遠隔診療サービスとは、患者が自宅で測定したバイタルデータを医療従事者と遠隔で共有し、慢性疾患の経過管理やモニタリングを行う方法です。
本記事ではこのメリット、デメリットや診療報酬との関連性などについて解説します。
遠隔診療サービスとは
遠隔診療サービス(Remote Patient Monitoring;RPM)とは、患者が自宅で測定したバイタルデータ(血圧、心拍数、血糖値、酸素飽和度など)を医療従事者と遠隔で共有し、慢性疾患の経過管理やモニタリングを行う方法です。
これにより、通院時だけでは確認しづらかった身体の変化や、投薬効果をタイムリーに把握することができ、医師の治療や診断、投薬指導を支援します。
さらに、遠隔診療サービスは、従来の医療環境を超えて生理学的データを測定・送信する技術のことで、患者に高い水準の医療を提供しながら医療費を削減するための有望なソリューションとして注目されています。
遠隔診療サービスのメリット
では、この遠隔診療サービスにはどのようなメリットがあげられるでしょうか?
ここでは…
- 患者の負担軽減
- 定期的な治療が可能
- 感染症の予防
- 事務の負担軽減
- 遠隔地の患者も受診できる
…について解説します。
患者の負担軽減
遠隔診療サービスは、通院の必要がなくインターネット環境さえ整っていれば場所を問わず診察が可能なため、患者の負担を大幅に軽減します。
これにより、診察のための移動時間や待ち時間が発生せず、特に高齢者や交通手段が限られている人々にとって非常に便利です。
また、通院が難しい病状の患者や、育児や仕事で忙しい人々も自宅から診療を受けられるため、医療アクセスが向上します。
定期的な治療が可能
遠隔診療サービスを利用することで、仕事やプライベートで忙しい方でも、時間を確保しやすくなり、定期的に治療を受けることが容易になります。
従来の通院治療ではスケジュール調整が難しい場合でも、オンライン診療ならば柔軟な時間帯で診察を受けることができるため、継続的なケアが可能になります。
これにより、慢性疾患の管理や予防的な健康管理がスムーズに行われ、治療の質が向上します。
感染症の予防
遠隔診療サービスは通院の必要がないため、患者と医師の直接接触を避けることができ、感染症の予防に大いに役立ちます。
特にインフルエンザやCOVID-19の流行時には、医療機関への通院がリスクを伴うため、遠隔診療のメリットが顕著です。
また、待合室での他の患者との接触を避けることができるため、病院内での感染リスクも低減します。
これにより、患者と医師の安全を確保しつつ、必要な医療を提供することが可能です。
事務の負担軽減
遠隔診療サービスは予約、受付、会計などの手続きをすべてインターネット上で完結できるため、医療機関の事務担当者の負担を大幅に軽減します。
従来の対面診療では、患者対応や事務手続きに多くの時間と労力が必要ですが、遠隔診療ではこれらのプロセスが自動化され、効率化が図れます。
また、デジタル化された記録管理により、医療情報の保存や検索が容易になり、業務の効率が向上します。
結果として、医療スタッフはより多くの時間を患者ケアに充てることができます。
遠隔地の患者も受診できる
遠隔診療サービスは、地理的な制約を超えて診察を受けられるため、遠隔地や医療資源が限られた地域に住む患者も質の高い医療を受けることができます。
都市部の医療機関へのアクセスが難しい地域や、専門医が不足している地域に住む患者にとって、遠隔診療は貴重な医療アクセス手段です。
また、緊急時や移動が困難な状況でも迅速に診察を受けられるため、患者の安心感と治療の継続性が向上します。
これにより、医療の地域格差を縮小し、より多くの人々に適切な医療サービスを提供することが可能になります。
遠隔診療サービスのデメリット
では逆に遠隔診療サービスによって生じる可能性があるデメリットとはなにがあげられるでしょうか?
