成熟度モデルの6段階は、組織やシステムのプロセスがどれだけ標準化され、最適化されているかを評価するためのフレームワークです。
各段階で求められるアクションや改善点が明示されています。
本記事ではこのモデルの特徴や具体例について解説します。
成熟度モデルの6段階とは
成熟度モデルの6段階は、組織や業務プロセスの標準化と最適化の程度を評価するためのフレームワークです。
プロセス改善や組織のマネジメントにおいて広く利用されており、現状の把握と目標設定に役立ちます。
具体的には…
- レベル0:プロセス不在
- レベル1:初期/個別対応
- レベル2:再現可能
- レベル3:プロセスが定義されている
- レベル4:管理/測定可能
- レベル5:最適化
…になります。
それぞれ解説します。
レベル0:プロセス不在
レベル0では、業務プロセスという概念が存在しておらず、組織全体が無秩序な状態にあります。
この段階では、業務の流れや手順が明確に定義されていないため、業務が個々の裁量に依存しています。
結果として、業務の品質や効率性が大きくばらつき、問題や課題が発生してもそれを認識することが難しいです。
組織内で問題が頻発し、それらに対する一貫した対応が取れないため、業績の向上が期待できません。
この段階から脱却するためには、まず業務プロセスの存在を認識し、標準化への第一歩を踏み出すことが必要です。
レベル1:初期/個別対応
レベル1では、問題の存在や何らかの対応の必要性が認識されていますが、その対応はその場限りや個別のアプローチに頼っています。
標準化されたプロセスや全体的なマネジメントが存在しないため、各担当者が自分なりの方法で問題解決に取り組むことになります。
このため、対応の品質や効果が一貫せず、業務全体の効率性や効果が低下します。
また、ノウハウの共有が不十分であるため、新たな問題が発生するたびに同じ過ちが繰り返される可能性があります。
組織として成長するためには、標準化されたプロセスを導入し、統一的な対応を目指すことが重要です。
レベル2:再現可能
レベル2では、同じ業務を行う際に担当者が違っても同じ手順を踏むようになっています。
これは業務プロセスがある程度標準化されていることを意味しますが、標準プロセスの習得や情報共有が個人の裁量に依存しているため、必ずしも正確かつ効率的に伝達されない場合があります。
この段階では、ベテラン社員の知識や経験に頼ることが多く、新人が適切に業務を行うためには多くの時間と労力が必要です。
業務プロセスの標準化を進めるためには、明確な手順書の作成や定期的な研修の実施が求められます。
これにより、業務の再現性が向上し、組織全体の生産性が高まります。
レベル3:プロセスが定義されている
レベル3では、業務プロセスが標準化され、文書化されている状態です。
プロセスが明文化されているため、担当者がその手順に従って業務を行うことが期待されますが、その実行の遵守は個々人に委ねられているため、逸脱が発見されにくいです。
また、標準化された手順が既存のものに基づいているため、必ずしも最適化されていないことがあります。
この段階では、手順通りに業務が行われるかどうかの監視が不十分であり、改善の余地があります。
プロセスの有効性を検証し、継続的に改善していくための仕組みを構築することが重要です。
レベル4:管理/測定可能
レベル4では、定められた手順が遵守されているか否かをモニタリングすることが可能です。
業務プロセスの各段階でのパフォーマンスが測定され、手順通りでない場合には必要な措置が取られます。
また、手順自体の有効性も常に検証され、改良が加えられます。
部分的に自動化やツール化が行われており、業務の効率性が向上しています。
この段階では、業務プロセスの管理が徹底され、組織全体での一貫性が保たれます。
持続的な改善活動を通じて、業務の質と効率をさらに向上させることが可能です。
レベル5:最適化
レベル5は、業務プロセスが継続的なモニタリングと改善活動の結果、ベストプラクティスのレベルに達している状態です。
手順の最適化が進んでおり、組織全体での業務効率が最大化されています。
同時に、ITによる統合的な自動化が実現しており、ワークフローが高度に自動化されています。
この段階では、業務プロセスが最適化されているため、品質と効率性が極めて高いレベルで維持されています。
組織は、変化する環境に迅速に対応し、競争力を維持することが可能です。


成熟度モデルの6段階の具体例
成熟度モデルは様々な分野で適用されています。
ここではその例として…
- 生成AIシステムの成熟度モデル
- ITガバナンスにおける成熟度モデル
- 業務プロセスにおける成熟度モデル
