場合によっては重篤な状態になる”頭蓋内圧の亢進”。
本記事では…
- 頭蓋内圧亢進の定義
- 頭蓋内圧亢進による病態生理的変化
…について解説します。
頭蓋内圧の亢進とは?
頭蓋内圧(Increased Intracranial Pressure:ICP)の亢進は、頭蓋内の圧力が通常よりも高くなる状態を指します。
頭蓋内圧の正常域は、成人なら10~15mmHgと言われています(個人差はあります)1)。
この頭蓋内圧が何らかの原因によって20mmHg以上になるとICPと診断されることが多いです。
頭蓋内圧の亢進によって起こる影響
頭蓋内に存在するものとしては、大きく分けると…
- 脳組織(Brain Tissue:BT)
- 脳血管(Cerebral Blood Vessels)
- 脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid:CSF)
…の3つになります。
正常な状態では、これらの要素はバランスを保ち適切な圧力環境を維持しています。
容量が一定である頭蓋内に、何らかの原因で占拠性病変や浮腫が発生すると、その分だけ他の成分が減少しなければなりません。
最初は髄液や血液が減少して調整されますが、その限界を超えると頭蓋内圧が上昇します。
頭蓋内圧が上昇すると、血管が圧迫されて血流が低下し、さらに浮腫や虚血が増加します。
このようにして悪循環が生じて、最終的には脳ヘルニアを引き起こしてしまいます。
頭蓋内圧の亢進による病態生理的変化
頭蓋内圧が亢進すると、次のような病態生理的な変化が生じます。
- 脳組織への圧迫
- 脳血流量の低下
- 脳脊髄液の循環の障害
- 脳組織の浮腫
以下に解説します。
脳組織への圧迫
頭蓋内圧の増加により、脳組織に圧迫が生じます。
これにより、脳細胞の機能が障害され、酸素や栄養の供給が制限されます。
脳血流量(Cerebral Blood Volume:CBV)の低下
頭蓋内圧の亢進は、脳血管への圧力を増加させます。
これにより、脳血流量が低下し、酸素と栄養素の供給が減少します。
脳脊髄液の循環の障害
頭蓋内圧の亢進は、脳脊髄液の循環にも影響を与えます。
脳脊髄液は脳室系を通じて循環し、脳組織の周りを包んでいます。
頭蓋内圧の増加により、脳脊髄液の流れが妨げられ、脳室系の拡張や脳室内圧の上昇が生じる場合があります。
脳組織の浮腫
頭蓋内圧の亢進により、脳組織の浮腫(脳組織の腫れ)が引き起こされることがあります。
これは、脳細胞内の水分や電解質のバランスが崩れ、細胞内外の浸透圧差が生じることにより起こります。
参考
1)Bratton SL, Chestnut RM, Ghajar J, et al. : Guidelines for the management of severe traumatic brain injury. J Neurotrauma 25 (Suppl) : S1-S106, 2008