主なものとして…
- 導入コストが必要
- ICT環境に不慣れな人の作業が難しい
- 診断のための情報が十分に得られない場合がある
- 処置や検査ができない
- セキュリティ面の不安がある
- 通信不良により診察を行えない場合がある
…について解説します。
導入コストが必要
遠隔診療サービスやRemote Patient Monitoring(RPM)の導入には、初期投資が必要です。
これには、必要なハードウェア(例えば、患者が自宅で使用する医療機器やセンサー)、専用のソフトウェア、システムの設定および維持管理のコストが含まれます。
特に中小規模の医療機関や、予算が限られている施設にとっては、この初期費用が大きな負担となる可能性があり、導入の障壁となることがあります。
ICT環境に不慣れな人の作業が難しい
遠隔診療サービスを効果的に活用するためには、医師や患者がシステム利用に慣れる必要があります。
特に高齢者やテクノロジーに不慣れな患者にとって、新しい機器やソフトウェアを使用することは難しく、抵抗感を持つ場合があります。
また、医療従事者側も新しいシステムに適応するためのトレーニングが必要となり、そのための時間と労力も考慮しなければなりません。
診断のための情報が十分に得られない場合がある
遠隔診療サービスでは、医師が直接患者を診察するわけではないため、診断に必要な情報が十分に得られない場合があります。
例えば、患者の表情や仕草、触診による感覚など、対面診療で得られる重要な情報が欠けることがあります。
また、患者が正確にデータを測定・報告できない場合や、システムの不具合が発生する場合もあり、その結果として診断の精度が低下する可能性があります。
処置や検査ができない
RPMは遠隔で行われるため、医師が直接的な医療処置や特定の検査(血液検査、画像検査など)を行うことができません。
これにより、緊急の医療処置が必要な場合や、詳細な診断が必要な場合には、対面診療が不可欠となります。
また、遠隔診療では、機器の操作ミスやデータの誤解釈が発生するリスクもあり、患者の安全性が懸念されることもあります。
セキュリティ面の不安がある
遠隔診療サービスでは、患者の個人情報や医療情報を遠隔で送受信するため、データのセキュリティが非常に重要となります。
適切なセキュリティ対策が施されていない場合、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まり、患者のプライバシーが侵害される可能性があります。
また、サイバー攻撃の対象となることもあり、医療機関は高度なセキュリティ対策を講じる必要があります。
通信不良により診察を行えない場合がある
遠隔診療サービスの効果的な運用には、安定した通信環境が不可欠です。
しかし、インターネット接続が不安定な地域や、通信障害が発生した場合には、適切な診察を行うことができない可能性があります。
特に、緊急時や重要なデータの送受信が必要な際に通信が途絶えると、医療提供に重大な支障をきたす恐れがあります。
遠隔診療と診療報酬について
ここでは遠隔診療と診療報酬の関連についてですが、ここでは主なものとして…
- 診療報酬の改定
- 診療報酬の評価
- 診療報酬の補填
- 診療報酬の見直し
…という視点で解説します。
診療報酬の改定
令和6年度の診療報酬改定では、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要なテーマとなっており、その一環として遠隔診療の推進も重視されています。
これにより、遠隔診療がより広く普及しやすくなることが期待されており、技術の導入や利用が促進されるでしょう。
この改定は、患者にとっても医療機関にとっても利便性や効率性の向上を目指しており、医療提供の新しい形態が社会全体で受け入れられるよう支援しています。
診療報酬の評価
遠隔診療は、医療の質の向上、患者の利便性の向上、そして地域医療の充実を目指す取り組みとして評価されています。
このため、診療報酬の評価においても、遠隔診療の効果や貢献度が重要な要素として考慮されます。
具体的には、遠隔診療を通じた患者満足度の向上や、医療アクセスの改善、医療リソースの効率的な活用などが評価基準となり、適切な報酬が設定されるようになります。
診療報酬の補填
現行の制度では、遠隔診療の診療報酬は対面診療と比較して少なく設定されることがあり、これが医療機関の収益に影響を与えることがあります。
しかし、その不足分は、病院が独自に設定できる予約料などの追加料金で補填することが可能です。
これにより、医療機関は遠隔診療を提供しながらも経済的な安定を図ることができ、患者に対しても継続的な医療サービスを提供することが可能となります。
診療報酬の見直し
2018年度の診療報酬改定では、遠隔診療に関する報酬の見直しが行われ、改善の見通しが立てられました。
この改定により、遠隔診療の利用が促進され、医療機関がより積極的に遠隔診療を導入する動機づけが強化されました。
これによって、医療アクセスの向上や患者の利便性の向上が期待され、遠隔診療が医療提供の重要な一環として認識されるようになりました。