運動負荷試験は理学療法をはじめとしたリハビリテーションの場面で多くみられます。
本記事では…
- 運動負荷試験の定義
- 運動負荷試験の種類
…について解説します。
運動負荷試験とは?
運動負荷試験とは、運動中の心拍応答や心電図を観察することで、対象者がどの程度の運動強度まで運動を行うことができるかを評価する検査です。
つまり、運動耐容能や全身持久力、有酸素能力をみるためのテストになります。
運動負荷試験は、体力測定としてだけでなく、虚血性心疾患や不整脈の診断に用いられることもあります。
運動負荷試験の種類
この運動負荷試験にはいくつかの種類、様式があります。
ここでは…
- マスター法(マスターシングル負荷、マスターダブル負荷)
- トレッドミル法
- 自転車エルゴメーター法
- 6分間歩行
- 心肺運動負荷試験(CPX)
…について解説します。
マスター法(マスターシングル負荷、マスターダブル負荷)
“マスター法”とは運動負荷試験の一つで、心血管機能の評価や運動能力の診断に広く用いられている方法です。
被験者の心拍数や血圧の変化、疲労の程度などを観察することで、運動時の心血管応答や持久力、回復能力などを評価することが可能です。
また、運動負荷試験の結果は、運動療法の計画や心血管リスクの評価にも役立てられます。
このマスター法には、”マスターシングル負荷”と”マスターダブル負荷”の2つの方法があります。
マスターシングル負荷(Master Single Load)
この方法では、1分30秒で年齢、性別、体重によって決められた回数の階段昇降を行います。
運動中に心拍数や血圧、呼吸などの生理的パラメータが測定され、負荷に対する反応が評価されます。
マスターダブル負荷(Master Double Load)
マスターダブル負荷は、マスターシングル負荷よりも負荷を強めたい場合に採用されます。
この場合は3分間の階段昇降を行い、負荷に対する反応評価を行います。
トレッドミル法
“トレッドミル法“は、トレッドミル上で歩行することにより、運動中の心拍応答や心電図を観察し、対象者の運動強度の評価を行う検査です。
これによって運動耐容能や全身持久力、有酸素能力を評価することができます。
このトレッドミルによる運動負荷試験では、速度や傾斜を漸増させて調整し、3分ごとに運動強度を漸増させる”多段改漸増法”を用いることが一般的です。
またこの多段改漸増法には、Bruce法やNaughton法などがあります。
自転車エルゴメーター法
自転車エルゴメーター法は、自転車エルゴメーターを使用した運動負荷試験で、主に心機能の評価に利用されます。
負荷量は通常、wattまたはkpm/minの単位で表され、一定の負荷と速度で決められた時間にわたって運動を行い、負荷をかけます。
自転車エルゴメーター法は、外的負荷量を正確に定量化できるため、モニタリング指標の測定が容易であり、被験者の体位変動も少ない利点があります。
一方、トレッドミルと比べると、自転車エルゴメーター法では被験者がいつでも運動を中止できる、関与する筋群が少ない、負荷が上昇すると下肢の筋力制限があるなどのデメリットがあります。
自転車エルゴメーター法では、最大酸素摂取量がトレッドミルよりも低い場合があり、運動処方を行う際には運動の種類を考慮する必要があります。
ちなみに、下肢の使用が難しい対麻痺患者などでは上肢エルゴメーターを使用した運動負荷試験が行われます。
6分間歩行
6分間歩行テストは、6分間で出来るだけ速い速度で歩いた距離を求める運動負荷試験の一つです。
運動耐容能を評価するために行われますが、日常生活における機能障害の重症度の評価にも適しています。
心肺運動負荷試験(CPX)
心肺運動負荷試験(CPX:cardiopulmonary exercise test)は、呼気ガスモニターを使用して運動能力を評価する検査です。
呼気ガス分析から、運動負荷中の心臓、肺、筋肉の情報を推定します。
上述した自転車エルゴメーターやトレッドミルを使用して、限界までの運動負荷をかけます。