に複数の注意を同時に確認できない(信号と歩行者・信号と対向車など):注意障害
- 目的地を忘れる:記憶障害
- 視野が狭くなり信号や標識、歩行者を見落とす:視野障害
- 事故発生時の救護義務が果たせない:失語症
- 障害があることを本人が自覚できず慎重な運転が出来ない:病識の低下
- センターラインを越えたり、歩道に乗り上げたりする。並走するバイクや自転車に気づかない:半側空間失認・無視
引用:日本身障運転者機構
またこれらの症状の種類と程度と運転の可否は、主治医の判断によるところがあります。
現段階の状態と今後回復の予後予測などは、リハビリ担当である作業療法士からしっかりと医師への情報伝達が必要な場面も多くあります。
目が見えない方
自動車運転は視覚に依存するものが多いことからも、明らかな視覚障害では運転免許の拒否や取り消しにつながってしまいます。
体幹の機能に障害があって,腰をかけていることができない方
運転席で運転する際に座位を保つことができる…というのは最低限必要な身体機能と言えます。
四肢の全部を失ったもの又は四肢の用を全廃した方
片麻痺のように上肢、下肢の一部の機能障害の場合は、環境設定などによって代替手段もありますが全廃となると運転の継続は厳しい…と判断される場合が多いようです。
自動車等の安全な運転に必要な認知又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる方
これは高齢ドライバーの認知症にも当てはまります。
やはり他者を巻き込んでの事故の可能性もあるという点では、この判断は非常に慎重にするべき点だと思います。
その症状は回復段階か、慢性化しているかの判断が大事
高次脳機能障害についても身体機能についても、その症状が回復段階であるのか、それとも症状固定がされ障害として残存しているのか…の判断が、運転免許の継続or拒否・取り消しのポイントになってきます。
その為にはその疾患と症状の予後予測をしっかり把握し、経時的な神経心理学検査を実施する必要があると言えます。
加えて、再発のおそれがあるものとして主治医が「今後○○年程度であれば,再発の恐れの観点からは,運転を控えるべき…とはいえない」といった診断を行った場合,運転免許センターでは,一定期間(○○年)後に臨時適性検査を行い再度,運転の可否について判断する…という措置を取るケースもあるようです。
まとめ
今回は運転免許の拒否や取り消しになる症状について解説しました。
運転免許の拒否、取り消しの判断をする場合、医師にとっても担当する作業療法士にとっても非常に判断が難しい場合が多くあります。
上記のような症状と、予後予測を踏まえたうえで適切な判断をする…というのが最善の方法なのかもしれませんね。