S-H式レジリエンス検査は、個人の逆境から立ち直る力「レジリエンス」を測定する心理検査です。
本記事ではこの目的や特徴、実施方法などについて解説します。
S-H式レジリエンス検査とは?
S-H式レジリエンス検査(Sukemune-Hiew Resilience Test)は、個人が持つレジリエンス、すなわち逆境やストレスに対して立ち直る力を測定する心理検査です。
この検査は、広島大学の故祐宗省三名誉教授とカナダのニューブランズウィック大学のChok C. Hiew教授によって共同で開発されました。
目的
S-H式レジリエンス検査の目的は、個人が現代社会の様々なストレスや逆境に対してどのように対応し、立ち直る力(レジリエンス)を持っているかを測定し、理解することにあります。
その主な目的として、ここでは…
- 個人のレジリエンスの水準を把握する
- 対人関係や自己達成感など、レジリエンスに関わる要因を評価する
- ストレスや逆境への適応能力を強化する
- 教育や職場での適用
- レジリエンスとウェルビーイングの向上
…について解説します。
個人のレジリエンスの水準を把握する
レジリエンスは、ストレスや逆境から立ち直る能力を意味します。
この検査により、個人がどの程度レジリエンスを持っているか、その水準を客観的に評価することが可能になります。
これは、個人が自己の内面と向き合い、自己理解を深める機会を提供します。
また、個人が過去や現在において直面している問題に対してどのように対処しているかを理解する基盤を作ります。
対人関係や自己達成感など、レジリエンスに関わる要因を評価する
レジリエンスは、多くの要因によって形成されます。
S-H式レジリエンス検査は、対人関係や自己達成感、協調性、問題解決能力など、レジリエンスに寄与する要素を明らかにします。
これにより、個人がどの領域で強みを持ち、どこに課題があるのかを把握できるようになります。
その結果、自己の能力を最大限に活かし、課題に対して効果的な対策を講じるための指針を得ることができます。
ストレスや逆境への適応能力を強化する
S-H式レジリエンス検査は、ただ個人の現状を評価するだけでなく、レジリエンスを向上させるための具体的なフィードバックを提供します。
この検査を通じて、個人はストレスや逆境に対処するための新たな視点やスキルを学ぶことができます。
結果として得られるレーダーチャートは、自己の強みと弱みを視覚的に理解しやすくするため、今後の行動改善の参考になります。
教育や職場での適用
この検査は、高校生から社会人まで幅広く使用できるため、教育現場や職場でのストレスチェックやプレスクリーニングツールとして有効です。
学生の進学指導や職員の配置転換、採用選考など、個人の適性や能力を考慮した意思決定に役立ちます。
また、組織内でのコミュニケーションやチームワークの向上、個人のキャリア開発やメンタルヘルスの支援にも寄与します。
レジリエンスとウェルビーイングの向上
最終的に、S-H式レジリエンス検査の目的は、個人が自己のレジリエンスを理解し、それを強化することによって、より充実した社会生活や職業生活を送れるようにすることです。
個人のウェルビーイング(幸福感や満足度)の向上は、健全な社会を構築する上で重要な要素となります。
この検査は、個人が自己の内面と向き合い、成長するための一歩を踏み出すきっかけを提供します。
特徴
S-H式レジリエンス検査は、個人のレジリエンス、すなわち逆境からの回復力を測定するための心理検査です。
ここではその特徴として…
- 短時間で実施可能
- 自己採点式のシンプルな判定方法
- 外顕的態度志向と内潜的態度志向の評価
- 幅広い対象者に適用可能
- 経済的なコスト
…について解説します。
短時間で実施可能
S-H式レジリエンス検査の最大の特徴の一つは、約10分という短い時間で実施できる点です。
この短時間での実施は、受検者にとっての負担を軽減すると同時に、大人数のグループに対しても効率的に検査を行うことを可能にします。
この特性は、忙しい現代社会において、多くの企業や教育機関での利用のしやすさを意味します。
時間的制約がある環境でも、レジリエンスの測定を行いたい場合に、特に有効です。
自己採点式のシンプルな判定方法
検査後の判定が自己で行えるシンプルな採点方法を採用していることも、この検査の重要な特徴です。
これにより、受検者は直ちに自分のレジリエンス水準に関するフィードバックを受け取ることができます。
この即時性は、自己理解を深め、必要に応じて迅速に自己改善に取り組むことを促します。
また、専門的な知識がなくても採点と解釈が可能なため、幅広い場面での利用が容易になります。
外顕的態度志向と内潜的態度志向の評価
S-H式レジリエンス検査は、外顕的態度志向(実際の行動)と内潜的態度志向(内面の考え方や感情)の両面から個人のレジリエンスを評価することができる点が特徴です。
このアプローチにより、単に表面的な行動だけでなく、その背後にある思考や感情のパターンも考慮に入れて、より深いレベルでの理解が可能になります。