…について解説します。
生成AIシステムの成熟度モデル
生成AIシステムの進化と成熟度を評価するための成熟度モデルは、AIソリューションが6つの明確なレベルの洗練度を通じて進化することを示しています。
レベル0では、生成AIの導入が全く行われておらず、その有用性や必要性が認識されていない状態です。
レベル1に進むと、初期的な導入や試験的な利用が行われており、個別のアプローチで生成AIが活用されています。
レベル2では、生成AIの利用が再現可能な形で定義され、特定の業務やプロジェクトで一貫した手順が適用されています。
レベル3に到達すると、生成AIのプロセスが文書化され、組織全体で共有されるようになります。
最終的にレベル5では、生成AIのプロセスが最適化され、継続的なモニタリングと改善により高度に自動化され、ビジネス目標を達成するための強力なツールとなっています。
ITガバナンスにおける成熟度モデル
成熟度モデルは元々、米国の情報システムコントロール協会とITガバナンス協会が提唱するITガバナンスの成熟度を測るフレームワークである「COBIT」の中で用いられていました。
このモデルは、ITガバナンスの各プロセスの成熟度を評価するために使用され、特に「計画と組織」ドメインにおける「PO8品質管理」プロセスでその価値を発揮します。
レベル0では、品質管理が全く行われておらず、計画的な品質改善の取り組みも存在しません。
レベル1に進むと、基本的な品質管理の取り組みが開始されますが、その範囲は限定的です。
レベル2では、品質管理のプロセスが再現可能な形で定義され、継続的な品質改善が行われます。
レベル3に到達すると、品質管理のプロセスが標準化され、組織全体で共有されるようになります。
レベル5では、品質管理が最適化され、ITガバナンスの全体的な効果を最大化するための重要な要素となります。
業務プロセスにおける成熟度モデル
業務プロセスの現状を評価し、目指すべきレベルを明確にするために成熟度モデルが使用されます。
レベル0では、業務プロセスの概念が存在せず、全く整理されていない状態です。
レベル1では、問題の存在が認識され、個別対応が行われますが、標準化されたプロセスは存在しません。
レベル2では、業務プロセスが再現可能な形で定義され、担当者が同じ手順を踏むようになります。
レベル3に進むと、業務プロセスが文書化され、標準化された手順が組織全体で共有されます。
レベル5では、業務プロセスが最適化され、継続的なモニタリングと改善活動により、最高の効率と品質が実現されます。
組織はこの成熟度モデルを使用することで、目指すべき成熟度レベルに到達するために必要なアクションを明確にし、業務効率を向上させる具体的な戦略を策定できます。


医療・介護分野における成熟度モデルの具体例
医療・介護分野においても成熟度モデルの適用例があります。
ここでは…
- 病院成熟度モデル (MMHF)
- 医療と介護の一体的な改革
…について解説します。
病院成熟度モデル (MMHF)
病院成熟度モデル(MMHF)は、地域医療システムにおける医療サービスのPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action)を推進支援するために開発されたものです。
このモデルを用いることで、医療施設管理者は自施設の業務プロセスを評価し、他施設をベンチマークとすることで自身の施設の相対的な位置付けを知ることができます。
具体的には、MMHFは医療施設の成熟度を6段階に分類し、各段階で求められる具体的なアクションや改善点を示します。
これにより、施設管理者は段階的な改善計画を策定し、継続的な品質向上を目指すことができます。
また、MMHFは医療サービスの品質と効率性を高めるための重要なツールとして機能し、地域全体の医療提供体制の強化にも寄与します。
医療と介護の一体的な改革
厚生労働省は、医療と介護の一体的な改革を推進し、これによりサービス提供体制の効率化と質の向上を目指しています。
この改革では、医療と介護の提供体制を取り巻く環境の変化に対応し、利用者のニーズに見合ったサービスが切れ目なく、かつ効率的に提供されることを目標としています。
具体的には、介護施設と医療機関の連携を強化し、利用者が必要とするサービスを適切なタイミングで受けられるようにすることが重要です。
成熟度モデルの考え方を応用することで、各施設や機関の現状を評価し、改善のための具体的なステップを明確にすることができます。
このような取り組みは、医療と介護の境界を超えたシームレスなサービス提供を実現し、高齢化社会における持続可能な医療・介護体制の構築に貢献します。