このように両面からの評価は、個人のレジリエンスを多角的に把握し、より具体的で実用的な支援を行うための基盤を提供します。
幅広い対象者に適用可能
文系・理系を問わず、高校生から社会人まで幅広い対象者に適用可能な点も、この検査の大きな特徴です。
さまざまな年齢層や背景を持つ人々が直面するレジリエンスに関わる課題は多様であるため、このように広い範囲の対象者に適用可能な検査ツールは、多くの場面での有効なレジリエンスの評価とサポートに役立ちます。
特に、教育機関や企業など、異なる背景を持つ人々が集まる環境での使用に適しています。
経済的なコスト
S-H式レジリエンス検査は、イニシャルコストが低く、コストパフォーマンスに優れている点も特徴の一つです。
検査を実施するために必要なのは、手引書と人数分の用紙のみであり、特別な機材やソフトウェアを必要としません。
この低コストでの実施可能性は、資源に限りのある小規模な組織や教育機関でも、レジリエンス検査を容易に取り入れることを可能にします。
これにより、多くの人々がレジリエンスに関する自己理解を深め、必要に応じて自己改善を図る機会を得ることができます。
適用範囲
S-H式レジリエンス検査の適用範囲は広く、文系・理系を問わず、高校生から社会人まで幅広い対象者に適用されます。
その範囲としては…
- 教育機関
- 企業・団体
- 公共・社会福祉機関
- 個人の自己成長と自己理解
…があげられます。
それぞれ解説します。
教育機関
高等学校: 生徒が直面する学業や進路選択、人間関係などのストレスに対処する力を測定し、サポートするために使用されます。
大学・短大: 学生のアカデミックなストレスやキャリアに関する不安、社会への適応能力を評価し、進学指導やキャリア支援に活用されます。
各種専門学校: 専門的な職業教育を受ける学生のストレス耐性や職業生活への適応力を把握し、指導やカウンセリングに役立てます。
企業・団体
採用・人事評価: 応募者や従業員のレジリエンスの水準を測定し、適切な採用、配置転換、人材育成プログラムの策定に利用されます。
ストレスマネジメント: 従業員のストレス耐性を評価し、職場のメンタルヘルス対策やウェルビーイングの向上に貢献します。
チームビルディング: チームメンバーのレジリエンスの強さを理解することで、チームの協力体制や問題解決能力を高めるための参考情報として活用されます。
公共・社会福祉機関
カウンセリングサービス: 個人のレジリエンスを評価し、カウンセリングや心理療法の方向性を決定するために用いられます。
社会福祉プログラム: 地域コミュニティのメンバーや特定のグループ(例えば、災害被災者や社会的弱者)のレジリエンスを支援し、彼らの生活の質を向上させるプログラムの開発に貢献します。
個人の自己成長と自己理解
自己啓発: 個人が自身のレジリエンスの水準を知り、自己成長やストレスマネジメントのための戦略を立てる際に役立ちます。
所要時間
S-H式レジリエンス検査の所要時間は約10分です。
この短時間で実施できる点は、この検査の大きな特徴の一つであり、受検者にとっての負担が少なく、大人数のグループに対しても効率的に検査を行うことが可能です。
実施方法
S-H式レジリエンス検査の実施方法は、その簡便さと効率性に重点を置いています。
実施方法ですが、ここでは…
- 準備
- 実施
- 採点
- フィードバックと解釈
…というステップにわけて解説します。
準備
検査実施前に、検査用紙や筆記用具を準備し、受検者に検査の目的と概要を説明します。
この段階では、受検者がリラックスして検査に臨めるような環境を整えることが重要です。
また、検査の進行に関する簡単なガイダンスを提供し、受検者が検査の各質問に対して正直に、かつ考えすぎずに回答することを奨励します。
準備段階は受検者の不安を和らげ、正確な結果を得るための基盤を作ります。
実施
受検者は、約10分間で検査用紙に記載された質問に回答します。
質問は、受検者のレジリエンスに関わるさまざまな側面、例えば対人関係の質、自己効力感、ストレスに対する対処方法などを探るものです。
受検者は、それぞれの質問に対して自身の感じ方や行動を反映する選択肢を選びます。
このプロセスは、受検者が自己のレジリエンスに関する深い自己理解を得る機会を提供します。
採点
検査終了後、受検者は提供された指示に従って自己採点を行います。
採点方法はシンプルであり、受検者は自分の回答に基づいて得点を算出し、レジリエンスの水準を自己評価します。
この自己採点プロセスは、受検者に即時的なフィードバックを提供し、自己のレジリエンスに関する直接的な洞察を得る機会を与えます。
フィードバックと解釈
採点後、受検者は得られたスコアをもとに、自身のレジリエンスの強みと改善点を理解します。
必要に応じて、専門家やカウンセラーがフィードバックセッションを提供し、スコアの詳細な解釈や個人のレジリエンスを向上させるための具体的なアドバイスを行います。
このステップは、受検者が自己のレジリエンスを積極的に向上させるための行動計画を立てるための基盤となります。